ニコン初の手ブレ補正機構(VR)搭載レンズとして「AF VR ED80-400mm F4.5-5.6D 」が発売されたのが2000年12月。1本で中望遠から超望遠まで幅広い画角をカバーする使いやすいズームレンズは、手ブレ補正効果も絶大で動物やスポーツ等幅広い用途に重宝されました。そして2013年3月、約12年の年月を経て人気のズームレンズは最新デジタルカメラの特性を最大限に引き出すべく、より高性能に生まれ変わりました。待望のリニューアルを果たした「AF-S 80-400mm F4.5-5.6G ED VR」の美しい描写をご覧ください。
まずは望遠ズームの定番、動物園でのカット。人になれてるとは言え警戒心の強いミーアキャットを驚かせることなく、ここまで引き寄せることが出来ました。大口径ズームで200mm、高倍率ズームでも300mmが主流の中で400mmはもう一歩寄れる魅力があります。そして驚いたのが毛並みの質感を生々しく伝える解像力です。背中にかけてのボケも美しく、最新光学系のレンズというのが一目で伝わってきます。
レンズ自体の大きさは少し大きくなったものの、凹凸の少なくなったデザインはウエイトバランスが良く、210gほど増えた重さもさほど苦になりません。
望遠側にスームすると若干全長が長くなりますがズームリングの幅が広く前玉側に移動したため、レンズを構えた際の安定感が向上したように感じます。手ブレ補正が売りのレンズは、手持ち撮影を意識した進化を果たしてくれました。
この撮り回しの良さで、ほぼ素人の野鳥撮影でもカワセミの決定的瞬間に付いていくことができました。1度でもこういう写真が撮れると撮影がどんどん楽しくなってきます。
手ブレ補正機構の進化も見逃せません。シャッタースピード3段分から4段分とわずか1段分ですが望遠側での効果は絶大で、ファインダーを覗きながらカメラを揺らすと被写体にくっついている感じを体感できました。水の流れの表現するためにスローシャッターでの撮影でも、その効果を十分に確認できました。
コントラストが高くシャープな描写はさすが最新レンズという感じです。被写体の寄ることによって生まれるボケも美しく対象物を上手く引き立てることもできます。 400mmという余裕の望遠力で圧縮効果はもちろん、クローズアップ的な撮影も可能でいろんな撮影が楽しめます。
通常のEDレンズに加え、スーパーEDレンズを組み込んだという贅沢なレンズ構成では写りが悪い訳がありません。
透明感の高い描写は鮮やかな水鳥の色も美しく再現しています。撮影の時には気づかなかった水浴びの度に飛び散る滴の流れもよく表現されており、きめ細かな質感まで伝わってきます。
明暗の差が大きい場面でも、暗部までしっかり描写。RAW現像で浮かび上がる細かい模様や彫刻などを見ると最新カメラの凄さが分かります。そしてそのカメラの性能を最大限に引き出すレンズの重要性も改めて感じます。
超音波モーターによるAF駆動になった新レンズは、マウントアダプターを介してNikon 1シリーズでもAFが使用可能になりました。
焦点距離が2.7倍になるNikon 1シリーズなら1080mm相当のAF望遠撮影が可能になります。ISO感度を少々高めに設定しシャッタースピードを稼げば優れた手ブレ補正の効果もあって1000mmオーバーの超望遠でも安定した撮影ができます。
そして小さなセンサーで解像力の高いレンズ中央部を抜いた画とは言え、望遠レンズとは思えない素晴らしいシャープ感を見せつけてくれました。
使い勝手の良い超望遠ズームは当初の目的はもちろん、新たなジャンルにも挑戦したくなる素晴らしい性能を有しています。
日中の屋外をメインに撮影するのであれば他の望遠レンズを使うのを躊躇うほど。この見事な安定感から12年の進化をたくさん感じとることができました。
Photo by MAP CAMERA Staff