さて35mm判換算でRICOHのAPS-Cサイズの28mm単焦点レンズと言えば、GXRの「A12 28mm F2.5」ユニットが思い出されます。
評判の高かったGXRのユニット同様、画像の隅々までクリアで高いコントラストな描写はさすが折り紙つきのレンズといった感じです。
GXRと比べ開放F値が2.5から2.8と若干暗くなりましたが、5群7枚とスッキリしたレンズ構成からか透明感が高く、解像力の高いCMOSセンサーの能力を存分引き出しているといった感じがします。
もはやお馴染みとなった東京駅舎。煉瓦の模様はもちろん屋根に貼られた玄昌石のスレートまで本当に細かく描写しているのが分かります。
紫陽花の淡いグラデーションと、葉脈の1本1本がしっかり見てとれる素晴らしい質感描写に加え、梅雨のしっとりとした空気感もしっかり伝えています。
ビルの外壁のザラザラとした質感に窓ガラスの反射、逆光に透けて見える若葉などいろんな素材が入り込んだカットですが、どの被写体もバランス良く忠実に再現されています。どれか1つに引っ張られる事無く、全体的にニュートラルに仕上がる落ち着いた発色です。
ホワイトバランスのモード調整で好みに合わせた撮影は可能ですが、比較的派手目な発色をすることが多いコンパクトデジタルカメラの中でこの落ち着いた発色に好感がもてます。
朱色のテーブルに落ちるグラスの影も綺麗です。スポットライトの明暗の差やテーブルの脚に反射する光源など光の描写がとても美しく感じます。
大きなセンサーにレンズが一新されても、RICOH GRシリーズが得意とするマクロモードも健在です。
被写体にグッと寄れば、コンパクトデジタルカメラとは思えない美しいボケとシャープな描写の共存が見てとれます。
もはやおなじみとなったエフェクト機能。今回のように天気が優れない時でも、この機能を使うことで暖かみのある雰囲気に変化させることができます。
少しザラッとした仕上がりにフィルムの粒子感のようなものが感じられ、鮮鋭感が際立つ最新のデジタルカメラでも懐かしい空気感を出すことができました。
低感度フィルムで増感現像したような仕上がりの写真はハイコントラスト白黒で撮影したもの。
70年代の作品に多く見られた技法もボタン一つで撮影可能に。憧れの巨匠に一歩近づいたかのような感覚にちょっと嬉しくなりました。
日常を切り撮るスナップ撮影でも、使う人の感性をダイレクトに引き出すエフェクト機能を駆使すれば立派な作品になります。そのシチュエーションにあったエフェクトを探すのも楽しみになりそうです。
コンパクトなのに一眼クラスの表現力を手に入れた「RICOH GR」。
優れた携帯性はもちろん、ストレス無く撮れる快適さと高画質に触れ改めて人気の高さを実感しました。
Photo by MAP CAMERA Staff
RICOH GR フォトプレビュー Vol.01 は こちら