SIGMAが進める新しいレンズの編成、Contemporary、Art、Sportsの3つのプロダクトライン。その中の『Sports』ラインの最初の1本として発表されたのがこの”120-300mm/f2.8 DG OS HSM”でした。CP+2013等でも実機が展示され、その硬性感と信頼性の高い外装、インナーズーム等の機能面でのブラッシュアップ、そして何よりその描写性能で大いに期待される1本です。当Kasyapaでも先代モデル“APO 120-300mm F2.8 EX DG OS HSM”のレポートを実施しておりますが、はたしてどう変わったのか。新生Sportsラインの実力を撮影しました。
まずはピント、最望遠の300mm開放でのショットですが、さすがにF2.8の大口径では驚くほど薄いピントです。そんな中でもピント面にある葉の、新緑の柔らかな雰囲気や光までしっかりと描写。前後のボケも背景次第では若干渦を巻く事がありましたがおおむね素直で、使いやすい美しいボケ味です。
F2.8の大口径と手ぶれ補正の恩恵はすばらしいもので、室内の少々暗い状況でも300mmで手持ち撮影がこなせるのは驚いてしまいます。ズーミングしても全長が変わらないので、人混みや狭い場所でのとり回しにも重宝しました。
少々動きの速い動物でも、このレンズなら十分に追う事が出来ます。明るいレンズであればシャッタースピードも稼ぐ事が出来、使い勝手に幅が生まれます。
そして何より驚いたのはこのレンズのコントラスト再現の鮮やかさ!撮影日は天候は良いながら少し霞んだ印象で、遠景も少々くすんでしまうかと思いきや、しっかりとコントラストのついた明瞭な写真を描き出すのには驚きました。近接でのカットも含め、被写体の鮮やかな色彩や瑞々しい再現は撮影していても楽しい、期待以上の性能です。
とっさの判断にも俊敏についてきてくれる、レスポンスも良いレンズですね。
塗装の滑らかさや、ヒビや、エンブレムのクロームメッキの鈍い輝きまで、しっかりと重さを伴った描写です。
さすがにこのスペックともなると、数十メートル離れていても被写体をしっかりと浮かび上がらせる事が出来ます。シチュエーション次第ではミニチュアの様に感じる事すらありますから、それがこのレンズの凄い所なのでしょう。開放でもしっかりと使える性能があってこそ、この錯覚は生まれます。
300mmの圧縮効果はなかなかのもので、前ボケと相まって不思議な印象の写真になりました。かなり揺れる車内からの撮影でしたが…しっかり止まっている様です。撮影した他のカットを全て見てもその焦点距離からすればブレのあるカットは少なく、歩留まりの良さはこのレンズの使い易さにつながる事でしょう!
逆光耐性に関してもこのレンズは大変良く、”フードを着けずに撮影”という暴挙に出ても殆ど影響の無いのには驚きました。基本のポテンシャルはSIGMA社渾身のレンズだけあり、実に高いスペックでまとまっている様です。
20m近く離れていてもこのボケ、この立ち上がりです。開放では若干の周辺減光が見られますが、解像力は周辺までピシッとしており不安はありません。遠景被写体を狙うのであればフォーカスリミッター等を使用し範囲を決める事で、ピント合わせをより素早く行う事が出来ます。
こうした光のあしらいを見ると、その仕上がりの良さをひしひしと感じます。実に美しい再現で、瑞々しい。その場の印象をしっかりと写しとってくれています。
F4まで絞り込めば像の安定感は抜群です。ガラスの無機質な照り返しも美しく再現します。
先代と比べて若干の重量増ですが、そのしっかりした造りを見れば不満の無いものです。三脚座からフード、スイッチ類に至るまで不満に思うクォリティは一切無く、ステルスの様にマットな高級感のある仕上げはどんなボディにもしっかりとマッチします。
また、”SIGMA USB DOCK”を使えばよりボディそれぞれに適したピント位置の調整や、『Sports』ラインのレンズではAF速度の調整まで可能ですから、使い込む事により一層使い勝手の良い1本となるのではないでしょうか。
新生”SIGMA 120-300mm/f2.8 DG OS HSM”、SIGMA社の新ラインナップのレンズ群はどれも評価が高いですが、この1本もその仕上がりは非常に高レベル。新しいSIGMA社の指針として発表されたレンズ、その仕上がりは抜群の1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff