APS-Cサイズセンサーを搭載した、PENTAXの新フラッグシップ機と言って良いだろう。『PENTAX K-3』がついに発売となった。外観はK-5II等のマッシブで直線的な、精悍さを感じさせるデザイン路線を踏襲し、グッとまとまりと凝縮感を感じさせる仕上がりとなっている。マグネシウムを多用した外装も、手にした時の剛性感に大いに貢献しているのだろう。撮る気分を盛り上げてくれる仕上がりなのは好印象だ。しかし外観の変化に比して、その内面の変化は著しいものである。まずは、その描写をご覧頂きたい。
水面に咲く睡蓮、湿度感を描くようアンダー目で撮影を行ったが、黒の中にも水面の存在を感じさせる雰囲気を持つのはさすがである。『K-3』の描写を司る映像素子はローパスレスの新開発2400万画素センサー、そして処理エンジンにはこちらも新搭載のPRIMEIIIを用い、高い描写を実現したと聞いたが、なるほど納得の描写力。被写体を精緻に描く、その余裕さえ感じさせるのはフラッグシップならではのものだろう。
防塵・防滴の『K-3』であれば、アウトドアや悪天候等でもその安定感はバツグンだ。様々なシチュエーションで、迷わずその描写を楽しんでほしい。
AFモジュールや性能も大きくブラッシュアップされている。新搭載の”SAFOX11″によるAFポイントの増加やクロスポイント・センサーの増設は暗い中での撮影や、動体撮影にも威力を発揮する。こうしたシチュエーションで被写体の追従もお手の物である。また特に耐環境性能の高い『PENTAX K-3』だ、暗所などの悪環境での安定感は、そのままカメラ自体への信頼感に繋がっている。
PENTAX機で初のローパスフィルターレス機は『PENTAX K-5IIs』になる。『K-5』をローパスレスとしたスペシャル・モデルであったが、人気が集中したのも記憶に新しい。その点も踏まえ、今回の『K-3』では初めてラインナップとしてローパスレスボディのみとなる。これまでの実写画像からもその描写の精緻さはお分かり頂けると思うが、今回『PENTAX K-3』に初搭載となるのが”ローパスセレクター”機能だ。何と手振れ補正の原理を応用してピクセル単位のごく僅かな振動を行い、ローパスフィルターと同様の効果を発揮させるというのだから驚く。天体追尾を同じく手振れ補正機能を応用して行う『アストロトレーサー』等の実績があってこその、PENTAXならではの新機構だろう。そして、上のカットがその”ローパスセレクター”をONにした状態である。「若干の精細感の低下が有る」とされているが、等倍で見比べて気がつくかどうかという程度。これでモアレ等の発生を予防するというのだから恐れ入る。
精緻感、そして深み。間違いなくAPS-C PENTAX機で最高レベルの画質を誇る1台だ。
陰影や暗部の描写もすばらしい。トーンがしっかり残っているお陰で、写真全体にしっかりと芯がある。
暗いシチュエーションから明るい場所へ、様々なフィールドをグイグイ撮影して進んでいける。こうした安定感こそが『PENTAX K-3』の使っていて信頼出来るポイントだ。
夕暮れの日がまだ残る頃、家路を急ぐ2羽か。フラットな光でコントラストもつき難しい時分だが、しっかりと画として完成してくれた。
モノクロームにしてスポイルされる事が無い、むしろその細かな描写と質感が際立ってくるのがすばらしい。画づくりの芯がしっかりしている証拠である。
個人的に使っていて魅力的だったのが、その視野率100%を誇るファインダーだ。像も大きく、コントラストもしっかりしていて実に見やすい。余計な被写体が映り込んでしまったりしては台無しなシチュエーションでも、このファインダーであれば信頼出来る。
このカットは、RAW現像をかなり無茶に行っている。白は飛び、黒は潰れ、粒状化してしまっているのがお分かり頂けるだろう。しかし、それでも画として存在感を持っているのには驚く。現像を行っての、写真家それぞれの世界観にしっかりついていく素地を持ったカメラだ。
夜でも、雨でも、様々なシチュエーションで期待以上の働きをしてくれる安定度がある。
今回撮影に赴いて、その画を見て感じたのはその画質に余裕が感じられるという事だ。『K-5IIs』もローパスレス機であり、その精緻さには目を見張ったものだが、比べてみると細部のトーンや全体の滑らかさに差異が出ているのが見える。また、モードダイヤルにロックがついたり、SDカードがデュアルスロットになったりとユーザー目線でのブラッシュアップが様々に施されている。APS-Cセンサー搭載の一眼としては、その完成度は間違いなくトップクラスであり、その完成度はこれからのPENTAXに大きく期待を抱かせるものではないだろうか。
Photo by MAP CAMERA Staff