F0.95、現在市販されている写真用レンズとしては唯一のそのスペックはこのレンズの非凡さをいやが上にも知らしめるものです。第2世代から通常の球面構成で続いたNoctiluxの系譜も、ここにきて再度のASPHERICAL化。更なる大口径化を果たしました。その描写にも注目が集まる所ですが…開放、近距離にしてこの描写。先日レビューしている第4世代Noctiluxと比べて明らかにヌケが良く、ピント面のシャープネスも上がっています。もちろんそのF値からくるボケは強烈であり、前後のグラスの描写も美しいものですが、先代のピント面に僅かにフレアがかかる様な描写が一掃され、全域にわたってしっかりとした描写が得られています。
もちろん柔らかい描写なのですが、先代の描写と比べると明らかに”洗練”されたと言うのでしょうか。画像のクセの強さが和らぎ、純粋にボケの美しさを考えて作画に取り組めるレンズとなっています。
開放でこの描写とあれば、クセを考えずに積極的に使っていけますね。フレームやビスまでしっかりと描き出し、画面隅でも荒れる事が無いのは驚くべき事です。
何とも清々しい描写です。画面隅での減光もわずか、オールドレンズの様にウェットな描写の先代ノクチルックスが好みな方には少々「写りすぎる」と思われる様な描写ですが、この明るさでこの描写は驚愕、ある意味強い個性と言えるでしょう。色の再現も美しく、緑の中にも異なった色合いを見事に描き分けてくれています。
モノクロームでも力強い描写は相性が良さそうです。前ボケや後ろボケが光線状況しだいで渦をまく程度で、その描写力は良好です。
ピント面がシャープながら薄いので、立体感も素晴らしいものが有りますね。こういった描写は先代のノクチルックスには無い、また独自の個性なのでしょう。
F0.95ともなると、夕暮れ、薄暮でも気にせず撮影することが出来ます。どんなシチュエーションでも間違いの無いパフォーマンスを発揮してくれる、数ある現行ライカレンズの中でも珠玉の1本に違い有りません。
組み込み式フードながら先代と違い、少し回転させるロックがかかる機構は「APO-Summicron50mm」などにも採用されている方式で、硬性感があり嬉しいもの。重量もかなりのものであり、その存在感は相当なものです。ドイツの工場にてマイスターの手作業により生産される本レンズ。世界的に需要と生産の追いついておらず新品でも手に入れにくいものですが、その描写はライカ渾身の1本と言って間違いないレンズでしょう!
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.