今回は正式発表されましたSony α7シリーズ対応の新レンズ『Carl Zeiss Loxia 35mm F2』のご紹介です。 既に発売されているLoxia 50mm はプラナータイプでしたが、今回の Loxia 35mmは広角のビオゴンタイプ。 Carl Zeissレンズ群の中でもビオゴンは優れた描写性と明るさのレンズ構成です。しかし設計上バックフォーカスが短くなるため、一眼レフがカメラの主流となった現在では広角レンズ座をディスタゴンタイプに譲るかたちになっていました。今回はミラー干渉の心配のないα7の利点を生かしデジタル用レンズ初のCarl Zeissビオゴンとなります。
銘レンズの再来となるのか、Zeissファンとしては非常に気になる一本です。早速試写へ出かけました。
1枚目はF8まで絞ってでの撮影。細かな線を写し出す本レンズの解像力にも驚きですが、建築物の質感表現が見事です。 変わって2枚目はF2.8で撮影。ロードバイクのハンドル部に合わせたフォーカス部はクッキリ解像し、アウトフォーカスは被写体を浮かび上がらせるようなボケ味が特徴です。
最短撮影距離は30cmから。薄いピントの中に水の滑らかさが伝わってきます。
フォーカスを合わせる為のヘリコイドは程よいトルク感と滑らかな動きで非常に気持ちのいい感触です。絞りリングは50mmと同様にムービーユーザーの使用を考えたデクリック機能を搭載。小振りなレンズですが Carl Zeissらしい物作りの良さを感じられる一本です。 絞り開放の描写力はピント面のシャープネスはもちろんですが、その被写体の質感や重さも感じられるような写り味。そしてアウトフォーカスのじわりと滲むようなボケ味が一層ピントを合わせた被写体を際立たせます。絞り込んでも固いという印象はなく、より忠実に表現していると言ったらいいのでしょうか、人の目以上に被写体の特徴を細かく写し出してくれます。
モノクロームでの表現でも本レンズは実力を発揮します。高コントラストで黒に見えるシャドウ部も中にしっかりと被写体が描写されており、グレートーンながら実に深みのある色を再現してくれます。
影を意識し、すこしアンダー気味で撮影。Zeissらしいこってりとした色合いが金属の魅力をぐっと引き立てます。
夕方の強い逆光の中で撮影。シャドウ部の緻密な描写力は流石という印象です。
本レンズは撮影者の意図をより印象的にし、写真の楽しさと美しさを再認識させられます。
焦点距離35mmは撮影シーンを選ばず活躍をしてくれるレンズです。何気ない日常を特別な写真にしてくれるのもZeissレンズの魅力かもしれません。
夕日の繊細な空の色。美しい表現力です。
深みのあるシャドウ部の色彩が、より被写体を印象的な物にします。
光と影のコントラスト。人の美意識を刺激してくれるレンズです。
『Carl Zeiss Loxia 35mm F2』は非常に魅力ある1本でした。35mm F2というスペックは他メーカーからも多く出ているスタンダードなレンズです。その中でも本レンズの性能は非常にハイレベルなものですが、スペック値だけでは語れない写真にしたときの魅力と言ったらいいでしょうか、このレンズにしか撮れないと思わせるものが『Carl Zeiss Loxia 35mm F2』にはあります。 α7はSonyからのZeiss銘レンズ『Sonnar T* FE 35mm F2.8 ZA』やマウントアダプターを通して歴代のZeissレンズを使用することができます。その中でも高い描写性と独特の味を併せ持つ本レンズは贅沢な選択肢の一つかもしれません。
Photo by MAP CAMERA Staff