
フランジバックの短いミラーレス一眼カメラは、マウントアダプターを介することで古今東西の多様なオールドレンズを装着できるのが大きな魅力です。その代表格とも言える『PENTAX SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8』は、フィルム一眼レフ「S3」の時代から長年親しまれてきた王道の標準レンズ。そのため市場に多くの個体が流通しているため入手しやすく、オールドレンズの初心者から上級者まで広く愛されています。本記事では、そんな定番中の定番である本レンズを各社のミラーレス一眼カメラに装着し、実際に撮影してみました。

『 PENTAX SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8 』の特長といえるのがこのゴーストです。本来ゴーストは写真のコントラストを下げてしまったり、ひいては本来そこにないものが写ってしまうということで、レンズの進化の歴史はゴーストを抑え込む戦いとも言えます。それ故、最新のレンズではコーティング技術の進化によりゴーストはほとんど出てこないか、出てきても目立ちにくくなるよう配慮されています。一方でこの『 PENTAX SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8 』は単層コーティングのみが施されており、逆光下ではリング状の虹のようなゴーストが確認できます。このゴーストを作品の演出の一つとして組み込むことで、写真表現の幅がぐっと広がります。

空と八重桜の淡い色が、暖かさを感じさせます。またデフォーカス部分のわずかに光が滲んだ柔らかい写りも雰囲気づくりに一役買っています。

先ほどの写真から一転、アンダー気味に光の当たった木の質感を捉えました。開放での撮影ですが光線の状態によっては硬い写りも楽しめます。半世紀以上前のレンズでもハッとさせられるような先鋭な写りをしてくれます。

ボディをクラシカルな外観の『 Nikon Zf 』に付け替えました。最初の『 Nikon Z6II 』と同じニコンZマウントを採用したボディですが、『 PENTAX SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8 』の金属製のレトロな鏡筒との見た目の相性はやはり『 Nikon Zf 』がいいなと思います。

点光源のザワザワとしたボケ感もこのレンズの特長です。現代のレンズでは中々味わうことのできない、どこか情緒的な写りをします。

レンズ構成は5群6枚の変形ダブルガウス型を採用しています。設計当時のスタンダードに近いレンズ構成で、現在でも一眼レフ用標準単焦点レンズはこの構成に近いものが多く採用されています。こちらも絞り開放で撮影をしていますが、中央部分はかなりシャープな写りです。一方で画面周辺は柔らかくなる印象なので、被写体を中央に配した日の丸構図に特に適しています。もちろん絞り込むことで周辺部の画質も向上するので、周辺までくっきりと写したい場合も絞り一つで写りをコントロールできます。


『 PENTAX SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8 』は光を柔らかく包み込むレンズだなと感じます。それは感覚的にもそうですし、実際の写りについてもわずかに滲んだ光がソフトフィルターをかけたように見え、それが印象的な描写につながっています。


Canonの小型なフルサイズミラーレス一眼カメラ『 EOS RP 』に装着して撮影した写真。レンズの写りに合わせて色をややフィルム調に編集しました。自分好みの色に写真を編集することで、レンズの写りまでも自分だけのものにすることができます。

半世紀以上前に製造されたレンズということで、当時の個体差や製造の年代差、破損を防ぎつつ保存状態などによって同じレンズでも個体によって写りの傾向がわずかに違うということがあります。特に解像性能よりは、コーティング起因のゴーストなどにその傾向はよく見られます。代名詞的な虹色のゴーストも、実はよく出る個体とほとんど見られない個体が存在しています。製造数が多いレンズではありますが、ほかの中古商品と同じように、もしくはそれ以上にオールドレンズとは一期一会の出会いなのです。

レンズの全長自体はおよそ36mmほどで、アダプターを装着してもおおよそ60mm~65mmほどの間に収まってくれます。またフィルター径も49mmと小型で、昨今の大型化したミラーレス一眼カメラ用レンズと比較するとF1.8の明るさがこの大きさで手に入るのかと驚きます。重量も金属を多用した外装ですが200g程度に収まっており、APS-Cの小型なボディに装着してもバランスを損ないません。また質感についても金属製のフォーカスリングや絞りリングを回転させるのはただ操作するだけでも楽しく、写りの視覚だけでなく触覚でも二度楽しむことのできるレンズです。
半世紀を超えてなお愛され続ける標準レンズ
オールドレンズの王道と呼ばれる所以は、単に入手性の高さに留まりません。柔らかなボケとざわざわとしたボケが共存し、十分な解像度を持ちながらもわずかに光がにじみ、画角も人間の注視したときの視野に近い。オールドレンズは数多くあれど、「SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8」はその中でも極めて標準的な性能を有している。これがオールドレンズ定番の1本として多くのユーザーから愛される所以だと思います。そして何よりも半世紀以上前から長年標準レンズとして愛用され続けていることが何よりの根拠です。現代の高性能なレンズに何か疲れたな、心躍るような楽しさが足りないなと感じたとき、『 PENTAX SUPER-TAKUMAR 55mm F1.8 』が皆様の素敵なカメラライフのそばにいます。
Photo by MAP CAMERA Staff
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