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414:『SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS』

2017年03月26日

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/60秒 / ISO:400/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS

「新しいソニーのFEレンズは、STFらしいよ。」そんな話を聞いた時、ついにミノルタの伝家の宝刀をEマウントへ持ち出したな。と勝手ながらに思いました。

STFこと、“Smooth Trans Focus”(スムース・トランス・フォーカス)とは、アポダイゼーション(APD)光学エレメントという、レンズの周辺にいくほど通る光の量(透過光量)が少なくなる特殊効果フィルター(NDフィルター)をレンズに内蔵し、点像の輪郭を柔らかくすると同時に、二線ボケの発生を抑制するという特性があります。最近だとフジフイルムから同じ機構を持つ『XF56mm F1.2 R APD』が発売されていますが、元祖といえばミノルタのAマウントレンズ『STF 135mmF2.8[T4.5]』であり、その究極のボケ味は多くの写真家を魅了してきました。

そのSTFを搭載した今回の『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』。しかもソニーが画質にとことんこだわった『G Masterレンズ』です。この二枚看板を掲げたレンズの実力を確かめるべく、隣に居た妻の目にピントを合わせ撮影したのですが、写真を確認して思わず息を呑みました。これはスゴイ…

レンズのレビューを書いているとボケ味とかキレ味なんて表現をよく使うのですが、その表現の最上級がこのレンズの描写だと感じた一枚です。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/640秒 / ISO:160/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

少しずつですが暖かい日が増え、春を感じるようになりましたね。サクラの品種によってはすでに満開のものあり、そのやわらかな色と花びらを撮影しました。『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』にはマクロ域切り替え機構を搭載しており、最短撮影距離0.57m、最大撮影倍率0.25倍の近接撮影が可能です。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/250秒 / ISO:100/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

カーテンに映る光と影。しっかりと色とコントラストを表現しながらも、階調表現の豊かさに驚かれます。そして、ぜひ拡大してピント面を探してみてください。スゴイですよ、隙のない解像力といった感じです。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/80秒 / ISO:100/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS

レンズ描写の理想に「ピント面はシャープに、ボケ味は滑らかに」というのがあると思います。最近のレンズはどれもこれも良く写り、その理想を体現しているなと思っていたのですが、この『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』は何というか、格が違います。

それは他のレンズが悪いのではなく、このレンズが異質といっていいのかも知れません。ボケが今まで使ってきたレンズと、どれとも違うのです。 F1.2やF0.95のフルサイズレンズも使ったことがありますが、ボケの量や深さではなく、ボケの溶け方が全く違う。まるでバターを溶かしたようなボケ味、なんて表現をどこかで目にしたことがありますが、私にはそれ以上の滑らかさに感じます。

また、STFというとボケ味にばかり注目されがちですが、このレンズの解像力は全カメラレンズの中で最上位クラスだと思いました。その証拠にメーカーサイトにMTF曲線が載っていますが、F8時には、ほぼピークを保ちながら直線に近いグラフを描いています。個人的に今まで使用して最高の解像力だと感じたのが『LEICA APO SUMMICRON 50mm F2 ASPH.』だったのですが、「これは、もしかすると」と思えるほど、『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』の解像力は高いです。まぁ、これはあくまで感覚的なところも多く含まれる感想ですので、参考程度に。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/640秒 / ISO:100/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

満開の菜の花畑。日本人だけでなく、外国人旅行者も多く訪れて写真を撮っていました。こういうシーンでは背景ボケがうるさくなりがちですが、さすがSTFといったところでしょう。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/400秒 / ISO:100/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

林の中を通る小道を歩いていた時の一枚。後ボケだけでなく、前ボケも美しい溶け方をしているのがわかります。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F6.3/ シャッタースピード:1/200秒 / ISO:100/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

この写真を見て「やはりSTFは独特だな」と感じた一枚。こういったシーンの場合は、背景がホワホワに溶けて何が写っているのか分からなくなるか、もっと形が見えてザワザワした印象になるかのどちらかと思うのですが、『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』の場合だと、背景の表情は分かりながらも滑らかに溶けている。これはボケがキレイ云々ではなく、写真表現が変わるレンズだと思いました。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/125秒 / ISO:3200/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

古民家の囲炉裏に吊られていた鉄びんを撮った一枚。うまく湯気が上がる様子を捉えることができました。取っ手の解像力もスゴイです。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/640秒 / ISO:100/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

幼い頃から野山で遊んできた私ですが、こんなにぺんぺん草をキレイに撮ったのは初めてです。(笑)

これも『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』のなせる技ですね。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F6.3/ シャッタースピード:1/200秒 / ISO:400/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS

さて、いままで掲載してきた写真を見て、何か違和感を感じなかったでしょうか?

『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』の名前にも書かれているように、本レンズの開放はF2.8。しかし、掲載写真の露出を見るとF5.6ばかりです。「おいおい、開放で撮ってよ」と思うかもしれませんが、本レビューの冒頭で述べた通り、このレンズには特殊なNDフィルターが入っているため実際のレンズの明るさよりセンサーに届く光量が少なくなります。この関係をF値(レンズの明るさ)とT値(レンズの透過率を含めた実質的な明るさ)と分けて考えるのですが、『絞り:T5.6』と書いても、あまり一般的には見慣れないですよね。そのため今回は写真のExif表記の通りF値で書かせていただきました。

このことも含め、実際の撮影で思ったのが「難しいレンズだな」という事。露出は全てオートでやると自分の感覚と少しズレるので、微調整やマニュアル露出は必至。ボケの深さも被写体との距離によって大きく印象が変わります。

何というか、「もっとこのレンズの旨味を出したいのに、なんか思っていた写真と違う」というのが撮り始めた最初は結構多かったですね。しかし途中から『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』クセと解像力に気づき、それに合わせて被写体も見るようになりました。それがわかると本当にこのレンズはスゴイですよ。使っていれば、そのうちもの凄い作品が撮れるのでは、と思ってしまう魅力を秘めた描写です。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/160秒 / ISO:250/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

ギリギリの露出で見せる本レンズの階調の豊かさを見ていただければ、と思い選んだ一枚。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/160秒 / ISO:640/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

夕方の時間帯に逆光で子供を撮影した一枚。細い髪の毛の一本一本まで写し出しているのが分かります。また、『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』は逆光耐性も非常に強いレンズですね、意図的にフレアを出そうと思い、色々と頑張ったのですが、ダメでした。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F6.3/ シャッタースピード:1/100秒 / ISO:400/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

アスファルト舗装をしたばかりだったのでしょうか、マンホールと路面にうっすらと油が浮き、雨水をはじいていました。開放から1/3段絞っただけなのですが、凄まじい解像力です。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS 絞り:F5.6/ シャッタースピード:1/80秒 / ISO:2000/ 使用機材:SONY α7R II + FE 100mm F2.8 STF GM OSS

美しい光源ボケの一枚。ボケにアポダイゼーションの特殊フィルターのグラデーションがうっすらと掛かっているのが分かります。『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』は口径食を徹底的に抑えた設計をしているため、写真のどこに光源ボケが来ても真円に近い形のボケ味を表現できるレンズです。

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS

SONY FE 100mm F2.8 STF GM OSS

今までのGMレンズの描写性能も最上級ではありましたが、4本目に当たる『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』のインパクトは一番強いかもしれません。『FE 24-70mm F2.8 GM』も『FE 85mm F1.4 GM』も『FE 70-200mm F2.8 GM OSS』も、私の知っているレンズカテゴリー上にあるもので、他と比べて判断できるのですが、『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』は全くの未体験ゾーンと言った感じでした。

STFレンズという事で、やっぱりボケ味。とろけるようなボケ味。滑らかなボケ味。といった説明が各所で書かれています。しかし、そのSTF=極上のボケ味というイメージ(事実ではありますが)に隠れた、超絶的な解像力が本レンズの真の魅力のように感じます。

今回は私ともう一人で協力し撮影を行ったのですが、彼が「撮った画像を見たとき、SIGMA機で撮影した写真のような印象を受けた。他のカメラでこの印象を受けたのは初めてだ」と話していました。熱狂的なFoveon信者の彼が言う、その“印象”は私も感じていて、写真の中に高次元の解像感とボケ味が調和されているため、他のレンズでは感じられないような立体感を感じることができるのです。

書いていて「少し褒めすぎだな」と思いましたが、そのくらい『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』は凄みのある、魅力のあるレンズです。

ただ、ちょっと難しいですよ。何でも言う事を聞いてくれる良い子ちゃんレンズではありません。長いスパンで使って、様々な被写体とシーンで撮影して、初めて評価ができるレンズかも知れませんね。

『FE 100mm F2.8 STF GM OSS』は、ぜひ使い倒してください。そうすれば、凄い作品がきっと撮れるレンズです。

Photo by MAP CAMERA Staff

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