448:『Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical』
2017年10月04日
Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical
今回のKasyapaでご紹介するのは、フォクトレンダーのレンズの中でもF1.5以下の開放F値を持つ大口径レンズにしか与えられない「NOKTON」の称号を持つ『Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical』です。
『Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical』と同じくCP+で先行展示がされていた本レンズ。発売を心待ちにされていた方も多いのではないのでしょうか。
本レンズはフルサイズ対応40mmレンズでは世界初となる大口径レンズ。(※2017年8月 メーカー調べ)40mmという焦点距離はあまり使用したことがなかったのですが、35mmを使用した時に感じる「もう少し寄れれば」、そして50mmを使用した時に感じる「もう少し広ければ」という問題のちょうど中間に位置し、撮り方によっては広角寄りにも標準寄りにも撮ることが出来る取り回しのしやすいレンズでした。それに加えてF1.2という純正レンズには無いレベルの明るさを備え持っているのですから、向かうところ敵なしといった感じです。
冒頭の写真は開放であるF1.2で撮影をした1枚。F1.2ともなるとピントがシビアで合わせづらいのでは…と一瞬不安が頭を過りましたが、α7シリーズのピント拡大機能とローレット加工の施された操作性の高いピントリングのおかげで、ピント合わせは非常にスムーズでした。
被写体の素材や質感をしっかりと残しつつも、全体的に優しい描写が印象的です。
ガラス越しに撮影をしたディスプレイ。手前から奥にかけての吸い込まれるようなボケの層がとても美しいです。
開放での周辺の光量落ちはとてもよく抑えられています。JPEGはもちろん、補正のされていないRAWでもほとんど気にならない程度。しっかりとした光学性能が伺える半面、シャープ過ぎないどこかクラシックな写りにシャッターを切るたびにどんどんと引き込まれて行きます。
細部まで描きこまれた緻密な描写。木々のざわめきや神社の静粛な空気が画面越しに伝わってくるようです。
厳かな雰囲気を表現したかったため、シャドウ部を少し締めて現像をしました。フォクトレンダーのレンズは現像による味付けがしやすいのも魅力のうちの1つです。
そろそろ秋祭りのシーズンですね。今回撮影に赴いたところもまさにお祭りの直前だったようで、街のいたるところにちょうちんが吊るされていました。
本レンズは2枚の非球面レンズをレンズの最前と最後に使用しているため、開放から安定した描写を得ることが出来ます。こちらの写真もF1.2で撮影したとは思えない写りを魅せてくれました。
展示されていた古い機械にぎりぎりまで寄って撮影をした1枚です。機械の隙間から少し光が漏れているところを狙ってピントを合わせたのですが、薄いピント面も相まってかピントが合った部分がより強調されています。更に強調して見せたかったので、現像の際に彩度を落としてモノクロに仕上げました。豊かな階調表現が見事です。
気になる本レンズの最短撮影距離は35cm。40mmという焦点距離を考えると少し短めです。
様々な容器を模した色とりどりのプラスチックの板がずらりと並べられていました。後ろの玉ボケが美しいです。
F1.2~F1.6付近の描写はふんわりとやわらかいですが、F2付近になるとがらりと表情が変わってシャープに。この二面性がたまりません。
先ほど秋祭りについて触れましたが、この時期にもう1つ忘れてはならないイベントがあります。そう、ハロウィンです。ハロウィンはここ数年で急激に日本に浸透していったイメージですが、秋祭りのちょうちんとハロウィンのかぼちゃが一緒に並んでいるのを見るとなんだか不思議な気持ちになりますね…。
お昼に食べたとろとろのオムライス。最短撮影距離が短いおかげで、テーブルフォトも楽々こなします。
さて、少し時間を置いて今度は夜の街へと繰り出しました。
昔ながらの飲み屋街も、本レンズで切り取ると味のある1枚に。大口径レンズは室内や夜の撮影で真価を発揮します。いつもは避けて通る暗いところでの撮影がたちまち楽しくなる魔法のレンズ。それが大口径レンズなのです。
ISO6400という高感度であるのにも関わらず、木目や暗部のディティール等、余すことなく描写してくれています。レンズの表現力はもちろんα7IIの高感度耐性も素晴らしいですね。α7RIIやα9が登場してきてはいますが、α7IIもまだまだ現役です。
ただ「よく写る」だけではない、雰囲気を丸ごと切り取るレンズ。
『Voigtlander NOKTON 40mm F1.2 Aspherical』いかがでしたでしょうか。
F1.2という明るさを備えながらも、外観はα7シリーズにマッチするコンパクトな作りとなっています。外装からねじ込み式のレンズフードにいたるまで総金属製のため、堅牢性には申し分ありません。描写性能はもちろんのこと、高級感のある出で立ちが所有欲をも満たしてくれます。
また、今までにフォクトレンダーから発売されているソニーフルサイズ対応レンズと同様に、本レンズには「絞りクリック切り替え機構」が搭載されています。(※MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Asphericalは除く)
絞りの指標が印字されているリングを下に押し込んで回すことでクリックのON/OFFが可能となり、白い指標が出ているときはクリック音がONの状態、黄色い指標が出ているときはクリック音がOFFの状態になります。
動画撮影にも力を入れているα7シリーズに対応しているレンズならではの細かい配慮が嬉しいですね。
どんどんと高画素化が進むデジタルカメラ業界。高画素化の流れに沿うように、コントラストが高くとにかくシャープなレンズを最近はよく目にします。本レンズは開放から高い描写性能を持ちつつも、ただ高性能なだけではなく、その場の雰囲気を切り取る力があるように1日を通して使用していて感じました。
Photo by MAP CAMERA Staff