Nikon D850
インパクトの大きかった2017年3月期の決算に関するニュース。CP+2017でも新型の一眼レフは発表されず、どこかモヤモヤとした不安を抱きながら過ごしていた今年の夏でしたが、突然発表されたニコンの新機種はその不安を一瞬で吹き飛ばしてくれるビッグニュースでした。しかもファンが待ち望んでいたスペックを超えただけでなく、価格も予想より手が届きやすい。これはニコン完全復活への狼煙のように感じます。
今回のKasyapaは、ついに発売されたD810の後継機『Nikon D850』のご紹介です。
一番の注目すべき点は新型センサーによる4575万画素の画質表現。従来の3635万画素のスペックを大きく超えただけでなく、ニコン一眼レフ史上初となる裏面照射型CMOSの採用により、高精細ながら高感度性能も大きく向上しています。
まずはその画質表現を、ということで工場夜景を撮影した一枚から。撮影日はあいにくの雨。少し雨曇りもあり遠くにあるプラントをどこまで写し出せるか不安でしたが、長秒シャッター後に現れたプレビュー画面に思わず息をのみました。背面液晶でもわかる4575万画素の超高精細に、降り続く雨も忘れるほどの衝撃をD850から受けました。
AFシステムはフラッグシップ機である『D5』より引き継ぎ、フォーカスポイントは最大153点。AFエリアもD810と比べ130%以上拡大され、十分な動体追尾性能も持ち合わせています。
ものすごいスピードで通過するジェットコースターを撮影した一枚ですが、AFはしっかりと食らいつき、撮れる画はネットの網目までくっきりわかる高精細なものです。
雲に隠れた太陽から光が漏れ、美しい光芒が見えました。従来機より若干重量アップした『D850』ですが、本体が少し薄くなったおかげでホールド感が増し、カメラを構えた時の安定感がより良くなっています。
全方向、死角なし。
「高画素機は連写に弱く、高感度が苦手」これはD3XやD800/Eなど初期の高画素機が登場した際に言われていたことで、当時からデジタル一眼を使用していたユーザーにとっては“常識”と言っていいくらい広く認知されていたことです。しかし近年のデジタルデバイスの進化は目覚ましく、カメラ内での情報処理速度は数年前のカメラとは全く別物に変わりました。この『D850』も4575万画素という大データを高速で処理することができ、それが連写コマ数に大きく貢献しています。超高画素機ながら通常での連写速度は7コマ/秒、マルチパワーバッテリーパック『MB-D18』に『EN-EL18b』を装填すると最高で9コマ/秒という高速連写を実現しています。
動体撮影に強いAFシステムとそれに応える連写性能を持ち合わせている超高画素機、それが『D850』です。個人的な感想を言わせてもらえれば「全方向、死角なしの最強一眼レフ」とでも言いましょうか、今までの常識を覆す新時代の一眼レフです。
『D850』の弱点とまでは言いませんが、ピーキーだなと感じたところが一点あります。それはハイライト部の白トビ。明暗差のある高コントラストのシーンで少しシャドウ部に露出を合わせると従来機より白トビしやすく、よりシビアな露出が求められるカメラだと感じました。これはライバルである5000万画素機『Canon 5D SR』にも言えることで、超高画素機ならではの特性なのかもしれません。
一眼レフ史上、究極の汎用性を持った一台。
続いてはマクロレンズ(ニコンでは“マイクロ”ですね)を装着してトンボを撮影した一枚。拡大すると驚くほど写っているのがわかります。この『D850』はマクロ撮影にお勧めしたい理由が何点かあります。
・まず超高画素によりトリミングをしても高画質が保てる。
・AFポイントが増えた分、ピンポイントでAFを合わせられる。
・ライブビュー時にフォーカスピーキング機能が使える。
・ミラーショックのない電子シャッターが使える。
などです。
また、光学ファインダーは『D5』を超える、ニコンデジタル一眼レフ史上最高の倍率0.75倍に進化。従来機より1.15倍視野が広く、EVFより高い解像度で被写体を視認できますから、ピント合わせがよりしやすくなっているのも大きなポイントです。
ハイビスカスの雌しべに光学ファインダーを覗きながら手持ちマニュアルフォーカスで合わせました。薄いピント面を合わせる場合でも光学ファインダーがとても優れていますので、フォーカスエイドを確認せず感覚でシャッターを切ることができます。
『D850』は高感度がもの凄く強いです。この写真はISO:12800で撮影したのですが、ここまで滑らかな画が出てくるとは驚きました。空が少しザラついて見える、なんて言う方もいるかもしれませんが、4575万画素のISO:12800ですからね。写真を見て、以前ニコンの方に「ウチの常用感度は、本当に使える感度を記載しています」という話を聞いていたことを思い出しました。
『D850』の最高画質を実感するには三脚を使用したほうがいいかもしれません。よく高画素機は手ぶれしやすいと言いますが、正しくは手ぶれを拡大表示で確認できてしまう、というのが正しいでしょう。レンズの解像性能も上がっていますから、よりシビアな解像を求めるならばしっかりとカメラを固定させて撮影することをオススメします。
ニコンが切り開く、一眼レフの未来。
『D850』を使用してみて感じたのは、一眼レフとしての使いやすさと、最新ミラーレス機の利便性の高い機能を両方を兼ね備えた新時代の一眼レフだということ。本文中に多く触れている超高画素と高速連写の両立だけが『D850』の特徴はなく、一眼レフの最大の特徴と言っていい光学ファインダーは最高性能のものを搭載し、電子シャッターによるサイレント撮影、ライブビュー時のタッチAFシャッターやフォーカスピーキング、動画撮影機能など、これでもかと盛り込まれた機種です。また、撮影する上でとても重要なバッテリーライフも向上しており、ボディ内のバッテリー1個でなんと1840枚もの撮影が可能です。これは他の高画素機と比べてみてもダントツのスタミナで、『D810』と比べても撮影可能コマ数が50%向上しています。
『D850』はニコンの気迫を感じた機種でした。今年はニコン100周年という記念すべき年であり、『D850』は現在使える技術を全て投入して徹底的に作り上げたカメラだと感じます。
お世辞抜きに言っても『D850』は今まで使用してきたデジタル一眼レフの中で最高の一台だと思います。私自身ニコンユーザーではないのですが、これは本気で欲しくなりました。 最高のカメラで最高の写真を撮ることができる、カメラ・写真好きにとってこれほど幸せなことはないでしょう。そして、このようなカメラがニコンから登場するのはとても嬉しい事です。ぜひ多くの方に『D850』を使用してほしいですね、写真に夢中になれる最高の一台です。
Photo by MAP CAMERA Staff
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