フィルムの『GR1』からデジタルの『GRD』へ、そしてAPS-Cサイズのセンサーを搭載した『GR』へ。今回のKasyapaはモデルチェンジを果たした『RICOH GR II』のご紹介です。フィルム機時代から『一眼レフに引けを取らない画質』で多くの写真家も愛用してきたGRシリーズ。誕生から変わる事の無い画質本位のコンセプトは『GR II』にも引き継がれています。レンズにはディストーションや色収差を極限に近いレベルまで除去し、絞り開放からシャープな写りを実現したGRレンズを搭載。イメージセンサーは1620万画素のAPS-CサイズCMOSセンサーを内蔵、先代より高感度性能が大幅に向上しています。完成されていると言っていい操作系はそのままに、『GR II』ではWi-FIを内蔵する事で専用アプリを使った遠隔操作やスマートフォンへ画像の送信ができようになりました。
色表現の方向性も今までとは違うと言われる『GR II』。はたしてその描写力はいかがなものなのか、ストリートスナップの試写へ行ってきました。
筆者は先代のGRを所有しているのですが、ドライで寒色寄りだった先代に比べ『GR II』の画作りは発色が濃く鮮やかになった印象を受けます。どこかで「ペンタックス機のような色表現になった」と聞いていたので、なるほどと納得してしまいました。個人的な感想ではありますが、この味付け方はとても感じのいい色ですね。鮮やかながらベッタリと色を塗ったような感じではなく、微妙な色の濃淡も上手に表現しているで被写体の立体感が伝わってくる画作りです。
光のコントラストを奇麗に『GR II』は捉えました。奥の壁にピントを合わせたのですが解像力が非常に高い描写ですね。ローパスレス+GRレンズが生み出すこのキレ味は流石です。
GRシリーズに興味はあっても28mm単焦点(35mm判換算)がネックでちょっと悩んでしまうという方が居ると思います。何を隠そう私がその一人でした。広角に苦手意識があったのですが、GRを持つようになってから感覚的に写真が撮れるようになりました。慣れてしまえば28mmという画角はイメージがしやすいのでシャッターを切るまで迷わないんですよね。あ!っと思った次の瞬間にサッと取り出してシャッターを切っているみたいな。そういう事ができるカメラなんです。車やバイクで「人馬一体」など表現される機種がありますが、GRもまさしくそうだなと感じています。
被写体の雰囲気をより魅力的なものに変えてくれる『GR II』のエフェクトモードは作品撮りに十分使える完成度の高さです。この写真では『ハイコントラスト白黒』を選択。撮影したストリートスナップのイメージにぴったりの演出をしてくれました。他にも本機種から「HDR調」「明瞭コントロール」「光沢コントロール」「鮮やか」「人物」、そしてペンタックス独自のカラーモードだった「雅(MIYABI)」も追加されました。
スナップカメラと言ったらGR。カメラ好きならどこかで聞いたことのある台詞だと思います。そこには写真家・森山大道氏が使用していた機材イメージもあると思いますが、そもそもGRがスナップ撮影に特化した作りになっているというところが上げられるでしょう。
レンズ交換式カメラのような凹凸のないコンパクトなボディはそのままポケットに納める事ができる携帯性の良さ。操作系もよく作られていて各ボタンでダイレクトに露出や設定を変える事ができるのはもちろん、使ってみるとファンクションボタンの配置や機能が非常に分かりやすいんです。様々なメーカーの機材を仕事で使用していますが、一眼レフを含め、操作系はトップクラスの使いやすさだと感じています。そして「フルプレス・スナップ」という機能も忘れてはなりません。皆さんは一瞬のシャッターチャンスをAF合焦待ちで逃した事はありませんか?「フルプレス・スナップ」はあらかじめピントの距離を指定し、シャッターボタンを押し込むとAF動作無しに指定した距離で写真が撮れる機能です。
携帯性・操作性・機能性の全てが速写という事に比重を置いて作られた本機は、まさに最高のスナップシューターと呼べるカメラです。
開発が進む渋谷駅周辺。夕暮れの光に美しく浮かび上がるクレーンのシルエットを撮影しました。写真の中にある細い線などを緻密に描写しているのが分かります。『GR II』はカメラとしての基本性能がとても高い一台です。
西新宿のシンボルである東京都庁。拡大写真を非縮小サイズで掲載してありますので、ぜひ『GR II』の高い描写性能をご覧になってください。
薄暗いシーンでの撮影だったのでISO400なりのザラつきは見えますが、これはボディサイズ以上の解像力と言っていいでしょう。素晴らしい描写力です。
続いては高感度撮影を試してみました。先代のGRはISO800くらいから高感度ノイズが分かる仕様だったのですが、『GR II』で撮影してみて驚きました。このカット、ISO3200での写真ですよ。この高感度でこれほどディティールがしっかりした写真を撮ることができるんです。
さらに暗い状況での撮影。拡大すればノイズ感は分かりますが、画がベッタリと潰れる事無くタイルの細い線まで写し出しているのが分かります。
最後はISO6400での撮影。先代では常用に厳しい感度だったのですが、『GR II』はもの凄く高感度に強いカメラになりましたね。これは十分常用と呼べる写りでしょう。この高感度性能を使って夜間のスナップ撮影など楽しいかもしれません。
『GR II』はWi-Fiを内蔵したという事でカメラ本体上部が盛り上がったデザインに変わりました。正直、最初ボディの写真を見たときは「むむむ・・・」とちょっと悩ましい印象を受けたのですが、実機を手に取ると全く気にならない変化ですね。むしろ先代はホットシューの部分だけ少し出っ張っていたので、そこがフラットになった分スッキリした印象を受けます。進化してもGRのスマートなサイズは変わりありません。
先代でデザインも機能も完成されたと思っていたのですが、『GR II』を実際に使用してみてその進化に驚きました。今までの速写性と優れた基本性能はそのままに、美しい色表現と高感度性能、Wi-Fiを内蔵した事によりさらに操作性も向上しています。
そして何より、フィルム機の頃から変わらないデザインコンセプトと画質本意のこだわりを最新の『GR II』になっても貫いているのがカッコいいです。前にポルシェのデザインはモデルチェンジをしても一目で「ポルシェだ」と分かるデザインする事で、いままで積み重ねてきた歴史とブランドイメージを引き継いでいると聞いたことがあります。私はこの『GR II』にも同じ事が言えるのではと思いました。
是非GRの持つこだわりをその手で体感してみてください。コンパクトながら細部に本格派を感じる『GR II』は所有する悦びと、新しい写真表現をあなたに与えてくれる一台になってくれるはずです。
Photo by MAP CAMERA Staff