
我が家の防湿庫の中で最も出番が少ないレンズが『 Leica APO-SUMMICRON M75mm F2.0 ASPH.(6bit) 』
愛用の「Leica M11」の相棒として手元にありながら、実際に装着してファインダーを覗くと75mmのブライトフレームは中央部に小さく表示されるため、どうしても構図の切り取りに迷いが生じてしまい、使用頻度がめっきり減ってしまいました。
外付け電子ビューファインダー(ビゾフレックス2)も試してみましたが、今度はお気に入りのサムレストが使えなくなるというジレンマに。これを打開するにはもう「Leica M EV1」しかないのか? お財布と相談する日々が続く中、『 FUJIFILM X-E5 』に触れる機会をいただきましたので、試しにヘリコイド付きマウントアダプターを介してアポズミクロン75mmを装着してみたところ、これがなかなかの高相性。
眠っていた銘玉が最高の「中望遠マクロレンズ」として覚醒してくれたので、その写りをご覧ください。

実際にX-E5に触れてみて驚いたのが、M11に通ずる操作感の良さです。シンプルで無駄のないダイヤル配置は、ライカユーザーにとっても馴染みやすく、手にした瞬間から違和感なく撮影に没頭できます。
特に使いやすさを実感させてくれたのがボタンのカスタマイズで、シャッターボタン右横のファンクションボタンに「ファインダー拡大機能」を割り当てました。私が普段使用しているM11と同じ位置に同じ機能を割り当てられたことで、よりシビアなピント合わせも迷うことなく、とてもスムーズに行うことができました。このシームレスな感覚は、他社製カメラから乗り替えた時にはなかなか味わえない感動です。


絞り優先オートで描き出された画像は、普段の感覚より若干明るい(オーバー気味)印象を受けました。しかしこれも独立した露出補正ダイヤルを操作すれば容易に調整が可能で、直感的な操作系がしっかりと撮影をサポートしてくれます。
ちょうど梅雨の花が美しい季節。瑞々しい花にギリギリまで近づきシャッターを切ると、花びらの質感をリアルに再現してくれました。

APS-CサイズセンサーのX-E5に装着することで、75mmのレンズは35mm判換算で112.5mm相当の中望遠レンズへと変貌します。
M11にも1.3倍や1.8倍のデジタルズーム(クロップ)機能は搭載されていますが、個人的にはAPS-Cの「1.5倍」という数字の方が、画角の引き算として圧倒的にイメージが湧きやすいと感じています。
かつて一眼レフを使っていた頃、105mmのマイクロレンズを重宝していたのですが、まさにあの頃の「心地よい割り切りと凝縮感」が蘇るような快適さです。

彫刻が立派なお寺のお堂。全体を収めるため距離をとりましたが、彫刻の細部まで確認できる「アポクロマート」ならではの高い解像力が確認できました。

一方で、逆光気味にレンズを向けると、うってかわって若干柔らかな描写を見せてくれます。ただシャープに写るだけでなく、その場の光の「雰囲気を切り取る」のが本当に上手なレンズです。


今回はほぼ全カットをフィルムシミュレーションの「REALA ACE」で撮影しました。
このベースとなったフィルムは、ちょうど私がカメラを始めた頃(約40年前)に登場したものです。「第4の感色層」を導入し、色再現性を飛躍的に向上させた革新的なフィルムとして、他のフィルムよりワンランク上に位置付けられ、お値段も少し高めだった記憶が今でも鮮明に残っています。
X-E5の魅力の一つに、軍艦部の専用ダイヤルでフィルムシミュレーションをスムーズに切り替えられる楽しさがありますが、今回はあの頃の憧れの記憶が勝り、自然とこれ一択の撮影となっていました。

パステルカラーの被写体を狙っても、決して派手になりすぎず、落ち着いたトーンにまとめてくれるのも私好みです。

お寺を散策中、植え込みの中に隠れている猫を見つけました。 薄暗く、かつ低位置からのシビアな撮影条件でしたが、ここでM11には無い「チルト液晶モニター」と「ボディ内手ぶれ補正」が重宝しました。
X-E5の強力な手ブレ補正は、換算112mmという中望遠域でもブレの不安をかき消してくれます。そして、瞳の認識もバッチリ機能し、ピント合わせを強力にアシスト。 結果として、薄暗い茂みの中でも、まるでガラス玉のように透き通る猫の瞳の美しさを、ブレることなくしっかりと切り取ることができました。

アポズミクロン75mmの最短撮影距離は70cmですが、ヘリコイドを繰り出すことで、そこからさらに被写体へと近づくことが可能になります。
この恩恵は、途中に立ち寄った喫茶スペースでも発揮されます。 出された和菓子(練り切り)をテーブルフォトとして撮影したのですが、こちらも難なく対応。中望遠マクロならではの視点で切り取られた、和菓子のしっとりとした質感がなんとも言えない美しさです。

眠っていた銘玉を新しい視点で味わう
ブライトフレームの難しさから、出番が少なくなっていたアポズミクロン75mm。 しかし、X-E5という操作性の良いボディと、ヘリコイド付きアダプターの組み合わせによって、とても快適で表現力豊かな「中望遠マクロシステム」へと生まれ変わりました。
上品なアポズミクロンの描写と、REALA ACEのニュートラルでありながら芯のある色彩は相性抜群。梅雨のしっとりとした空気感や、花の色彩、近接撮影時の質感に至るまで、カメラが書き出す「色」がとにかくいい感じで、撮影後の画像を見返しが楽しくなりました。ライカのレンズをフジフイルムの色と機能で味わう。 この組み合わせは、しばらく私の日常スナップの良き相棒になってくれそうです。
Photo by MAP CAMERA Staff




