『dp2 Quattro』登場から約4ヶ月。dpシリーズの広角を担う『dp1 Quattro』が遂に発売となりました。 独創的なデザインと3層構造センサーを搭載するdpシリーズは、SIGMAのアイデンティティを具現化したカメラといっても過言ではないでしょう。 そしてシグマ独自のセンサー「Foveon」が写し出す写真は他のベイヤー機とは明らかに違う物です。 試写の日はあいにくの空模様だったため室内での撮影が多いですが、その魅力を語っていきたいと思います。
シャンデリアが浮かび上がるように描写されています。ローパスフィルターを必要としないFoveonセンサーは光をダイレクトに捉えるため、高精細と独特の色表現で写真に立体感を与えてくれます。
通常のベイヤー配列センサーは4画素で1つの色を作ってますが、Foveonセンサーは1画素で1つの色を作り出す事が可能です。色が多い被写体でも忠実にその物の色を再現してくれます。
初代・先代のユーザーだったのですが、Foveonセンサーはガラス、金属などの被写体が非常に得意だと感じています。 撮影時の注意点はハイライトの白トビにシビアな面もあるので露出には少し気を使わないといけません。
『dp1 Quattro』はシャッター時の振動が無いため低速でも美しい写真が撮れます。 グリップや操作感に関しては手の大きさによって好みが分かれそうです。筆者は身長176cm・手と指は比較的大きく長い方なのですが、しっかりと握れ操作もスムーズに行えました。
個人的にFoveonセンサーの好きな絵の出し方は彩度を少し落としてアンダー気味で撮ること。被写体の重厚感を見事に再現してくれます。
dpシリーズは他のカメラに比べ、光を意識するカメラだと思います。
RAW現像の際にX3 Fill Lightで少しシャドウ部を持ち上げました。それまで見えていなかった物が自然な風合いで浮かび上がります。
手で触れたときの感触まで伝わりそうな質感表現は本当に見事です。
バラの花もそうですが、脇に写る葉は独特の渋い色合いです。 初代・先代のウィークポイントだったWBもdp1 Quattroでは大きく進化をしました。
換算28mm相当の本機は最短撮影距離が20cm。撮影に不満を感じる事はありませんでした。
続いてモノクローム現像の写真です。dp1 Quattroは本格的なモノクローム写真を楽しむ事が出来ます。
モノクロームにしても写真の精細さと立体感は健在です。
マニュアルフォーカスを使いピントを合わせました。ヘリコイドはマニュアルレンズのようなトルク感があり非常に操作感が良い作りになっています。
手ぶれにはシビアにならざるを得ない機種ですが、モノクロームになると写真の見方も変わります。
シャドウ部を現像で持ち上げすぎるとベイヤー機とは少し種類の違うノイズが発生するので注意が必要です。しかしフィルム粒子のように感じるノイズはモノクローム作品に生かせるかもしれません。
撮影を終え、唯一無二のカメラだと改めて思いました。それはデザインやメカニカルな部分もそうですが、撮影者とカメラとの関係が他のカメラと違うように感じます。 何でも出来てしまうデジタルカメラに比べ、初代からじゃじゃ馬と例えられてきました。それは扱いが難しいという反面、撮影時の想像を超えた写真を撮る事が出来るという意味も込められていた言葉だと思います。 dp1 Quattroはそういった扱いが難しいという事を克服し、写真は想像を超えた物を撮る事が出来る完成度の高いカメラだと感じました。 書き込み速度など他のカメラに比べてネガティブな要素はあります。しかしdp1 Quattroはその比べているカメラとは全てが違います。 写真に対する考え方が本機と合致すればdp1 Quattroは最高のパートナーとなってくれる事と思います。
Photo by MAP CAMERA Staff