フォクトレンダーから少しユニークな発想のレンズが発売になりました。この『HELIAR 40mm F2.8 VM』は同社からラインナップされている『VM-E クローズフォーカスアダプター』への取り付けが前提に作られたレンズで、本体にはフォーカスリングが無い仕様のレンズになっています。その使い方は本来接写の目的で作られたヘリコイド付きアダプターをレンズのフォーカスリングに代用することでピントが合わせられるというもの。そしてライカMマウント系のVMマウントではありますが、『SONY α7シリーズ』+『VM-E クローズフォーカスアダプター』+『HELIAR 40mm F2.8 VM』のセットで初めて使用ができるレンズです。
トリプレットタイプに分類されるヘリアーは、テッサーに比べ1枚多い3群5枚のレンズ構成。現代の技術で作られた“ネオ・クラシック”とも呼べる本レンズはどのような写真を見せてくれるのか、早速を試写してきました。
1枚目の蘭の写真は絞り開放での撮影。ジワリと少し滲んだようなボケ味はクラシックレンズを思わせるような個性があります。
2枚目はF5.6での撮影しました。シャープでヌケの良い描写は写真に透明感を感じさせてくれます。
青色の表現が印象的なレンズです。日差しが強く元画像は黒が潰れて見えるくらいだったのですが、現像で少しシャドウを持ち上げるとしっかりと影の中も解像していました。
ハイコントラスの特性を生かしモノクローム現像してみました。今の季節の斜光も相まってシャドウ部の黒を力強く表現することができます。 撮影者の好みかもしれませんが40mmという画角は35mmより少し狭くて写真の中の要点を絞り込みやすく、スナップ撮影に適した画角に感じます。
絞り開放からピント面はシャープで立体感のある描写力。現代の光学技術の高さを感じる反面、個性的なボケ味と独特の発色性を併せ持つレンズです。
スクリューマウントのライカレンズに代表される沈胴クラシックレンズの多くは収納時に少し“あそび”があってカタカタと動いたり、引き出す時に抵抗もなくスッと鏡筒を引き上げる事ができます。しかし本レンズはその“あそび”が全く感じられないしっかりとした作り。例えるなら少し滑りの良いワインのコルク栓と言ったらいいでしょうか、「このクリアランスはいったい何ミクロンなんだ!?」と思わせる滑らかな手応えがあります。刻印のMede in Japanが意味する日本の工作技術の高さを感じました。
沈胴させるとこのように大変コンパクト。持ち運び時にレンズが邪魔に感じる事はありません。ただしこのままではピントが合わないので、撮影時に手で鏡筒を引き上げる必要があります。
レンズを引き上げ、撮影できる様態です。アクセサリーとしてニッケル仕上げのストレート型フード、ブラックのドーム型フードの2種類が付属し、使用目的や気分に合わせてコーディネートする事ができます。
『Voigtlander HELIAR 40mm F2.8 VM』は現代の技術で作られたレンズですが、描写の中にクラシックレンズの味を残した一本です。スタイリングや操作感に関しても往年の銘レンズを思わせる淡いゴールドの輝きをしたニッケルメッキ使用にクリック感のない絞りリング、自分の手で引き上げる沈胴機構など、まるでクラシックレンズを使用しているような感覚にさせてくれます。レンズを操作し撮影する楽しみを味わい、確かな描写で作品を作る事のできる。昔と今の良いところを同時に味わう事のできる魅力あるレンズでした。
Photo by MAP CAMERA Staff