近所の庭先に綺麗な梅の花が咲きました。防寒対策に悩むほど寒い日々が続いていますが、少しずつ春の足音が聞こえてきたようです。久しぶりに防湿庫の奥に眠るマイクロレンズを手に春の訪れを探しに散策することにしました。
今回使用する機材は、高精細な画像が楽しめる「Nikon D810」と味わいある描写が魅力の「Nikon AF-S VR Micro 105mm F2.8G ED」です。
Kasyapaを見返してみると、未だ本レンズのレポートが無かったことに気付いてしまいました。発売から既に10年以上経過したレンズですが、遅ればせながら紹介させていただきます。
最初のカットはその梅の花から。比較的長く咲くイメージの梅の花ですが、空気の乾燥した今の時期は咲いてもすぐに萎れてしまい、写真映えする花はあまり多くありません。ましてやマイクロレンズによる近接撮影の被写体にするならなおさらです。そんな貴重な花の瑞々しさと、柔らかな花びらの質感を最短31.4cmの近接で見事に捉えてくれました。大きく柔らかなボケ味は、暖かな春を想像させる絶妙なスパイスです。
改めて本レンズのスペックを見てみると、発売からの経過年数が信じられないハイスペックぶりに驚きます。まずは高性能ニッコールレンズの代名詞「ナノクリスタルコート」。ゴーストやフレアを軽減するコーティングは、被写体を透明感高く捉え、光のグラデーションを綺麗に再現してくれます。
ガラスのショーウィンドウ越しに飾られたお神輿も細部まで綺麗に捉えます。写り込みをさけるためレンズをショーウィンドウに密着させての撮影ですが、近接でも狙った場所に素早くピントが合う快適さも見逃せません。
中望遠レンズとしても魅力的な105mmは、高い枝に見つけたメジロも素早く捉えることができました。青空のヌケもよく、早春の気持ち良さを存分に伝えてくれます。
踏切を渡る際、線路の方向を向いてシャッター切ったら架線柱に南京錠みたいなものを発見。遠目のものを少しだけ寄せてくれる中望遠レンズは、普段何気なく見ている景色の中からでも思わず「何で?」と言いたくなる新しいものを見つけてくれます。
南向きの斜面では、早くも満開の河津桜を見ることができました。逆光ぎみのシチュエーション。露出をプラスに補正することで生じる、白トビでの質感の消失を防ぐべく、絞りをF5.6まで絞りました。開放時の線の細さはそのままに狙った部分の繊細さとシャープネスが向上し、春の暖かさと薄い花びらの質感をバランスよく再現してくれました。
さらに散策を続けると今度はセキレイを発見。草木の葉が少なく隠れる場所の減る今の時期は、鳥に出会う機会も多くなります。可愛く尾を振りながら素早く枯れ草を飛び移る姿をクリアに捉えることができました。寄っても良し。引いても良し。万能で欲張りなレンズです。
D810の高精細機能を存分に引き出す高い解像力で、少し離れた場所からでもグラスの透明感や紙ナプキンの凹凸がリアルに確認できます。カメラよりもだいぶ前に製造されたレンズですが、3600万画素の高精細にも対応した頼もしいレンズです。
空気の澄んだ気持ちの良さに誘われ、いつもの屋上に立ち寄ると夕焼け越しの富士山とスカイツリーを望むことができました。日没ギリギリだったため、シャッタースピードはやや低速の1/20秒ですが、信頼の手ブレ補正機能がしっかりサポートしてくれます。
周囲だけをガラスで囲っただけの屋上は風が冷たく、撮影後に暖をとるべく近くのに食堂に立ち寄りました。店内のレトロな雰囲気の電球照明は空調以上に温かみを感じさせてくれます。そんな温もりをも捉えてくれました。肉眼では見えなかった電気傘の銘板やネジ山などを見ていると「本当によく写る!」と改めて感じてしまいます。
新しいものが発売されると次々と欲しくなり、その度に買い替えてきた筆者がずっと手放さずに持っている1本。その間にボディは何台過ぎていったかは忘れてしまいましたが、いずれの組み合わせでも抜群の安定感と高画質で撮影を楽しめたことを覚えています。 お店でも春になると人気が出るマクロ(マイクロ)レンズですが、春だけではもったいない高性能ぶりが再確認できました。これからの季節に、そしてそれ以降も楽しんでいただきたい1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff
|
|