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ツポレフTu-114とジュピター12

実は雨のシーズンでもある春。
撮りに行くぞ!と思ったていたのにどんよりなお天気。仕方がないので机の上に愛用のボディ、レンズを並べてみたら楽しくなってしまい、思わず「テーブルフォト」を撮り始めてしまった、なんてことはありませんか?EC営業グループ パウセカムイです。



そんなわけでこの前の休日に撮ったこの写真。
激しく後玉の突出したこのレンズは旧ソビエト製35mmf2.8レンズ「Jupiter12」のLマウントバージョン。「ああ、アレね」とお思いの方も多数いらっしゃると思われる有名なレンズです。
そしてこの飛行機はなんなのかというと、これは「ツポレフTu-114」という旅客機の1/500の模型。

レンズとこの飛行機とどんなつながりが?そう思っていただいた方のためにちょこっとだけウンチク語らせていただきます。



このツポレフTu-114は1960年代のソビエト製旅客機で、Tu-95という大型戦略爆撃機の旅客機バージョンとして生まれた機体。

当時西側ではすでにジェットの時代を迎え、ボーイング707、コンベアCV880といった機体が大西洋横断可能な航続力を持って飛び始めていました。

しかし燃費の良いジェットエンジンをなかなか開発できなかったソビエト、同等の性能をジェットではなくターボプロップエンジンを使ったプロペラ機という既存の技術で実現しようとしたのがこの機体です。

プロペラ機の場合、速度を上げたいからとプロペラを高速で回転させてしまうと、プロペラブレードの先端が音速を超えてしまい、衝撃波が生じて大きな抵抗となってしまうので、どうやっても時速700km/h程度が限界というのが当時の常識でした。しかしソビエトの航空技術者は直径の大きなプロペラを二重に重ねてそれぞれ反対回りに(二重反転プロペラといいます)比較的ゆっくりと回す事によりエンジンのパワーを効率よく速度に変えるという独自の技術をあみ出します。



結果この機体はプロペラ機でありながら時速870km/hというジェット機並みの高速巡航を可能にし、ジェットエンジンと比べてずっと燃費の良いターボプロップのおかげで同時代のどのジェット機よりも長大な航続力を獲得。
爆撃機のTu-95としてはソビエトからアメリカ東海岸を行動範囲内におさめ、
旅客機のTu-114としてはモスクワ-ニューヨーク間をノンストップで飛行可能な機体となりました。
そして国連総会に出席するフルシチョフ第一書記を乗せてニューヨークに乗り付けたり、日本航空とソビエト国営アエロフロート航空の共同運航便として羽田~モスクワ間に就航したりと華々しく活躍。全長54m、乗客数は最大220人。まさにソビエト航空界の技術の結晶、究極のプロペラ機と言える存在でした。

このTu-95/Tu-114のベースとなったのがTu-4という飛行機。そしてこのTu-4はあのB-29の完全なコピー。日本を爆撃に来て損傷を受け、基地まで帰れなくなって、やむなくソ連領内に不時着した機体を分解、研究して完全にコピーしたのだそうです。

コピーから始まった技術に磨きをかけ、コピー元とは違う独自の発展を遂げる。これぞソビエト技術の真骨頂。
(進化の過程で西側の常識では考えられないヘンな形になっちゃったりもしますが。)

そしてJupiter12も(ようやく出てきました。)戦前型ツァイスビオゴンの完全なコピーとしてスタートして、なんと1990年代まで作り続けられたレンズ。
まあこちらの場合はツポレフのように独自の発展というほどのことはなく、せいぜい後玉を保護するカバーを廃して生産性を向上?させたくらいのようですが。(あ、コーティングの進化はありますよね)


しかし西側のトレンド?ガウス型には目もくれず、最初にコピーしたビオゴン型を作り続けるあたりは同じようなメンタリティと言えるのかもしれません。

ビオゴン譲りの高性能を手軽に楽しめるとしてなかなか人気のこのレンズ。もちろん眺めているだけではもったいない。ドイツ生まれモスクワ育ちのその味を堪能するべく、いろいろなフィルムでテスト撮影してみました。
前述の通り特異な形状。ユニバーサルなLマウントとはいっても装着できないボディもありそうです。露出計測用の「腕木」があるM5はムリそうなので、ここはキヤノン勢の出番です。


Canon VT de-luxe / Jupiter12 35mmf2.8 RDP III(ポジフィルム)


Canon VT de-luxe / Jupiter12 35mmf2.8 RDP III(ポジフィルム)


Canon 7s/ Jupiter12 35mmf2.8 FUJIスーパープレミアム400(カラーネガ)


Canon 7s/ Jupiter12 35mmf2.8 FUJIスーパープレミアム400(カラーネガ)


Canon IIs改 / Jupiter12 35mmf2.8 NEOPAN ACROS100(モノクロネガ) ダークレス現像


Canon IIs改 / Jupiter12 35mmf2.8 NEOPAN ACROS100(モノクロネガ) ダークレス現像


Canon IIs改 / Jupiter12 35mmf2.8 NEOPAN ACROS100(モノクロネガ) ダークレス現像

中央はなかなかシャープ。しかしこの個体の特性なのかもしれませんが絞ってパンフォーカスを狙っても周辺がちょっと甘いかも?
ISO400クラスのカラーネガを使うよりは精緻でシャープなプロビアとかアクロスを使ったほうが精神衛生上良いかもしれません。それに、究極の対称型でいかにも歪曲などなさそうなレンズ構成のわりには結構盛大な歪みっぷり。
しかしボケは水彩画みたいでなかなか趣があります。(カラーのほうが楽しめるかも)

35mmではありますが、思い切って開放にしてボケを楽しむレンズかなと感じました。
もしかして超絶シャープ?というのを少し期待していたのですが・・
(とは言ってもソビエト製品の常で品質にバラつきのあるこのレンズ。ものによっては周辺までバリバリシャープなものもあるかもしれません。)

ところでツポレフTu-114は品質的にどうだったのかというと、機体の欠陥による事故はゼロと優れた飛行機だったようです。
ただし乗り心地のほうは巨大なプロペラがつごう8つも回転しているせいか、独特の低周波の騒音があってなかなかハードなものだったそうです。



眺める、撮る、ウンチクを調べて悦に入る。
いろいろな楽しみ方のできるオールドレンズは日常を豊かにしてくれるスパイス。
定期的な服用が効果的です!

そしてやっぱりフィルムは楽しい! フィルム写真は死なず、未だ消え去りもしない です。



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written by パウセカムイ
この記事のカテゴリーは『文と写真』です | この記事は2012年05月02日現在の情報です。


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