
ミラーレスカメラの一般化に伴って様々な楽しみ方が広がったマウントアダプターを介しての撮影。「フランジバックの長いマウントのレンズをフランジバックの短いマウントのボディに装着する」という原則により、ショートフランジバックを持つミラーレス一眼カメラには古今東西様々なレンズを装着することが可能になりました。そしてその中でもとりわけ短いフランジバックを持つのがニコンZマウント。フルサイズセンサー対応でありながら16mmというショートフランジバック設計となっています。もちろんフランジバックが短いことは光学設計上有利という利点がありますが、同時に他マウントのミラーレス一眼カメラ用レンズの装着が可能ということも意味しています。今回は『 Nikon Z8 』にフランジバック18mmのソニーEマウント用レンズから『 SIGMA Art 28-45mm F1.8 DG DN 』を装着して撮影に臨みます。

今回使用したマウントアダプターは『Megadap ETZ21 Pro+』です。このマウントアダプターはソニーEマウントからニコンZマウントへ2mmのフランジバックの差を埋めて形状を変換するとともに、電子接点による通信情報も変換することができます。撮影画像にレンズのEXIF情報を残すとともに、オートフォーカスにも対応しています。


レンズに搭載された絞りリングにも対応しており基本的にネイティブのZマウントレンズとほぼ同じ感覚で使用できますが、唯一レンズの電子補正には対応していません。つまりレンズの素の光学的な描写力が試されるということになりますが、今回使用した『SIGMA Art 28-45mm F1.8 DG DN』の光学性能であれば安心して撮影できます。水槽越しでも高い描写力を維持しています。

開放F値1.8という、単焦点レンズを凌駕するような明るさのスペックに目を引かれますが、同時に空気を写すような透明度の高い描写も特徴的なレンズです。触れればひんやりとした水の温度を感じられそうです。

開放から既に高い描写力を見せていましたが、絞り込めばさらに画面全域にわたってシャープな画になります。有効画素数約4571万画素の高画素機との組み合わせでも、四隅まで文句のつけようのない写りです。電子的な補正なしでもシャープに写るというのは気持ちがいいものです。

撮影日はこどもの日ということで、様々な場所で鯉のぼりが泳いでいました。晴れ空に向かってレンズを向けましたが、木の枝の周りにも目立つ色づきは見られません。新緑の色も美しく描いています。絞り開放から常用できる印象です。

さらに逆光耐性を検証すべく太陽をフレームインさせましたが、ゴーストの気配はありません。レンズに施されたナノポーラスコーティングやスーパーマルチレイヤーコートのおかげでシチュエーション問わず抜けの良い画になります。

生憎の曇天となってしまいましたが、その中でも高い表現力や透明感はそのままです。波の表情を捉えるため高速シャッターを使用しましたが、電子シャッターのみ搭載のZ8でも歪まず、またISO2800でもノイズの少ないシャープな画です。

曇り空が突如紫色の夕焼けに包まれました。どこか不気味な色に染まった空を、誇張なくありのまま捉えることができました。明るいところと暗いところ、また雲の濃淡まで微妙な色の違いも捉えられています。そしてこの写りを持ちながら、ズームレンズの利便性も有しているというのがこのレンズの凄さです。ズーム倍率こそ約1.6倍と控えめですが、広角と標準を自由に行き来できるのは、スペックの数字以上に便利に感じます。

印象的な空の色ですが敢えてモノクロに切り替えて撮影もしてみます。空の微妙な明暗や波模様が光としてきっちり捉えられています。開放での撮影なのでやや周辺減光が気になりますが、表現の一つとしてはこの程度のほど良い減光はあっていいかと思います。プロファイル情報を当てていない状態ですので、気になるようであれば現像段階でも十分対応できます。

最後は夜のビーチを手持ちで撮影しました。絞り開放でも点光源が滲まず、夜間でも十分な光量を確保できます。それでも夜間はシャッタースピードが遅くなることが多いので、強力なボディ内手ブレ補正があるとISO感度を上げずクリアな画を手持ちで撮影できます。

2mmのフランジバックに秘められた無限の可能性
薄いマウントアダプターであることも相まって、まるでネイティブマウントのレンズを使用しているかのようです。そしてそれは見た目だけでなく実際使用していても、全く違和感なく撮影をすることができました。ただし全てが完璧というわけではなく、今回使用した組み合わせではレンズの絞り値を開放にしても、カメラ側の表示やExifに残った情報では本来のF1.8ではなくF1.9として記録されました。とはいえ他のレンズを使用してもかなりの精度で動作してくれる印象です。サードパーティー製を含め膨大な選択肢のあるソニーEマウントレンズ、および高い信頼性と確かな色表現を持つニコンZマウントボディ。本来交わることのなかった両者。その2mmのフランジバックの差に秘められた無限の可能性を、マウントアダプターが解放してくれます。
Photo by MAP CAMERA Staff





