充実の一途を辿るシグマのArtシリーズの大口径単焦点レンズ。先日、超広角の「14mm F1.8」が発売され、14mmから135mmの間に7種類ものバリエーションが揃いました。改めてシリーズのKasyapaを見返してみると、すべてキヤノン用で撮られていることに気づきます。
ニコン純正の単焦点レンズもF1.4とF1.8のシリーズが種類豊富に発売されており、これらのレンズとの差が気になるところ。かく言う筆者もその一人です。と言うことで、すでに紹介済みのレンズですが、数回に分けてニコンマウントのシグマレンズを紹介させていただきます。
まずは、スタンダードな標準レンズ『Art 50mm F1.4 DG HSM』から。
本レンズの魅力は、何と言っても超高画素時代にふさわしい光学性能を追求して作られた圧倒的な解像力。高精細なD810の性能を存分に引き出してくれます。建物の全景を納めるべく少し下がった場所からの撮影でも、細かな装飾までしっかり解像しているのが分かります。
重さ約815g。フィルター径77mm。標準レンズとしては大きめのレンズは、外観の迫力通り明るいファインダー像で、クリアーに被写体を捉えてくれます。開放F1.4の大きなボケの中に照明の明かりと窓から差し込む明かりをバランス良く綺麗なグラデーションで再現してくれました。
人間の視野に近い50mmの画角は、見たままの景色をそのまま切り取ってくれます。F4位まで絞るとよりシャープな描写になり、高精細なカメラの性能の高さも感じることができます。カーブした建物は歪みなく、ガラスに反射した広場の様子も細かく捉えているのが分かります。
蓮の花が綺麗に咲いていたので池の畔から手を伸ばして撮影しました。不安定なホールドでも、明るいレンズはシャッタースピードが稼げるので、ブレを気にせず撮影できました。近接撮影による薄いピント面でも、F2.8まで絞ることで花全体のイメージを綺麗に収めつつ、背景を綺麗にボカすことができました。厚い雲が覆う薄暗い空の下での撮影でしたが、花の色を綺麗に再現しています。
キヤノンのカメラとニコンのカメラで撮り比べると、キヤノンの方が色鮮やかに写ると耳にしますが、ニコンはその分、しっとりとした質感を忠実に再現してくれる印象を受けます。
参道をローアングルで狙うと山門と木々の影が厳かな雰囲気を演出。シルエットを残した暗部が全体を引き締めてくれます。一方で明部の緑の鮮やかさもそのままに残しています。透明感高いレンズの描写を、カメラの広いダイナミックレンジが余すとこなく受け止めており、純正レンズに勝るとも劣らない、相性の良さを感じます。
最短撮影距離は40cm。絞り開放でギリギリまで近づくと、これぞ大口径単焦点レンズと言わんばかりの大きなボケ味が楽しめます。
遠景時では絞り開放からシャープな描写で、周辺減光も抑えられているのが分かります。クリアな描写の中にも少し柔らかさを残しており、作品作りを念頭に置いた隠し味のようなものを感じることができます。
明るい場所での照明も綺麗に捉えるのは、高い透明感の賜物。フレアやゴーストの発生など微塵も感じさせません。
折り重なる鉄骨の立体化も綺麗に捉えました。曇り空の影を補うため露出をプラスに補正しましたが、質感は損なわれません。色味に派手さはなくても、被写体そのものをしっかり見つめる写りをしてくれます。
道を歩いていると一匹の猫が近寄ってきました。首輪を付けていたので人に慣れたおとなしい子と想像しつつ、目にピントを合わせると予想に反して、たくましい表情を見せてくれました。ポートレートを撮る機会を持たない筆者ですが、偶然出会った猫からでもこんな表情を引き出せる高性能ぶりに、ポートレートでの活躍が容易に想像できます。あらゆるシーンでの活躍が見込める万能な標準レンズと言えるでしょう。
「Art」シリーズが示す高い描写性能は、マウントを選ばす高画質な画像を提供してくれました。少し重いことを我慢すれば、文句の付けようのない素晴らしいレンズです。その重さもガラスの塊といった感じで、描写力に期待をもたせる安心感がありました。ボディに装着すればバランスも良く、安定した撮影が楽しめます。
優れた純正レンズが揃うニコン機を使っていると、他社製レンズに手を出しにくいものですが実際に使ってみると、シンプルな単焦点レンズということもあり、違和感なく使用できます。使い勝手も良く高性能。純正派の方にもオススメできる1本です。 レンズ選びは一眼レフの醍醐味です。食わず嫌いはもったいないですよ。是非お試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff
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