Canon EOS 6D MarkII
今よりもずっとフルサイズ機というのが憧れの存在だった2012年、「小型軽量なフルサイズ一眼レフ機のエントリーモデル」というコンセプトでCanonとNikonより『EOS 6D』と『D600』それぞれが発売されました。当時のフルサイズ機のイメージといえば画質重視のプロ・ハイアマチュア機であり、その分『大きい・重い・高価』という三重苦とまでは言いませんが、APS-C一眼レフからのステップアップからは少しハードルが高い存在であったことは間違いありません。そこへ登場してきた革新的な2つの一眼レフは予想通り大ヒットし、フルサイズという存在をより身近にしてくれました。
しかし、約5年経過した現代において「小型軽量なフルサイズ機は?」と質問されたら、私は真っ先にSONYのα7シリーズが頭に浮かびます。デジタル技術の発展により目ざいましいスピードで進化し続けるミラーレス機は、今まで本流だった一眼レフシステムを飲み込む勢いにまで成長しました。
前置きが長くなりましたが、今回ご紹介するカメラは『Canon EOS 6D Mark II』。フルサイズミラーレス機が大きくシェアを伸ばす今の時代に6Dシリーズ初のモデルチェンジを果たしました。画質は?性能は?だけでなく、小型軽量なフルサイズ一眼レフとしての進化とメリットについても注目していきたいと思います。
台風直前の晴れ日に向かったのは東京・浅草。たびたびKasyapaでも登場する場所ではありますが、私自身ここを訪れたのは十数年ぶりでした。ひと昔前は修学旅行先のイメージでしたが、今は日本人より海外からの旅行者の方が多いのではと思うほどの賑わいよう。真夏の暑さと人混みから避けようと、一本道を逸れた時に目の前を通り過ぎた浴衣姿の女性をスナップした一枚。今までのCanon機の味付けはコントラスト重視のような印象を持っていたのですが、この『Canon EOS 6D Mark II』は階調重視の印象を受けます。
本堂への入り口とも言える宝蔵門と五重塔。少し渋い発色の朱色と白とのコントラストが目を引きます。日差しが強く、影がくっきりと出そうな条件だったのですが、シャドウ部までしっかりと写し出す素晴らしいダイナミックレンジですね。今回『Canon EOS 6D Mark II』では新型の2620万画素フルサイズCMOSが搭載されました。画素数だけ見ればスタンダードなスペックかもしれませんが、新規のフォトダイオード構造と新カラーフィルターを採用したことにより、写真表現が従来機とは違うように見えます。 より撮れる写真が上質になったといえばいいでしょうか、非常に好印象な画作りです。
雷門から宝蔵門までずらりと店舗が並ぶ仲見世での一枚。写真からもお分かりになるかと思いますが強い日差しが照りつける中で撮影しました。ところが影の黒が潰れていないというか、影の中まで全て写し出していることに驚きです。『Canon EOS 6D Mark II』は目で見た印象のままを写真にしてくれます。
凶が出やすいと有名な浅草寺のおみくじ。番号の書かれた引き出しから取り出す瞬間を撮らせてもらいました。
今回使用した『EF24-70mm F4L IS USM』はF4通しレンズですが、なめらかなボケ味と解像力が上手く両立されているレンズですね、『Canon EOS 6D Mark II』とのバランスもとてもいいです。
全体的なベースアップが感じられる、6D初のフルモデルチェンジ。
カメラ・家電・自動車など様々な製品に訪れる“モデルチェンジ”。見た目も機能も従来機と全く別物になるものもあれば、キープコンセプトで堅実な性能進化を果たすものがあります。今回の『Canon EOS 6D Mark II』でいえば、後者のキープコンセプトによるモデルチェンジ。見た目、サイズ、ボタン類の配置など、ほぼ『Canon EOS 6D』と同じなので、新型に乗り換えた時でも違和感なく使えることでしょう。外観で大きく変わった点といえばEOSフルサイズ機初となるバリアングルモニターが搭載されたこと。スマートフォンのようなタッチパネルによる操作やデュアルピクセルCMOS AFによるタッチシャッターも可能になりましたから、液晶画面が動くだけでなく、操作性や撮影性能も大きく向上しています。
そして何より新型CMOSセンサーと映像エンジンDIGIC 7採用による画作りの進化。これが大きいです。
いままで一昔前の自動車のエンジンパワー競争のように、カメラもセンサーの高画素化が高性能の証という謳い方をされてきました。しかし2400万画素以上が標準となった現代において、画素数(画像サイズ)だけでなく画像処理エンジンの解像性能やダイナミックレンジに重きを置いた機種も増えてきています。この『Canon EOS 6D Mark II』もまさにその通りで、今までのフルサイズEOSでは感じられなかった階調表現を得られる魅力的な一眼レフへと進化しています。
浅草寺から一歩外れた通りをスナップ。夜になると賑わうであろう飲食店が集まる通りには藤棚があり、涼しげな日陰になっています。個人的にはモノクロームでも使ってみたい階調の豊かさです。
地下鉄の駅にあったお神輿をスマホ撮影する旅行者。『Canon EOS 6D Mark II』は高感度性能も良くなったということで、ISO:12800の設定でJPEG撮って出しをしてみました。手前が少し暗いため彩度が低い印象ですが、高感度ノイズは感じられません。色ノイズもよほどの超高感度にしないと出ないですね。写真撮影に十分使える感度域です。
一眼レフとしての使いやすさが問われる、光学ファインダー。
正直、初めて『Canon EOS 6D Mark II』のスペック表を見たとき、「え?まだファインダーが100%じゃないの!?」とファインダー視野率に唯一不満がありました。視野率97%から98%への進化。プリズムの設計は新しくなったと考えられますが、この微々たる進化は…と。しかし本機のファインダーを覗いてみると、ファインダーがとても明くて見やすい。これは地味なようで大きな進化点です。
一眼レフを選ぶ大きな理由の一つに光学ファインダーがあると思います。見たままの空気感をファインダー越しに確認出来る光学ファインダーは、視野率と明るさが命(と思っています)。特にAFレンズの使用がメインの現代においてはファインダーは明るい方が絶対的に撮影しやすいですし、撮っていて気持ちもいいものです。(MFレンズのピント合わせは少し暗いファインダーほうがピントの山が掴みやすいというメリットもあります。)
そして視野率98%に関しては、当初不満を持っていたのに実際の撮影では全く気になりませんでした。ファインダーにギリギリ映らないシビアな構図を攻めれば違いを感じると思いますが、通常使用で違和感や不満を感じることはないでしょう。
続いてはフィールドを都心に変えて撮影です。今までは階調の良さを見せる写真でしたが、今回はコントラストと黒を強調して重厚感を出しました。『Canon EOS 6D Mark II』は被写体によって写真の見せ方を自在に変えられるのが大きな魅力です。
通常だと街中を歩きながらフルサイズ一眼レフを使ってスナップするのは少し抵抗があったりします。それはカメラの主張が強すぎて目立ちすぎるということと、カメラが重くて疲れるという2点からです。しかし『Canon EOS 6D Mark II』は使えば使うほど本当にフルサイズ一眼レフなのか?と疑問に思うくらい軽快。感覚的には『EOS 80D』といった感じなのです。そして、やはり光学ファインダーは良いなということを感じました。スナップの時って何かに心が反応してシャッターを切るわけですが、光学ファインダーだとその感覚を保ったままシャッターを切ることができるのです。
スナップにも使える進化点を言えば、AFセンサーはオールクロスの45点。少し中央寄りの配置ではありますが、動体撮影に十分な性能も手に入れました。それに合わせて連写も秒間4.5コマから6.5コマへ強化されていますから、シャッターチャンスをより逃さないカメラになりました。
最後は今回の撮影で一番の高感度ISO:25600で撮った一枚。カタログでは常用ISO:40000と謳っていることもあり、階調のグラデーションも斑らになることなく滑らかです。拡大して確認すれば高感度なりの画質ですが、写真として十分な写りでしょう。細かなディテールの表現もしっかり再現されています。
ミラーレスではない、軽量フルサイズ一眼レフという選択肢。
筆者自身、私物で持っていたデジタル一眼レフを全て手放した身なのですが、『Canon EOS 6D Mark II』を使用してみて「やっぱり一眼レフは良いなぁ」と改めて思いました。手放した理由として“大きい・重い”があったのですが、本機で言えばそこは完全にクリアしており、それに加えて素晴らしい画質を得ることができます。ベース価格が従来機より上がりましたが、これは『Canon EOS 6D Mark II』の基本性能が向上し、ハイアマチュア向けの小型軽量モデルへ進化したためと言えるでしょう。その分の価値は十分にあるカメラです。
そして一眼レフの光学ファインダーで見える世界はやはり良いなと再認識しました。撮像イメージをダイレクトに見れるEVFは便利ですが、被写体に対して客観的になりすぎてしまう印象を個人的に持っています。ファインダーを覗いていてもダイレクトにその場の空気を感じられるのは、やはり光学ファインダーだと思いました。
今まで6Dシリーズはエントリーモデルのような位置付けをされてきましたが、『Canon EOS 6D Mark II』は違います、『Canon EOS 5D Mark IV』に近い基本性能を手に入れたことでプロの撮影現場でも使える軽量モデルへとランクアップしました。これは他のフルサイズ一眼レフを使用しているユーザーも一度体感していただきたいですね、『Canon EOS 6D Mark II』の軽快さはミラーレス機とは違う別の“軽さ”を感じるはずです。
Photo by MAP CAMERA Staff