今回ご紹介するのは、2024年7月19日発売となる『Nikon NIKKOR Z 35mm F1.4』。ニコンZマウントのレンズとして初となる開放 F1.4の明るさを誇る大口径広角単焦点レンズです。とても軽量コンパクトに作られており重量は「約415g」。静止画撮影も動画撮影も軽快に楽しむことができます。
このカットはF2.8と少し絞っているのですが、とても端正な写りです。F1.4の明るさが一番のアピールポイントなのですが、絞ればこれだけ整った写りもしてくれるのだということを実感しました。開放絞りだけでなく絞ればまた違う魅力があるという安心感をもって、ここから開放絞りのカットを中心に紹介してまいります。
夏のあいだだけ見ることができるお祭り。色鮮やかな風鈴が風に揺られ涼しげな音色を奏でます。やや逆光気味に開放絞りで撮影しましたが風鈴を立体的に際立ててくれました。このカットはRAWデータを現像しています。ヴィネットコントロールをONにしたjpeg画像と見比べた時、光を均してしまうよりも収差や周辺減光を素のままで使ったほうが「らしく」写ると感じたからです。暑い季節だからかもしれませんが湿度のあるボケや描写と発色の明るさがとても目を惹きました。
風の便りでもう咲いていると聞き一足先に夏の花に会いにいってきました。つい先日 関東の梅雨明けの発表があり、いよいよ夏本番。開放絞りでは明るすぎてやや露出オーバーかもしれないと、RAWデータで白飛びをチェックしましたが、空の部分もしっかり残っていました。背景には電線が横切っていましたが、とろけるようなボケ味でほとんど見えなくなっていました。
最短撮影距離は0.27m。被写体にぐっと近づいてもピントが合います。薄いピント面から生まれる大きなボケを活かして印象的に撮影することができました。
先ほどとろけるようなボケ味で電線が見えなくなったと書きましたが、引きで撮影するとこのようにはっきりと電線があることがお分かりいただけると思います。「Z f」に搭載されたピクチャーコントロールの「ディープトーンモノクローム」を用いるとコントラストが高い向日葵の黄色い花びらと中心部との見栄えがぐっと良くなりました。
絞り込むと周辺まで光が届きます。奥のほうは均等に写るだろうと思っていましたが、手前の暗いところまで均一に写してくれたのは良い意味での予想外でした。ちょうど雲間から少し光が射し込んだタイミングの光量の変化もしっかり描写してくれています。
背もたれの縁にかかる光。明るく活発なレンズという印象だったのですがその認識を改めた一枚。カラーのときはなかなか気付かなかったけれど、実はとても繊細な描写をするレンズなのかもしれません。
F1.4の開放絞りなのでもうすこし崩れてしまうかなと思っていたのですが、周辺部でもボケがきれいな形状のままで粘ってくれました。もちろんいつだって完璧に、というわけではありませんが丸ボケを活かした撮影をしたいときに躊躇する心配はなさそうです。
メタリックカラーの発色や開放絞りの立体感、ボケ感どれもとても良い描写です。ちなみにこのカットはマニュアルフォーカスでピント合わせをしました。重いというほどでもなくじんわり動かせるのでマニュアルフォーカス好きの私も満足の操作感でした。
広角ながら歪曲収差はほぼ見受けられません。この明るさでこのサイズなのに色々と良く出来ているレンズです。F値が明るいおかげで暗い場所でもISO感度に頼らない撮影ができました。
開放絞りとF5まで絞ったときの画像を並べてみました。ボケによる電線の消え方が良くお分かり頂けると思います。そしてもうひとつ注目して頂きたいのが周辺部分。F1.4の開放でも光量落ちも色にじみもほとんど感じられません。
明るく、鮮やかに
Photo by MAP CAMERA Staff