「ディストーション・ゼロ」
『SIGMA dp0 Quattro』に搭載される14mmというレンズ(35mm判換算21mm)は超広角ながらディストーション(歪曲収差)は実測にして0.5%という「歪み0」を実現させました。dp1より広角と言う意味での“ゼロ”と、ディストーションが“ゼロ”という両方の意味が込められたシリーズ最新作 dp0 Quattro。その驚異的なレンズ性能はどのような世界を写し出すのか、早速撮影に行ってきました。
まだ陽が昇る前の時間帯、フェンスに固定しながらの撮影。水面の反射や遠い山々までボヤける事もなく解像しています。
撮影画像をPCで確認してみると、黒く潰れて見えるシャドウ部の中に豊富なデータ量が集積されており、シグマレンズとQuattroセンサーの凄みを感じた一枚です。
明暗差の激しいポイントでの撮影。
Quattroシリーズは逆光時に緑の色被りがあります。dp0 Quattroでも全く出ない訳ではありませんが、その逆光耐性もかなり強くなった印象があります。ハイライトとシャドウ部の耐性がどちらが上かといえばシャドウ部に軍配が上がります。ややアンダーに撮る事をオススメしたいですね。
画面周辺、歪みを一切感じさせない木々。線がありのまま線として写るという事。この凄みは広角を愛する方にとって大きな意味を持つのではないでしょうか。今回のカラーモードはフォレストグリーン。新緑をイメージしたカラーモードで撮影をしました。
室内、光量の少ない環境での撮影。
ISOを800まで上げてなんとか手持ちでシャッターを切れるように調整しました。Quattroのボディスタイルは単なるデザイン性だけではなく、Merrillと比べても、ホールド性はかなり改善されています。
Foveonセンサーは白トビにシビアではありますが、今回撮影したハイライト部のステンドグラスはしっかりと写し出されていました。 モノクロームでの表現も美しいですね。一画素で一つの色を再現できるので、解像力だけではない被写体の質量や色の深みまで表現してくれます。
中心部の解像度はもちろん、まるで浮かび上がってくるかのような立体感と花弁や葉の質感描写も見事ですね。本機の画作りの傾向ですが、Merrill世代に比べると被写体の色再現が忠実になった感じがします。今回撮影した環境が光量の少ない薄曇りだった為、ややこってりとした色合いに写りました。
広角21mm(35mm判換算)。最短撮影距離18mm。テーブルフォトがこんなにピッタリとはまるとは思いませんでした。旅先の食べ物の記録にどうぞ、なんて言いたくなるくらい気軽に撮ることが出来ます。とはいえ立ち上がって撮ってはいるのですが。
いままでのDP/Merrillシリーズをお使いになった方なら驚くと思うのですが、この写真は色・WBの補正を一切しておりません。dpシリーズでこんな写真が撮れるなんて、個人的には面白くて仕方がなく、一枚載せさせていただきました。
歪みはない。そう信じることが出来るからこそ、縦で撮ろうと思える被写体。この写真はぜひ拡大で木目を確認していただきたい一枚です。レンズの性能、FOVEONセンサーの性能、その凄さを垣間見れるかと思います。とはいえシャッタースピードを改めて撮ってみたかった一枚ですね。
個人的に今回撮っていて一番衝撃を受けたのは実はこの一枚かもしれません。
綺麗に清掃されているとはいえガラス越しの水槽の中。どの部分を挙げてみても、その写りの良さに思わず唸ってしまいます。dp0 Quattroは人が作りこんだ幻想的な海の世界を想像以上に写し出してくれました。
アスペクト比を16:9に変更。
換算21mmという画角と16:9のアスペクト比は元々のワイド感を更に強調することができるので相性がとても良いと思います。
一枚目の写真から少し時間が経った頃、朝焼けに空がピンク色に染まり始めた時間帯。
超広角だから出来た、大胆な空の取り込み。朝焼けに染まっていく広大で美しい風景の心象を見事に写しきってくれました。
カラーモードはサンセットレッド。本来は夕焼けの赤を強調するためのカラーモードですが、朝焼けの際にも有効です。
建造物に近づけるだけ近づき、水平を取りながら撮影。
「ゼロ・ディストーション」に挑戦するかのごとく取り憑かれたように水平、均一な被写体を探しては撮ってきましたが、モニターで確認をしてみても、どこまでも歪むことはなく美しい線を描き切っていました。ここまで接近して撮ってもこのレンズの脆さは見つかりませんでした。
最後の一枚もアスペクト比16:9。カラーモードはシネマ。
彩度をやや下げシャドウを持ち上げシネマ風な写真になります。中央に奥行きを配置して撮る、ただそれだけで画になってしまうカメラです。
いかがでしたでしょうか。
SIGMA dp0 Quattroは、21mmという超広角への認識をガラリと 変えてしまうほどの性能とインパクトを持ったカメラでした。
見た目から話をさせてもらえば、今までのdpシリーズとは違うその大きなレンズに誰もが驚いてしまうかもしれません。しかし実際に使用してみるとそのレンズ部分に手を添える事でしっかりとカメラをホールドする事ができ、低速シャッターでも安定して撮影する事ができました。少し気になったのがレンズの自重でカメラが“お辞儀”をしてしまう事。そのためフードは遮光用だけでなく、ちょっとした保護目的にも付ける事をおススメいたします。
そしてフードですがこの撮影期間中、外れて落ちるということはありませんでしたが、ポジションがズレることがありました。そのほんの少しのフードのズレが写真に写りこんでしまい、後々気づくという失敗が何度もありましたから大切な撮影の前には確認をしたいですね。
「ディストーション・ゼロ」
その名に違わぬ、今までのどの広角レンズをも超越したSIGMA dp0 Quattro。ぜひこのカメラの感動を体感してみてください。いっそ知らなければよかった、と思ってしまうほどの衝撃があなたを待っているはずです。
Photo by MAP CAMERA Staff