ニコンのプロ・ハイアマチュア御用達の大口径ズームレンズ、70-200mm F2.8が新しく生まれ変わりました。
『AF-S NIKKOR 70-200mm F2.8E FL ED VR』は、元々画質に定評のあった「AF-S 70-200mm F2.8G ED VRII」からさらに高い解像性能を追求したモデル。事前に公開されていたMTF曲線からもその進化ぶりが伺え、否応無しにその期待は高まります。そして待望の発売日、念願の新製品を手にして撮影に出かけました。
まず訪れたのは迎賓館。大きな西洋風宮殿建築は望遠ズーム向きではありませんが、透明感高くクリアな描写はカメラの高い解像力と相まって、肉眼では見えにくい細部をしっかり引きよせてくれます。
時刻は正午前、一般開放された前庭から迎賓館を見ると太陽が真正面に位置します。強烈な逆光状態のため暗部が潰れてしまうかと思いきや、高いコントラストのまま建物に施された美しい彫刻を捉えてくれました。定評あるナノクリスタルコートの実力をまざまざと見せつけられた感じです。
垣根越しに動く列車を撮影。スピードはあまりでていませんでしたが、スポーツレンズに相応しい早いAF動作で動く被写体をしっかり捉えます。
展望施設から広い景色を望遠で撮影すると、4段分に強化された手振れ補正機能を十分に体感できます。新幹線の動きに合わせてカメラをスライドさせると張りついた様な粘りがファインダー越で確認できました。軽量化され安定感が増した本レンズですが、カメラの高精細化が進み僅かなブレも許されない昨今ではとても頼もしい限りです。
F2.8の大きく綺麗なボケ味も健在です。ほぼ最短に近い手前の赤い葉から伸びる枝がゆっくり溶けていく様子が分かります。木漏れ日の玉ボケも綺麗です。
日陰の涼しい場所に移動すると、しっとりとした印象をそのままに捉えます。空気感も捉える高い解像力です。
水滴の侵入を防ぐ防塵防滴と前面フッ素コートの採用で耐候性が上がっているのも見逃せないポイントです。普段から保護フィルターを常用していても、フィルター交換の際に水滴が落ちてきたなどのイレギュラーな経験があると頼もしく思えます。
夕刻の酉の市では、1/10秒というスローシャッターでも、強力な手ぶれ補正が筆者の拙い腕をしっかりサポートしてくれました。カメラの高感度耐性が向上し無理にスローシャッタを使う機会は減りましたが、本レンズのクリア感を存分に引き出すなら、やはり感度は低いに越したことはありません。明るい電球を画面内に配置しても画面全体で高いコントラストを維持しており、ここでもナノクリスタルコートによる最高のパフォーマンスを感じることができます。
混雑している場所でも向けた方向に瞬時に合焦する早いAFが本当に便利です。本レンズからズームリングが前玉寄りに、ピントリングがボディ寄りに変更されたことで、上方向にカメラを向けた時のズーミングも便利になっています。頭上に飾られた熊手のの細かな飾りをグッと引き寄せることができました。
最短撮影距離も約30cm短縮され1.1mに。よりマクロ的な撮影と近接での大きなボケ味を楽しむことができます。
近接撮影などで重宝するのが新設された「ロックボタン」です。切り替えスイッチでAF-L/AF-ONのいずれかに割り当てることができます。カメラ側の右手親指操作でも不自由はなかったのでが、レンズホールド位置に自然と収まるボタン操作でピントが決まるとカメラ側のホールド感がより向上し。合焦後の構図決めもしやすくなる印象です。
昨年リニューアルされた「AF-S 24-70mm F2.8E ED VR」同様AFの初動が早く、すばしっこく動く被写体でも瞬時に合焦します。
カメラを向けた瞬間に大きなあくびをした野良猫。決定的瞬間を逃さない高い機動力です。
カタログにも記載されていますが、本レンズには軽量で色収差の補正に優れた蛍石レンズが採用されています。 レンズの軽量化と軽くて丈夫なマグネシウム合金製部品の採用で、従来モデルと比べ約110gの軽量化が図られたとのことですが、実際手にしてみてもさほど軽くなった印象は感じられませんでした。重さ1430gのレンズはしっかりとした造りで、これまで同様よく写るガラスの塊といった印象です。しかしカメラに装着するとその印象が大きく変わります。軽量化を担う蛍石レンズが前玉寄りに配置されたことで、重心がカメラ寄りになりカメラとの一体感が向上。とても扱いやすくなり、被写体同様のアグレッシブな動きが可能になりました。
画質の向上はもちろん、使い勝手の向上で想像以上に便利になった新70-200mmを是非お試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff
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