395:『Carl Zeiss Loxia 85mm F2.4』
2016年12月15日
充実著しいSONY Eマウント用フルサイズ対応レンズに、また新たな商品が加わりました。『CarlZeiss Loxia 85mm F2.4』は人気のLoxiaシリーズの4本目。これまでの3本がとても使いやすく高画質だったため、否応でもその期待は高まります。早速撮影に出かけてきました。
解放F値がF2.4に抑えられたことで全体的にスリムに収まったLoxiaレンズは、カバンの収まりもよく携帯性の良さが引き立ちます。焦点距離85mmと聞くとポートレートの印象が強くなりますが、本レンズは気軽に持ち出せるということもあり、被写体を選ばず純粋に85mmという焦点距離を楽しもうといった気分にさせてくれます。
さすがZeissレンズと言った印象のヌケの良いクリアーな描写です。目にも鮮やかな赤い色を綺麗に再現してくれました。 最短撮影距離は80cm。中望遠効果で被写体をグッと引き寄せピント面の薄い大きなボケ味が楽しめます。千両の実の朱色がとても鮮やかです。近接撮影すると本レンズの透明感と色乗りの良さがさらに伝わります。
近頃はオートフォーカスレンズばかり使用していたので、ピント合わせ操作がとても新鮮に感じます。視力の低下と供にピント合わせに手間どることが増えてきた筆者ですが、電子接点を有しているLoxiaレンズは、ピント操作時にファインダー内が瞬時に拡大するのでピントも合わせやすくスムーズな撮影が楽しめました。
暗い場所で少しずつ元気が無くなってきた花の質感をしっかり捉えてくれます。周囲の寒さも伝わる高い解像力からも本レンズの万能ぶりがよく分かります。
絞りリングのクリック感が心地よいマニュアルレンズですが、動画撮影に配慮した「デクリック機構」の搭載で、絞り操作時のクリック音を消すこともできます。
映像等に使われるような構図を意識しながらで、いつもの東京駅を切り撮ってみました。普段85mmで狙うことがないだけに少し新鮮に感じます。フィルター径もシリーズで52mm径に統一されています。動画をメインにされている方にとっては、フィルターの使い回しができるのもうれしいことでしょう。
日没を迎えてもカメラの優れた性能のおかげで撮影を続けることができます。カメラの優秀な手振れ補正機能もありますが、細めの鏡筒はとても握りやすくホールド感も良好で心強い限りです。
ちょうど街はクリスマス一色。クリスマスツリーを少し絞って撮ると、配置された電球から光条が生じよりキラキラ感が増した写真が楽しめます。 シャープな光条はもちろん、背景の電飾による光源ボケが画面隅まで綺麗な円形を保っており、画面全体で均一のとれた高画質を確認することができました。
続いてはボディを『α7RII』へ変更し、ポートレート撮影。
久々に再会した友人は随分と大人びた雰囲気になっていてビックリしました。その時の印象を写すべく、少しクールなイメージで撮影に挑戦です。
F2.4ということもあり、開放からフォーカス部の解像力にキレがあり、ボケ味も深すぎず非常にバランスのいい描写傾向です。
光と影を意識して撮影した一枚。開放からF0.4分絞ったF2.8なのですが、より被写体の先鋭感が増したように感じますね。
Zeissレンズらしいコントラストの高さと発色の良さがありますが、色調の深い表現力も持ち合わせています。そのことは写真をモノクロームにした時にも感じることで、好みのグレートーンに調整し写真を作り込むことができます。
西日が横から当たる状況だったのですが、絞り開放から諸収差がよく抑えられていますね。髪の細い線も見事に写し出しています。
中望遠のマニュアルフォーカスレンズということもあり、動く被写体を撮影するには少々慣れが必要かもしれません。しかしファインダーから見えるピントの山はとても掴みやすく、F1.4のようにボケすぎないので一度クセがわかれば『マニュアルフォーカスの煩わしさ』のような事は感じないはずです。
この写真は絞りウンヌンということではなく、頭にあった完成イメージを表現するためにシャッタースピードを手持ちで撮れるギリギリまで遅くして撮影しました。「あ〜、こういう時はNDフィルターだよね」と考えながらも、イメージが思いついてしまったので仕方ありません。笑
普段は写真を撮る方が好きという友人ですが、「いろいろ街中で撮られて更に度胸がついた」と笑っていました。
この新レンズを撮るとなった時、正直多少の不安を感じていました。それは同じツァイスEマウントレンズに「Batis 85mm F1.8」の存在があるからです。Batisはオートフォーカス搭載で開放F1.8の大口径。しかもLoxiaより119gも軽く、価格も…。スペックだけ見比べたら明らかに分が悪いのです。 されど撮影を進めていくうちにその不安はなくなりました。その最大の理由は撮影が楽しかったからです。マニュアルレンズならではの操作感は、悪戦苦闘しながらカメラを勉強していた頃を思い出させてくれます。もちろんBatisでもマニュアル操作は可能ですが、適度なトルクの重さによる操作感は専用レンズにかないません。描写も歴史あるSonnarレンズだけあって画面の隅々まで高画質を披露してくれました。
クラシックとクリエイティブを兼ね備えたレンズはまさにこだわり派向けの1本です。ぜひお試しください。
Photo by MAP CAMERA Staff
|