589:『Voigtlander NOKTON 35mm F1.2 Aspherical SE E-mount』
2020年06月26日
今回はフォクトレンダーの『NOKTON 35mm F1.2 Aspherical SE E-mount』をご紹介します。今まであったEマウントシリーズのラインアップからデクリック機能を取り除き、よりスチル撮影向きに洗練された本レンズ。 コンパクトな造りはもちろんのこと、多くのマニュアルレンズを専門に作っているフォクトレンダー製ということもあって、ピントリングのしっとりとしたフィーリングは感動ものです。そして、開放F値1.2という明るさから美しいボケ味が得られます。そんな当レンズをSONY α7IIIに合わせて撮影してきました。
青い世界に浮かび上がる白い物体。こちらはサメの顎の標本です。20種類くらい飾られていた中から、小ぶりで形のいいものを選びました。噛みついたら離さないと言わんばかりに、内側に向いた歯が重なります。海では決して出会いたくないものです。
いわしの群れが力強く泳いでいます。群れの奥の方に光が当たっていたのが美しかったです。ピントは群れの中を狙います。オートフォーカスだと手前のいわしにピントが合ってしまいますが、当レンズはマニュアルフォーカスなので自分の意図どおり自由自在にピントを定めることができます。
雨の動物園は誰もいないからデートの穴場。そんな歌がありましたが、雨の水族館は平日でもご覧のとおりの人気です。イルカショーでは指揮官たちの動きに合わせてイルカが元気にジャンプ! 跳んでいるのは一瞬のことですが、写真に撮って後からじっくり見てみると、イルカが予想以上に筋肉の塊であることがわかります。イルカの表情も様々。筆者は手前の口を開けて跳んでいる子がお気に入りです。
シロクマが泳ぐ姿を間近で見ることができました。クマはいろいろな種類がいますが、白の面積が増えるほど獰猛だと聞いたことがあります。アクリル板のおかげでのんびり見学をすることができます。
水族館の裏手に回ると、またシロクマがいました。ただし今度はハリボテのシロクマ。イルミネーションの時期に飾られるものだそうです。いまの季節はこうして休んでいるのです。
少し変わった紫陽花があったので、最短撮影距離まで近づいて撮影。絞りは開放F値1.2に合わせます。アウトフォーカス部分が綺麗にボケているのですが、ピントが合っている付近も輪郭がふんわりと滲んでいます。これはこのレンズの特長なのではないでしょうか。お好きな方にはたまらないはず。
閉園間近ということで疲れているのでしょうか。眠そうなリスです。
入口兼出口のあたりでふと振り返ると、「WELCOME」という文字が書かれていました。帰るのに「ようこそ」はちぐはぐですが、そのときまたここに来て「WELCOME」の文字を見たいなと思ったのでした。夕方なのでライトも点いており、それが天井に反射しているのが綺麗です。
後日。今度は眩しいくらいに晴れています。松の木を見上げると枝の隙間から強い光が差し込んでいたので、光芒を出して撮影。こういった写真では枝はシルエットになりがちですが、地面にある白い歩道がレフ版の役割を果たして光が回り、写真を色鮮やかに仕上げることができました。
最後に寄った東京駅にて。こちらのドームには干支のレリーフが埋め込まれています。ただし、12種のうち8種のみ。残り4種はどこにいってしまったのかというと、佐賀県にある武雄温泉楼門にあるそうです。
シンプルでコンパクト
オールドレンズのような見た目と操作感とは裏腹に、光学設計はEマウントセンサーに最適化されていますので、画面周辺部まで美しく解像してくれました。ボディにレンズ情報を伝える接点も搭載してありますので、Exifデータも写真に記録されます。開放F値は1.2。シャッタースピードや白トビを考えると、今回のような曇り空も条件的に良かったと思えます。指でピントを操作する感覚や、開放から使える味のある描写が嬉しく、最後まで楽しく撮影できたのが印象的でした。ピント合わせはスムーズに行えましたが、α7IIIにあるピント拡大機能を使ってもよいでしょう。シンプルでコンパクトな逸品。ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff