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『 Nikon Zf 』で撮る『 NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 』

『 Nikon Zf 』で撮る『 NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 』

2026年04月02日

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:160
使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

ニコンの長い歴史の中で、とりわけ一眼レフ用のFマウントは「不変のFマウント」と呼ばれるほど長く製造されており、1959年のニコンF発売以来今でも基本的な形が変わっていないというマウントです。ですが今回ご紹介するニッコールレンズはさらにその前、レンジファインダー時代のSマウント用レンズ「NIKKOR-S (S) 50mm F1.4」です。その発売は1950年。レンジファインダーカメラ用の標準レンズとして設計されたこのレンズは、世界で初めて35mm用交換レンズとしてF1.4を実現しました。レンズ構成は3群7枚のゾナー型で、実測でのF値はほとんどF1.5であったという逸話も残されています。

このレンズはニコンS用とL39スクリュー用の2マウントが製造されましたが、今回使用したのはSマウント用のもの。内爪といわれる特殊なマウント形状のためマウントアダプターを介して使用することが難しく、L39マウントの個体と比べてお求めやすくなっています。今回はニコンSマウント(内爪)をライカMマウントに変換し、さらにライカMマウントからニコンZマウントへ変換するヘリコイドアダプターを併用することでNikon Zfと組み合わせて撮影に出かけました。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:200
使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

76年前に設計がされたという歴史的なレンズのその写りは、現代の設計によって生まれたレンズとは一線を画しています。
今でこそF1.4という明るさは一般的な単焦点レンズでもよく見かけるようになりましたが、発売当時世界で一番明るい一般向け35mmカメラ用交換レンズであったという事実が物語るように、明るさを突き詰めたその設計から生み出される描写はどこか夢の中のような柔らかさ。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:100 / 使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

ですがこのレンズの特長は、柔らかな描写の中にしっかりとした細い線を描く点です。
やや滲んだ印象を受ける点光源に対して、様々な服をまとったマネキンたちは鮮明に描写されています。開放では柔らかく絞ればくっきりというレンズは数多あれど、F値開放での1枚の写真の中に二面性を持つレンズはそう多くはないでしょう。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/50秒 / ISO:200 / 使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

ひとたび絞り開放で点光源を撮影すれば、球面収差の影響により大きな光のにじみが現れます。またコマ収差も顕著で、像高5mm程度で既ににじみの変形が見られます。現代のレンズでは決して味わうことのできない描写に酔いしれます。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F2 / シャッタースピード:1/500秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

開放ではご覧いただいたような暴れっぷりを発揮するこのレンズですが、1段絞ってF2で撮影するとその獰猛さは息を潜めます。光源を包み取り囲んでいた滲みは姿を消し、コントラストが向上します。とはいえ周辺部ではまだ像が流れますし周辺減光の影響もまだ大きく、開放時とはまた違ったオールドレンズの雰囲気を見せてくれます。F4程度まで絞り込めば周辺部までシャープな像が得られるので、このレンズは実質的に開放時、中間絞り時、小絞り時の3つの顔を持ったレンズと言えるでしょう。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/640秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

私はこのレンズの開放での描写に魅了された性分の人間なので、このまま開放での撮影を続けます。Nikon ZfのピクチャーコントロールはNL(ニュートラル)を使用していますが、発色についてもやや独特な、Zマウントネイティブレンズの装着時とは異なる色を感じます。色調をわずかにグリーンに寄せてみると、一気に映画のような世界観に誘われました。やはり光源を中心とした滲みはあるものの、コーティング技術の未熟な時代において空気面を6面に抑えた3群構成はコントラストの維持にも役立っています。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/2500秒 / ISO:180
使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

夜更けまで雨が降っており天気予報にも曇りマークがずらりと並んでいたこの日。夕方近くになり傾き始めた太陽から日差しが降り注ぎました。雨上がりで湿度を纏った空気を捉えたような湿った描写が好みの1枚です。
普段私がこのレンズを装着しているのは、フィルムレンジファインダー機の「Nikon SP」。当時のSマウント純正ボディはシャッター速度が最高でも1/1000秒と晴れ空の下開放での撮影は難しく、絞り込んだ写真が多かったために余計に、このレンズの新たな一面を見た気がしてドキドキします。オリジナルマウントで出会えなかった描写の発見という楽しみがあるのも、マウントアダプターを介しての撮影の醍醐味です。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/1250秒 / ISO:100
使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

柔らかな光を捉えることにおいて、このレンズは良い選択肢となります。ハイライト部がわずかに滲むことで幻想的な雰囲気になります。
後ボケはやや二線ボケ傾向がありますがうるさくなく、今回はほどよく輪郭が残って良い写りとなりました。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 作例

絞り:F1.4 / シャッタースピード:1/2500秒 / ISO:110
使用機材:Nikon Zf + ライカMレンズ/ニコンZボディ用 ヘリコイド付 LM-NZ M MC オールブラック + Voigtlander S/C→VMアダプター + NIKKOR-S (S) 50mm F1.4

近接域での撮影にも挑戦してみます。このレンズは本来カメラのボディ内に設けられたヘリコイドを使ってピント合わせをするタイプで、最短撮影距離は約90cmとなります。ですが今回ヘリコイドつきマウントアダプターを使用しての撮影では、目測でおよそ70cm程度までの近接撮影が可能になります。本来撮影できない範囲に踏み込んでの撮影ですが、比較的写りの傾向は変わっていないと思います。
ゾナータイプのレンズは他のレンズ構成に比べて近距離収差変動が大きいことから、近接域での描写が崩れることが多々あります。実際ふわりとした描写は確認できますが、今回はその柔らかな写りを敢えて作風として活かしました。
なおこのレンズは、同型の設計を使用したL39スクリューマウントでは距離計連動範囲を外れて1.5ft(約45cm)までの近接撮影が可能です。当時のNikonとしてもこの程度の近接撮影をすることは織り込み済みで設計が行われたのかもしれません。

 

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 外観
  

NIKKOR-S (S) 50mm F1.4 外観
  

そして今回ぜひお届けしたいのがその外観。
フィルター径は43mmと既に小さめなのですが、内爪特有のくびれたようなマウント部の形状のためさらにコンパクトに見えます。ですがレンズ鏡筒はほとんどが真鍮で構成されているため、レンズの重量・そして密度はしっかりと感じます。
当時物のラッパ型のレンズフードを装着してみるとまた印象ががらりと変わります。Nikon SPの時代に合った刻印のレンズフードですが、小ぶりな刻印はZfにも似合います。カメラを首から提げたとき、ふと下に目線をやると覗き見えるスタイルの良さに何度でも心を惹かれます。
描写の良い/悪いという単純な物差しひとつでは測ることのできない、時代を超えて愛される優れたレンズの描写、そして立ち振る舞いを体験してみてください。

 

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