マップカメラ店長がカメラについてアレコレ語る『極私的カメラうんちく』

第15回:カメラ三大発明

ルネッサンス三大発明といえば火薬、羅針盤、活版印刷である。

ではカメラの三大発明とは何だろうか。

もしカメラの黎明期まで振り返るとすれば、「レンズ」や「感光材料」などカメラそのものの発明まで辿り着いてしまう。ご存知のようにカメラのご先祖はピンホールカメラの結像原理を利用して、正確な写生の下絵をトレースする道具として用いられていた「カメラオブスキュラ」である。カメラオブスキュラの原理は紀元前から知られており、またカメラが発明される相当以前から、ピンホールの代わりに適当な凸レンズを用いると像が劇的に明るくなることが既に知られていた。カメラオブスキュラは永きに渉って画家の道具として発達、改良されてきたが、あるとき感光剤の発明と出会うことによりカメラと写真が誕生する。

余談だがカメラオブスキュラは一眼レフである。そのしくみは箱型の「ボディ」前面にレンズがあり、レンズの後ろには45°傾斜させた鏡がある。箱の上部は透明のガラス板で覆われ、ガラス板の上に紙を置くと前方の景色が左右反転して結像する。つまり画用紙が一眼レフで言う「フォーカシングスクリーン」にあたるのだが、考えてみればこの配置と原理はウェストレベルファインダーそのものである。そして透けて見える像の輪郭線を紙にトレースした後、紙を裏返せば上下左右が正しい正立正像の完成である。もし鏡が無かったとしたら、像は箱の後部に結像するためにトレース作業の姿勢が辛くなるばかりではなく、像の上下左右全てが反転するため構図の確認も難しい。こうしてみるとカメラオブスキュラは決して未完成のカメラではなく、立派に完成した写生用の道具だったのである。

既に完成した技術が、あるきっかけで大発明に至ることは珍しくない。

飛行機は20世紀の大発明だが、主だった飛行原理がグライダーによって実証されていたところへ、軽量なガソリンエンジンが発明されたことが発明の大きな引き金となった。事実ライト兄弟は当時飛行機に搭載するガソリンエンジンの入手がままならず、自作までして理想のエンジンを手に入れている。

あまりにも過去にさかのぼると話が前に進まないので、カメラが人類の道具として定着した20世紀以降の比較的近年の発明に話を移すことにする。だとすれば「3大」のうち2つはオートフォーカスとデジタルカメラということになるだろう。

では三つめは何だろうか。

これまで開発されてきた殆どの新技術とは、それまで人間が行ってきたことを機械が代わって行う技術である。すなわち新技術=自動化の歴史は長く、自動露出(AE)機構やオートフォーカスがその代表格である。それ以前にも一眼レフのクイックリターンミラー機構や自動絞り機構、オートワインダーなどがそれにあたる。

しかしフラッシュの瞬間光をリアルタイムで制御することは元来人間業では不可能であり、それを一眼レフで初めて実用化したのがオリンパスOM-2である。

ダイレクト測光と名づけられたその新技術は、レンズを通った光をフィルム面の反射で測るもので、どちらかといえば瞬間光の制御よりも定常光(太陽や電球、蛍光灯などの光)のを測るために開発されたものである。

当時の一眼レフはTTL(レンズを通った光の量をカメラが測る)方式が一般的になっていたが、測光素子をファインダー付近に内蔵するのが一般的だった。ところが一眼レフはその原理上、撮影の瞬間にファインダー光路をミラーが完全に塞いでしまう。そこでAEの時代になると、どのメーカーもミラーが上がる直前の測光値を記憶して露出を演算決定していた。結果的に測光と露光に僅かながら時間的なズレが生じていた訳だが、それに対してダイレクト測光ではミラーボックスの底面に測光素子をフィルムに向けて埋め込み、露光中フィルムに当たっている光の反射を測る。そのため測光と露光に時間的なズレが全く生じないことがダイレクト測光の最大の利点だった。

しかし露光中の光を測るという、きわめて大胆かつ画期的な技術の利用価値はそれだけに止まらなかった。フィルム面の測光ができる利点を最大限生かすべく、高速処理が可能な演算回路を同時に実用化し、OM-2はTTLによる瞬間光制御をも達成したのである。

OM-2以降TTLによる瞬間光制御は、これまで露出倍数に悩まされ続けてきたマクロ撮影をはじめとするあらゆる撮影分野で必須の機能となった。最終的には主要な一眼レフメーカーの全てがTTLダイレクト測光方式によるフラッシュ光制御を採用し、その後のフルオートAF一眼レフ時代の礎となった。

OM-2のダイレクト測光技術には、測光素子をミラーボックスに後ろ向きに配置する発想の大胆さに加えて、当時急速に発達してきた集積回路の技術が大いに貢献したといえる。

常識に囚われない大胆な発想がもう一つの新技術や新発明と出会うこと。これも大発明が生まれるもう一つのシナリオなのかも知れない。

written by ストロベリー小野
この記事のカテゴリーは『極私的カメラうんちく』です | 2006年03月20日

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