最高のカメラとは何なのか。それは撮る目的によって違うかと思いますが、その答えの1つが今回のカメラにあるはずです。ご紹介するのは『Canon EOS-1DX MarkII』、Canon製カメラのフラッグシップ機であり、最前線のスポーツ写真や報道写真の現場で活躍する最高峰カメラです。
背の高い大きなボディと高額な価格帯から「他のカメラと何が違うの??」と質問されることがあるのですが、そんな時は必ず「全部違うから」と答えます。フラッグシップ機に要求されるのは過酷な撮影状況にも耐えられる強靭なボディとメカ機構、どんな状況下でも写真に収めることができる信頼性と安定感、そして一瞬のシャッターチャンスを逃さない為の撮影性能。写真を撮ることを「瞬間を切り取る」なんて言い方をすることがありますが、この『Canon EOS-1DX MarkII』はまさにそういうカメラです。先代よりさらに進化した連写機能や動体撮影は、被写体を追従しながら秒間14コマという高速連写を実現。搭載されるCMOSセンサーも1810万画素から2020万画素へと変わり、高画質と高速性を両立させています。早速その最新の性能を確かめるべく試写へ向かいました。
今回試写へ向かったのは都内にある馬事施設。昭和39年に行われた東京オリンピックの馬場馬術競技会場となった場所でもあります。
白馬の瞳を『EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM』で撮影した1枚。さすが2020万画素へと進化したセンサーということもあり、解像感は十分。まつげの細かな描写はもちろん、吸い込まれそうな目の輝きまで捉えています。普段私は馬を見る機会がほとんどない生活をしているのですが、思わず白馬の美しい姿に目を奪われてしまいました。
馬術競技で使用する色とりどりの道具類。Canon機らしい高コントラストで美しい色乗りです。ダイナミックレンジも広いですね、階調豊かなシャドウのトーンは流石です。
競技前の白馬。緊張しているのか、興奮を抑えているのか、立ち止まって参加する他の馬をじっと眺めていました。
馬術競技が始まり、ターンして障害へ向かう1コマ。前足に荷重がかかり、アスリートのような筋肉が浮かび上がった瞬間を『EOS-1DX MarkII』は捉えました。
『EOS-1DX MarkII』は先代の連写機能よりさらに2コマ増え、AF/AE追従で約14コマ/秒という超高速連写を実現しました。これはセンサーの画素数が増えたことを考えると驚くべき進化と言ってもいいかもしれません。容量の増えたデータを処理しながらもコマ数が増えたのですからね。そして本機より対応になったCFast2.0カードを使用すればRAWで約170枚まで連続撮影が可能ですから、ここぞというシーンで連写速度が遅くなる心配もなくなりました。
また高性能なAFシステムも忘れてはいけません。『AIサーボAF III+』へと進化した最大の特徴は、接近してきた被写体が突然に高速で遠ざかるようなスピードのあるシーンでも対応力が強化されたこと。今回の撮影でも、走る・跳ぶ・ターンするという素早い馬の動きを『EOS-1DX MarkII』のAFは常に食らいつき高いピント精度を保ったまま被写体をファインダーで追うことができます。
シャッターチャンス。高い障害を跳び越えると大きな歓声とともにカメラの高速シャッター音が会場に響いていました。
流し撮りでもAFシステムの恩恵を受けられます。疾走する馬を1/20秒で手持ち流し撮りでしたがしっかりと被写体を捉えることができました。
助走をつけて次の障害へ向かう白馬の足元。舞い上がる土と揺れる尾がスピードを感じさせます。
軽やかにジャンプした瞬間を撮影した一枚。フレームインしてからアウトするまで『EOS-1DX MarkII』の新しくなったAFシステムは被写体を追い続けます。新開発のAFセンサーは最大61点の測距点を持ち、先代となる『EOS-1DX』との比較で周辺部の縦で約24%、中央部の縦で約8%拡大していますので、より動く被写体を捉えやすくなりました。
ターンする瞬間に白い尾がふわりと開き、光が当たってとても美しい光景でした。高画質で高速連写もできる本機はスポーツ撮影において理想のカメラと言える完成度です。
Canonのフラッグシップ機といえば高感度に強いことも特徴の一つ。その性能を確かめるべく、夜の新宿へ舞台を変えて高感度撮影を試してきました。
まずはISO:6400から。もうこのくらいの感度だと遠目にはノイズが乗っているのかわからないレベルです。拡大すれば多少のザラつきは感じられるものの、実用レベルで全く問題のない写りを見せてくれます。
続いてはISO:12800での撮影です。他のカメラもそうですが、このくらいから高感度に強い・弱いの差がはっきりと出てくるボーダーラインではないでしょうか。
『EOS-1DX MarkII』に関して言うとISO12800でも素晴らしい低ノイズとディテール表現です。シャドウ部には確かにノイズは出ているのですが、写真として見たときに嫌な感じがしない自然な表現なんですよね。トリミングなどは厳しいかもしれませんが、記録写真としては十分に使用できる写りです。
こちらはISO:25600での撮影です細かいディティールはしっかりと表現されているもののノイズも目立つようになってきました。しかし画がベタッと潰れることなくレンガの細い線と質感が確認できるのは凄いですね。
常用感度の上限設定であるISO:51200での撮影。 光量の少ない撮影条件ということもあって厳しくなってきた印象はありますが、カラーノイズがほとんど出ていないので写真としてきちんと見える高感度表現です。下にある街路樹は拡大するとベッタリとしてきましたが、一枚の写真として引きで見ると葉の細かな陰影まで感じられることに驚きました。新開発の映像エンジン「デュアルDIGIC 6+」の実力は確かなもので、ISO:51200でも写真として残せる高感度性能は報道写真などの現場で大きな力を発揮するだろうと思います。
条件や状況を選ばずに確実に撮影ができる。それがこの『EOS-1DX MarkII』の最大の強みだと感じました。高画質と優れた操作性に加え、強力なAFシステムが撮影をサポートしてくれますから瞬間を逃すことなく写真に収めることができます。ボディの信頼性に関しては、防塵防滴仕様なのはもちろんの事、シャッターユニットは40万回の作動試験をクリア、温度変化・耐衝撃を考慮して開発されたAFユニットやカメラ内部の温度上昇を抑える放熱構造などフラッグシップ機らしい強靭で堅実な作り。また動画機能に関してはデジタルスチルカメラで初めてデジタルシネマ規格の4Kを60pで内部記録できるようなりました。動体にAFフレームとピントを追従する動画サーボAFも搭載していますから、スポーツや野生動物の4K動画撮影に大きな影響を与えそうです。
先代のネガを徹底的に改善し改良してきた本機は非常に完成度の高い一台でした。おそらく今年開催されるリオデジャネイロ オリンピックでは歴史的な瞬間を撮影してくれることでしょう。高画質・高速連写・最高峰のAF・強靭なボディと全てを兼ね備えた『EOS-1DX MarkII』世界中のカメラマンが待ち望んでいた一台です。
Photo by MAP CAMERA Staff