高倍率の大型ズームレンズにボディを組み合わせた一体式デジタルカメラは、銘機として名高い『DSC-R1』からのSONYのお家芸とも言えるコンセプトだ。この冬、そんなジャンルに新しい1台が登場した。コンパクト機の『DSC-RX100』と、フルサイズセンサー搭載のボディ一体式カメラ『DSC-RX1』の存在するRXシリーズのニューフェース、高倍率ズームレンズ一体式の『SONY DSC-RX10』である。
特筆すべきはその搭載されるズームレンズ、”24mm-200mm”というズーム比もさることながら、その全域で”F2.8″を実現しているというのだから驚きである。パッと見た所では少々大柄なボディにも思えるが、”200mm/f2.8″のレンズが搭載されていると考えれば驚くほど小さいと言えるだろう。当然レンズにはシビアな性能が求められる所だが、その描写をご覧頂ければと思う。
まずは広角端での描写を。F5.6と少々絞り込んではいるが、周辺減光も見られず被写体の先鋭度も非常に高い。石造りの建物の重厚さと、西日の当たる暖かな色合いまでしっかりと再現している。湾曲も見られずスッと抜ける描写は気持ちのよいものだ。
開放で、望遠側100mm相当で撮影した。前ボケも、この焦点距離とレンズの明るさであればぜひ生かしたい所。ズーム出来る範囲も広いおかげで、自由自在に構図を切り取るような撮影を楽しめる。
さすがZEISSのズームレンズである。逆光耐性も、非常に高い。ここまで高スペックなズームレンズであればレンズの構成枚数も多く、ゴーストやフレアも出やすいはずだが、目も開けられない様な逆光でもこの程度。像の先鋭さは全く損なわれていないのだから驚く。
望遠端、200mmでの撮影。開放でもしっかりとした描写をする。この焦点距離になると被写体を圧縮する様な効果も強く、超望遠撮影ならではの視野を楽しむ事が出来る。
広角24mmから望遠端200mm相当まで、自由自在に画角を変えて撮影出来るというのは想像以上に楽しいもので、見慣れた場所や風景の中に新しい構図や見方を見つけて撮影出来る。旅行にももちろんオススメだが、近場での撮影にもこの万能性の高さは生きてくるのではないだろうか。また、このスペックのレンズながらフォーカスも素早く、ピントの迷いが少ないのも特筆もの。オールインワンだからこそ練り上げられた、高い完成度を実感して頂けるだろう。
望遠端でも、最短撮影距離が30cmと短いままなのはとても使いやすいポイントである。マクロ的な撮影までシームレスに行える。
1.0型センサーとはいえ、その画像の品位は驚くほど高い。画像の描写に関してまで、手を抜いていない完成度が伝わる描写だ。
ISO3200であれば、夜間でも換算200mmの手持ち撮影が可能だ。ノイズも大きく感じさせない高感度耐性の高さも、このボディの持ち味である。
露出補正が外部に単体ダイアルとしてあるなど、マニュアル操作系もふんだんに残してあるのも『SONY RXシリーズ』の大きな魅力だ。ズームはレンズの幅広のリングを回すか、グリップのズームレバーを操作する事で行える。大きく張り出したグリップも大型のレンズを保持するのに具合が良い。外装もマグネシウムを使用し、シーリングを施すなど信頼感の高い仕上がりだ。一体式デジタルカメラの決定版と言っても良い完成度、オールインワン・パッケージのメリットを存分に味わって頂きたい。
Photo by MAP CAMERA Staff