SIGMAさんからまた気になるレンズが登場しました。『30mm/f1.4 EX DC HSM』と言えばAPS-C一眼レフ用の大口径レンズとして長らく親しまれてきたベストセラー・レンズですが、このたびARTラインとしてリニューアル。光学系から外装まで大きく変更され、プレミアムラインとして相応しいブラッシュアップがなされています。 35mm換算で45mm前後の非常に使い勝手の良い画角と、F1.4という大口径、そして30cmまで近接可能というとても魅力的なスペックで、それでいて実にコンパクトですから”着けっぱなし”も大いにオススメ。1本でも撮れる画のバリエーションがとても豊富なレンズなのです。
まずは近接で撮影してみましたが、先代の40cmと比べて30cmまで寄れるのです。たかが10cm、でも近接域での10cmは大きく使い勝手が異なります。”もう一歩”寄れる快適さ、先代をお使いの方にも大いに実感して頂けると思います。まろみのあるガラスの質感は実に美しいものです。
強烈な逆光です。もちろん絞り込んでいますが、それでも全く破綻の無い描写には驚きます。実はフードを着けていないという感心しないスタイルでの撮影でしたが、逆光でのフレアやゴーストはほぼゼロ。逆光耐性は驚くほど強いレンズの様です。
せっかくの大口径レンズ、ついつい開放付近での撮影が多くなってしまいましたがこの大きなボケを見ると嬉しくなってしまいます。APS-Cサイズのセンサーでも驚きのボケ味で、被写体が浮かび上がる様な描写が体験できるのはこのスペックのレンズの特権です。また、9枚羽根の円形絞りを採用した事で背景のボケが美しい丸ボケに。こうした細かい配慮が随所に施された印象で、最終的にARTラインとしての完成度の高さに繋がっている様です。
ふっと浮かび上がってくる様な描写。大口径ならではの立体感が感じられます。
ペルシア絨毯の、その細かな織り、少し荒い繊維の質感までしっかり描写しています。後ろボケも素直で使いやすい描写です。
ハード目な被写体が多いですが、柔らかな被写体の描写ももちろん見事なものです。開放ではバリバリの神経質な描写、というよりは少し柔らかめの描写ですから、被写体によって意図によって、絞りを使い分けるとより表現の幅が出てくる気がします。
こうして見ると、”フロントのエッジの切れ込み”より”ボンネットの塗装の艶やかさ”にこのレンズの見所がある気がします。
数メートル先の被写体でも、このレンズであればふっと浮き立たせた様な表現が可能です。人物撮影などでも大いに活躍してくれそうですね。
こうして見るとなかなか小さいレンズです。ボディに着けた際のバランスの良さも特筆したいポイント。外装の仕上げは最近のSIGMAレンズ特有のもので、しっかりした剛性感とブラックの品の良いデザインになっています。マニュアルフォーカス時のピントリングも適度に負荷があり使い勝手の良いものでした。
『大口径標準レンズの会心作』という事ですが、『多彩な表現を可能にする』というのは大いに頷ける仕上がり。大口径標準レンズであり、簡易マクロ撮影まで出来る本レンズ。絞りや距離で大きく違う表情を見せるこのレンズだからこそ、撮影者の撮りたい世界感をしっかり受け止めてくれるのではないでしょうか。
旧モデル『30mm/f1.4 EX DC HSM』のレポートはこちら>>
Photo by MAP CAMERA Staff