【マップカメラ情報】Canon EOS 60D レポート

バリアングル機能で無限に広がる視点と発想

　本機はEOSシリーズでは初のバリアングルクリアビュー液晶モニターを搭載しており、「横開きタイプ」を採用している。これには三脚やバッテリーグリップを使用しても液晶が干渉しない等のメリットがあり、通常よりも自由度の高いアングルでの撮影が簡単に出来るようになった。液晶そのものはワイド3.0型、約104万ドット。汚れ防止のフッ素コーティングと、反射防止3層コーティングが施され、斜めからでも充分画像が確認出来、昼間の屋外でも視認性は良好。ライブビューを積極的に使用したい機種なだけにこの仕様には納得だ。人垣を越えて撮影したいときや背の低い草花を撮影するだけでなく、カメラを思い切って自由なスタイルで構えることにより、今までとは全く違った写真が楽しめる。

　また、ボディに使用されている素材はエンジニアリングプラスチックと呼ばれる高い耐熱性と耐衝撃性を持つもので、これにより強度を損なうことなく軽量化に成功。グリップは深めで持ちやすい形状になっており、ストラップを使用せずに持ち歩いてもしっかりとしたホールディングで安心感があった。ボディ本体も、その自由な撮影スタイルの為に変化を遂げた。

大きく変化した操作系

　EOS 60Dは各ボタンやダイヤル等の操作系も大きく見直された。

　まず、グリップを握ったまま操作が可能なクイック設定（Q）ボタンが新たに追加され、これまで離れた位置にあったマルチコントローラーとサブ電子ダイヤルが「マルチサブ電子ダイヤル」として一つにまとめられている。

　これによって従来よりも少ない動作で操作が出来るようになった。別売のバッテリーグリップBG-E9を装着しても親指が届きやすい位置にあり、操作感が変わらずにスムーズな設定変更が出来るようになった。そして軍艦部のボタンは、1つのボタンに1つの機能だけが割り当てられ、シンプルで見た目にもとてもわかりやすくなっている。また、モードダイヤルにロック機構を採用し、これで不意に撮影モードが変わってしまうことが無くなった。

感覚を捉える「表現セレクト機能」「アートフィルター」

　もうひとつ、EOS 60Dの代表的な機能に「表現セレクト機能」がある。

　撮影者の「あんな風に撮りたい」や「こうしてみたい」といった大まかなイメージを、カメラ本体が露出、ホワイトバランス、ピクチャースタイル等を自動的に設定して表現してくれるという機能だ。撮影時にその場の明かりや状況、雰囲気に合わせて「ふんわりやわらかく」、「暖かくやさしく」、「しっとりと深みのある」等、自分の思い描いた表現に一番近い設定から選択するだけで良い。写真撮影の為に複雑な設定をしないので、将来必ず思い出になるだろう“今”を思い切り感じながら撮影することが出来る。そしてこの機能をライブビューと併用すれば、液晶モニター上で構図を決めながら写真の雰囲気も確認出来るので、是非お勧めしたい。但し、この表現セレクト機能は直接RAWデータにも影響し、あとから他の表現に変更するということは出来ないので注意が必要だ。

　表現の幅はまだまだ広がる。撮影してから自分好みの写真に仕上げることが出来るのがアートフィルター機能。液晶画面を見ながら「ラフモノクロ」や「ソフトフォーカス」、「トイカメラ風」、「ジオラマ風」の4種類から選択して使用することが出来るのだが、さらに面白いのは、「ラフモノクロ」と「トイカメラ風」を同時にかけるといった、アートフィルターの2枚掛けが出来る点だ。撮影が終わってもなかなかEOS 60Dから手が放れそうにない。

　今回実際に使用してみたところ、純粋なEOS 50Dの後継機というよりは、幾分Kissシリーズ寄りにシフトして50Dとの間に位置する、全く新しいポジションのカメラという印象だった。幅広く充実した機能で、手にした撮影者それぞれの技術レベルや使用環境に柔軟に対応する。バリアングルや表現セレクト機能に表れた、細かいことを気にさせないくらい自由度の高い機能と、それを感じさせないしっかりとした作り。写真愛好家はもちろん、一眼入門者、ファミリー層など、“これから本格的に写真を始めたい”方にも是非お勧めしたいカメラだ。