焦点距離50mmの単焦点レンズは、フィルムマニュアルカメラの時代から標準レンズとしてカメラとセットで売られていた定番レンズ。開放F値のバリエーションも含め、多くのレンズが各社から発売されています。そんな競合レンズが集まる中、シグマは強烈な1本で参入してきました。
シグマ「50mm F1.4 EX DG HSM」
周辺光量の低下を抑えるため大きくしたという前面レンズは驚愕のフィルター経77mm。他社を圧倒する大きさのレンズは見た目どおりにズシリと重く、まさにガラスの固まりといった感じで、これなら綺麗な描写をしてくれるのだろうと期待感が膨らむ製品に仕上がっていました。「安いレンズ」というイメージの強い交換レンズメーカーのレンズですが、このレンズに限っては高級感ある作りの良さも相まって、所有することにも喜びを感じる1本となっています。
実際に撮影をしてみると、絞り開放でも四隅までバランス良い明るさを保っており、さすが豊富な周辺光量を売りにしているレンズだと思わせる描写です。
明暗のバランスの再現が、被写体の質感だけではなく、その場所の温度感をも伝えてくれます。
もちろん素直で美しいボケも見逃せません。さすが大口径単焦点レンズと思わせるボケは他の同スペックレンズと比べ、もう一段ソフトな仕上がりになっているように感じます。
一方ピントが合っている部分はとてもシャープで、コントラストも高め。はっきりと質感が描写される上にボケにより奥行きが強調されるので3Dのような立体感をも感じることができます。
周辺光量が安定しているおかげでボケの広がりも極めて自然。本当に美しい描写をしてくれるレンズです。一方でピントの合う範囲が極めて狭く、使いこなすには少々修行が必要かとも思わせる場面もありました。以前カメラを始めた頃、「50mmF1.4は写真を学ぶのに最適なレンズ」と教えられた事があります。まさにこのレンズはその進化形といった感じ。このレンズを自在に操ることができたら、どれだけ綺麗な写真が撮れるのだろうと、素直にそう思わせるレンズでした。
小型軽量が好まれる傾向のある標準レンズの中で一際異彩を放つシグマ「50mm F1.4 EX DG HSM」は、写真が上手になりたいと思っている方に最適なレンズではないでしょうか。
Photo by MAP CAMERA Staff
撮影機材:Nikon D700 +SIGMA 50mm F1.4 EX DG HSM