SIGMA DPシリーズ。Foveonセンサーの独自の高い描写力でファンを持つコンパクトデジタルカメラ・ブランドですが、その後継機として開発された本機はデジタル一眼レフカメラ「SD1 Merrill」と同じAPS-Cサイズの4,600万画素Foveon X3 Merrillセンサーを搭載するハイクラスコンパクト。各部のブラッシュアップも相まってかなり印象の異なるカメラに仕上がっています。
上の写真は純正で発売されるクローズアップレンズを使用して撮影したもの。「DP2 Merrill」も最短撮影距離が28cmと長い訳ではありませんが、このレンズを装着すると更なるクローズアップが可能。マクロ的な撮影が可能なので、1枚あるとなかなか便利なレンズです。しかし…独特な描写ですね。RAWデータでの情報量も凄まじく1ファイルで50MB前後の重さです。どういった仕上がりを描いているか、撮影者次第で大きな可能性を担保しているのがこのカメラの大いなる魅力でしょう。
搭載しているレンズ性能の高さは事前に単体で発売された『30mm F2.8 EX DN』からもおりこみ済みでしたが、更にモディファイを加え専用設計とする事で全域にわたって驚くほどシャープ。壁面の細かな凹凸もしっかりと描写し、鉄やガラス等の質感の違いもしっかりと描き分けています。
ほのかに光の差す様なシチュエーションは、DPシリーズにとって実力の発揮しがいの有る所。特に金属の質感等は目を見張るものが有ります。右側に大きくオフセットしたレンズのおかげでグリップはしやすいものですが、手ぶれには十分注意したいところです。
枯れた花の細やかなライン、葉脈も含め、何とも言えない存在感を感じるのがDPシリーズの描写力なのでしょうか。ファイルデータは重いですが、バッファが大きいおかげか撮影中にスタックしてしまう様な事は無く、リズムよく撮影する事が出来ました。ただしプレビュー表示に少し時間がかかってしまう点は、画素数ゆえ仕方の無い所でしょう。いちいち撮影して確認するのではなく、すっと撮影に集中してしまうのが、「DP2 Merrill」の撮影スタイルとしておすすめです。
この画像だけは、拡大画像をしっかりと大きいものにしました。少々重いですが、細部細部にわたる描写とトーンをぜひご覧下さい。「驚愕の描写」、そう言って差し支えないでしょう。今の多くのコンパクトデジカメとは使い勝手もかなり違うものですが、こうした描写やRAWでの展開の広さを感じてしまうと「DP2 Merrill」の大いなる魅力を感じます。このカットはマップカメラ2号店、3階フロアに大きく引き延ばしてプリントを展示していますが、出力すると更に息をのむ様な高画質。プリント迄考えている方にも、ぜひともおすすめしたいカメラです。
ドレスのドレープの陰影、マネキンの手に当たる複雑な光の照応と、白のトーンをぜひご覧下さい。この深みと存在感は、やはりDPシリーズならではのものでしょう。
暗い中でも、諧調が潰れずにしっかりと残っています。左の部分もデータでは描写されているので、それを残すか残さないか。撮影者に委ねられる部分は非常に大きいです。
ISO800での撮影、現像段階でノイズリダクションを1段階強くかけていますが、これくらい迄耐えてくれれば実用できる範囲です。レンズも明るいおかげで暗所での撮影にも対応してくれそうですね。
左に有るのがクローズアップレンズ、AML-2。ボディは一回り大きくなりましたが、シンプルで簡潔なデザインは好ましいものです。レンズの繰り出しが少なくなったおかげでフードも固定で使用でき、マニュアルのリングがレンズ鏡筒についたのはMF時にとても使いやすい改良点です。シャッターボタン同軸のダイヤルもクリックが良く、使いやすいもの。背面液晶も92万ドットと美しいものになり、仕上がりのイメージがより判断しやすくなっています。また、バッテリーに関してですが、1個でだいたい120カット程度は撮影できる様です。モニターの明るさを抑える、スリープモードの活用等を行えば同梱の2個でもひとまずの撮影はまかなえる程度、もう1つでもあれば、特に気にせず撮影できるのではないでしょうか。
SIGMAがおくる孤高のハイエンド・コンパクト。今回の試写でもまだまだ使いこなせた様には思えない、大きなポテンシャルを秘めた1台です。じっくりと写真に向き合う方へ、ぜひ検討して頂きたいと思います。
『SIGMA DP1 Merrill』のフォトプレビューはこちら>>
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Photo by MAP CAMERA Staff