高性能な広角単焦点として愛用者の多い『A35mm/f1.4 DC HSM』や、初のF1.8大口径ズームレンズ『A18-35mm/f1.8 DC HSM』など、SIGMAのレンズラインナップの拡充ぶりには目を見張るものがある。そんな中、新たな『Art』ラインのレンズ、『SIGMA A 24-105mm F4 DG OS HSM』が登場した。F4通しのズームレンズで、広角24mm-105mmと非常に重宝するスペックのレンズだけに、その完成度が気になるところ。早速撮影に持ち出してみた。
まずはテレ端105mmでの描写をご覧頂きたい。開放F4で完全な逆光状態。この季節の西日は角度も低く、レンズにとっては厳しい条件だが水しぶきの1粒1粒まで見事に描ききっている。ゴーストやフレアも無く、輝度差が激しい条件ながらパープルフリンジも殆ど見られず、収差の補正も高い水準なのだろう。『Art』ラインの名に恥じない完成度をうかがわせる。
こちらは広角端でのカット。1絞りした条件だが周辺光量も豊富にあり、フィルター径82mmという大きな前玉の恩恵はこうした所に出ているのだろう。解像感もしっかりとしており、ハイライトからシャドー部まで気持ちのよいヌケ感を感じさせる。
28-70mm/f2.8と比べられる事の多い標準ズームの王道スペックだが、24mmから105mmと押し引きに少しだけ余裕が生まれる事で、描き出される世界観は大きく変わる。撮影の自由度は間違いなく広がるレンズであり、高感度耐性の良くなっている昨今のデジタル・ボディであれば、コンパクトで自由度の高い24-105mm/f4.0という選択肢も大いに”アリ”なのではないかと思う。
45cmまでの接写が可能なので、近接撮影もしっかりとカバーする。キラキラとしたボケが綺麗な描写だ。さすがに若干の周辺減光があるが、このシチュエーションでここまで耐えてくれれば上出来と言えるだろう。
暗い中では、手振れ補正機能は大いに頼りになるものだ。しかし被写体の存在感を強く感じさせるレンズである。奥の鉄骨の1本1本まで滑らかなグラデーションを保ち、描き出す。
どこまで繊細な描写をするのか、追い込んで観てみるつもりで撮影したが…いやいや、ここまで写れば文句は無いだろう。60mm近辺での撮影だったが、周辺までキッチリと描写する。『高画素化するセンサーの威力を十二分に発揮』させる事を念頭に開発されたレンズと聞くが、なるほど頷ける描写ではないだろうか。
幅広のズームリングとあいまって、ギュッと凝縮した様なそのデザインは安定感の有るものだ。手にした時の収まりの良さは、触れば実感頂けるものだろう。1本で様々なシチュエーションに反射的に反応出来るのがズームレンズの最大の強みだが、そうして撮影してがっかりさせない描写力の高さも相まっている所にこのレンズの完成度の高さがある。
少々大柄なレンズである。特にその前玉の大きさは目を引くが、ボディに着けるとしっかりとしたラバーズームリングはグリップが良く、ボディと一体感のある仕上がりが実に魅力的だ。外装の仕上げは他のArtラインレンズと同様しっかりとしたものであり、ズームリングの滑らかな作動感とあいまって高級感を感じさせる。AFでピントを合わせた後にピント位置を微調整出来るフルタイムマニュアル機能も備えるなど、使い勝手にはしっかりと配慮された完成度の高い仕上がりだ。SIGMA Artラインの新たな1本、スペック的には突出したものではないが、その分しっかりと練られた仕上がりは”ワンランク上”をしっかりと感じさせてくれるものだろう。
Photo by MAP CAMERA Staff