335:『Carl Zeiss Milvus 50mm F1.4』
2016年03月02日
空と雲とモノレール。本レンズとCanonボディとの組み合わせは印象的な発色を見せてくれますね。爽やかな空の色の一枚です。
続いてはモノクロームでのカット。行き交う人々のシルエットが綺麗に出るように露出は外の光に合わせています。しかしながら一見すると潰れたように見えるシャドウ部も、RAW現像で持ち上げると驚くほど写し込んでいました。これはセンサー性能だけではなく、本レンズの性能も非常に優れているということを意味しています。
河口の浅瀬に波が左右から重なるように打ち寄せていました。撮影した日はとても天気が良く、太陽の光が水面をキラキラと照らしています。肉眼だと目を細めてしまうほど眩しかったのですが、さすがはCarlZeissのT*コーティング、フレアやゴーストが発生せずクリアに写し出しているのがわかります。
人のいない堤防をしばらく歩くと行き止まりになっていました。その時の複雑に絡んだ金網と有刺鉄線が印象的だったので思わずパシャリ。F1.4の絞り開放から申し分の無い写り味です。これはあくまで印象なのですが、本レンズの立体感を伴う描写は被写体の持つイメージを強調してくれるように感じます。そのため人物スナップやドキュメンタリー写真などでは被写体の持つ魅力をより引き立ててくれることでしょう。
夕日に照らされて美しく浮かび上がるシルエット。拡大してみるとガラスに貼られた縞模様の遮光フィルムの細部まで写し出しているのがわかります。
CarlZeissからは究極のレンズ性能を追求したOtusシリーズがありますが、今回『Milvus 50mm F1.4』を使用してみて「Otusの弟分」という印象を受けました。描写のクセは今までの50mmレンズであるプラナーとは全く違う印象で、開放からフラットで抜けが良く、非常に解像力の高い画を見せてくれます。また、操作感も大変良く出来ていて、ラバー製のピントリングは本レンズの浅い被写界深度をミリ単位で的確に合わせられる絶妙なトルク感。レンズを握った感じもいいですね。プラナーに比べとても大きくなったように思ったのですが、実際に使用してみるとフルサイズ機とのボディバランスが良く感じられます。
続いてはボディをニコンへ変えてでの撮影です。
D810の3635万画素とも好相性の高い解像力を披露してくれました。
透明感高いクリアな描写は、半逆光の難しいシチュエーションでも細部まで捉えてくれます。塔の右脇から垂れ下がるロープの目まで見えたのにはさすがに驚きました。
水分を感じる苔の土台、多肉植物のふっくらとした質感。強い日差しの下でも安定したコントラストで、被写体の質感をしっかり捉えています。 深い影に覆われた葉っぱの模様もしっかり確認でき、明所から鞍部までどんな光線環境下でも常に安定した画が得られるというのが分かります。
大口径F1.4と最短45cmのコンビネーションでは大きなボケを楽しむことができました。薄いピント面からしっとりと広がるボケ味はまさに極上。ボケの中にも品の良さを感じることができます。
透明感高い描写は開放でもシャープな描写を披露してくれます。色乗りも派手すぎず被写体の質感はもちろん奥深さまでしっとりと捉えてくれます。
『Milvus 50mm F1.4』はCarlZeissの新時代を予感させる描写とデザインを兼ね備えたレンズでした。プラナーとの決別とまでは言いませんが、レンズ光学技術の進歩とデジタル技術の進化に合わせ、最良の選択がガウスタイプではなくレトロフォーカスタイプのディスタゴンということに行き着いたのでしょう。高画素フルサイズ機の性能を余すことなく引き出すことのできるレンズです。マニュアルフォーカスの50mmとしては少々大柄ではありますが、それは本レンズが高性能だという証明でもあります。描写力に妥協をしないフォトグラファーへ是非この『Milvus 50mm F1.4』で作品を撮っていただきたいと思える一本でした。
Photo by MAP CAMERA Staff