スピード感あふれる独特の映像手法で撮影されたペンタックス「K-30」のTV CMに目が釘付けになってしまった人もいるのではないだろうか。このCMは、水しぶきの中で軽快なフットワークで撮影することで、水にも強いスポーツカメラという印象を強く押し出している。映像や音楽を含めてこのCMの評価は高く、様々な層にアピールできているようだ。
さて、K-30の「売り」はなんと言ってもこのCMのようなエクストリームな撮影を可能とする650gの軽量ボディーに、水滴や埃に強い防塵防滴構造と-10℃でも動作を保証する耐寒性能を備えていることである。プロ用の大型なカメラではなくコンパクトなこのボディーにこの機構を加えることで、機動性と携帯性が向上し即戦力となるカメラに仕上がっている。望遠撮影にメリットがあるAPS-Cサイズのセンサーを活かした登山や、悪天候でのスポーツ撮影が、ハイエンドカメラではないこのクラスのカメラで行えることがK-30の魅力だ。
一般的な用途では、-10℃のような過酷な状況で撮影することは滅多にないにしても、突然の雨でカメラが濡れてしまっても、サッと拭くだけで内部への浸水がないとなるとカメラに対する安心感も違ってくる(※防滴構造のレンズを使用した場合のみ)。
K-30の特徴としてもう一つ上げておきたいのが、チューニングが更によくなった有効画素数 約1628万画素のAPS-Cサイズのセンサーだ。ISO感度は100~12800(拡張ISO感度設定で25600まで使用可能)と比較的普通の感度設定となっているため、センサーの個性があまり表には出てこないが、撮影した画像を見るとその解像感に驚く。甘くなりがちな遠景の細部もしっかりと描写され、絞って撮影すればそれに見合った写真本来のクリアな像が浮かび上がってくる。これは、建造物の細かい模様にモアレが出るほどギリギリまで攻めたローパスフィルターのセッティングがあってのことなのだろう。
風景写真だけではなく、ポートレート撮影でもピントのあったまつげの描写なども見事で、単焦点レンズの絞り開放も正確に表現する。今回使用したDA★16-50mmF2.8ED AL[IF]は、絞り開放から解像感があり色のりも良く、オールウェザーに対応した素晴らしいレンズとなっており、K-30はそのレンズ性能を引き出せるカメラに仕上がっている。望遠ズームレンズであるDA★50-135mmF2.8ED [IF]SDMも解像感が高くこちらも一緒に使いたいレンズだ。
視野率100%のファインダーの中には、新開発SAFOX IX iによる11点のオートフォーカスフレームが広がる。中心部の9点の測距点はクロスセンサーとなっており、迷わずピタっと被写体を捉える。K-30におけるカメラの基本性能もスポーツ撮影に適した強みを持っている。
ライブビュー撮影時のオートフォーカススピードも高速化されており、積極的に使っていきたい機能となっている。ライブビュー撮影は、ミラーレス一眼やコンパクトデジタルカメラに慣れたユーザーには受け入れやすいことはもちろんだが、ライブビューを使用することでつばの長いキャップや、夏の日差し対策に麦わら帽子をかぶっていても撮影できるメリットがあるのだ。
K-30は、「様々な条件で最高の写真が撮れる」バランスのいいカメラといった印象だ。単なる防水カメラはたくさんある、高画素だけのカメラもたくさんある。K-30はその両方の要素を一つにしただけではなく、ペンタックスらしい作り込みで満足度の高いカメラに仕上げられている。
Photo by MAP CAMERA Staff