衝撃の製品発表から早3ヶ月、ついにこの注目機種が発売されました。今回のKasyapaはポケットサイズのフルサイズミラーレス機、そしてスチルカメラとシネマカメラを融合した全く新しいカメラ『SIGMA fp』のご紹介です。
この『fp』発表の際、「デジタルカメラの脱構築」をキーワードに、スチルカメラ、シネマカメラ、そしてスマートフォンなど各カメラの特徴を一度バラバラにし、これからのカメラに必要な要素を再構築させて作ったのが『fp』だと語っていたのがとても印象的でした。今までのシグマファンのみならず、世界中のカメラ好きが注目する一台。そして、これからのカメラに大きな影響を与える一台になるのでしょうか。
季節は10月下旬の秋本番。寒くなってきたので上着を着ようとひと休みしていたら茂みの奥に可愛らしい猫を発見しました。fpを持った手を伸ばし、地面につきそうなほどのローアングルで撮影を試みます。カメラが小型であればあるほど撮影は自由になり、直感でカメラを構えてフリーアングルで撮れるのがこのカメラの魅力です。
寒暖差による朝露が綺麗です。拡大して見てみると葉脈まではっきりと写し出しています。キットレンズにもなっている『Contemporary 45mm F2.8 DG DN』はコンパクトなfpにピッタリなレンズですが、見た目やサイズだけの組み合わせではありません。
今回からカラーエフェクトに新しく追加された「T&O(ティール&オレンジ)」。人間の肌の色などに含まれるオレンジ系の色味と、その補色に当たるティール系(シアン系のブルー)の色味を際立たせることで、鮮やかかつ印象的に演出する色です。ノスタルジックな印象も受けるこの色味は、写真のような被写体にぴったり。動画でも活躍しそうなカラーエフェクトです。
スチルカメラとシネカメラの垣根を超えた『fp』はシグマ初のベイヤーセンサーを搭載したデジタルカメラです。今まで唯一無二のFOVEONセンサーが特徴だったシグマ機でしたが、ベイヤーセンサーを搭載したメリットの一つに高感度耐性が挙げられます。その最高ISOは25600。FOVEONセンサー機では考えられない数値です。しかし、実用としてはどのくらいまでいけるのか、撮影をしながら早く暗くならないかと内心ワクワクしていました。そして日が沈み、撮影に挑んだのがこのカットです。お店の入り口から漏れる明かりのトーンをISO3200でギリギリの露出で拾いました。想像以上の低ノイズに加え、暗部から滲み出るようなレンガの模様に『fp』の実力の高さを垣間見ました。
美しく飾られたテーブルを俯瞰(ふかん)から撮影した一枚。室内撮影をこんなにもテンポよく撮影出来るのはコンパクトな『fp』だから出来た芸当です。撮影したISO感度は6400。高感度でこれほど美しい仕上がりが出来るようになるなんて、シグマユーザーにとっては夢を見ているようです。
夜の赤レンガ倉庫をスナップ。夜の暗さが際立つよう、明るくなり過ぎないように注意して撮影をしました。写真を見ていただけるとお分かりになると思いますが 、夜の撮影にも関わらず中央下に写り込んでいるカップルの影が流れていません。それもそのはず、シャッタースピードは1/100秒でISO感度はなんと25600です。常用感度の最高値でここまで綺麗に写し出してくれるとは、『fp』恐るべしです。
映画のワンシーンに変わる 21:9
シネマスコープサイズの21:9アスペクト比。一般的な16:9よりもさらに広いこの比率は映画撮影で使用されており、『fp』ではデフォルトで使用できる珍しい比率です。そのアスペクト比で撮影をすれば、まさに映画のワンシーンから切り取ったような一枚に。今まで自身が撮影してきた写真の中に新しいストーリーを見つけられるかもしれません。
21:9で撮影しつつ、カラーエフェクトを「シネマ」に。次のシーンで蛇口に手を伸ばすのは、ラフな格好をした女性か、もしくは無精髭を生やした刑事風の男性か。今までのスチルカメラでは表現できなかったような印象を感じる一枚です。
カメラの新しいカタチ
コンパクトでレンズ交換式、ローパスレスセンサーに優れた高感度耐性の強さ。これだけ聞いてもカメラ好きが気になる一台なのですが、『fp』はそこに本格的な動画撮影機能と、無限に広がるカスタマイズ性を兼ね備えたカメラです。撮影を終えた感想としては、絵作りだけでなく、AFスピードや各機能や操作のレスポンスも素晴らしく、同クラスのセンサーを搭載するライバル機を比べても劣る気がしないというのが本音です。むしろ解像感に関してはローパスレスのおかげもあって一つ抜きん出ているように感じました。電子式シャッターのみ搭載しているので動きの速い被写体など気をつけなければいけませんが、それ以上の魅力を本機から感じました。Kasyapaではスチルカメラとしての『fp』の紹介になりますが、今回掲載した写真で本機の素性の良さに気づいていただければ幸いです。スペック的にシネマカメラのような位置づけを感じる『fp』ですが、素晴らしいスチルカメラでもありました。
Photo by MAP CAMERA Staff