ペンタックスが培ってきた技術を総結集し、小さなボディにこれでもかと詰め込んだ末に誕生した「PENTAX KP」から約4年。
奇しくも世はミラーレス全盛期に差し掛かろうとするこの令和の春に、同社が満を持して送り出す最高峰のAPS-C一眼レフ。
今回は『PENTAX K-3 Mark III』をご紹介します。細かく打ち出される情報に、今か今かと胸躍らせていた方も多いはず。
APS-Cフラッグシップモデルに該当する本機は、フルサイズ一眼レフ機に匹敵する「約1.05倍」の視野角を持つ高倍率ファインダーや、有効約2573万画素の裏面照射型CMOSセンサーの搭載、最高ISO感度160万など先代にあたる「PENTAX K-3 II」から確実な進化を果たしながら、サイズ感は殆ど変わりません。「どんな手の大きさの方でも使いやすい形状」を目指して、人間工学に基づき設計されたグリップやダイヤルは、ファインダーを覗きながらも軽快に操作を行うことが出来、撮影への高い没入感を与えます。
短い期間ではありますが、先んじて体験する機会に恵まれましたので撮影を行わせて頂きました。
撮影の度に「こんな便利な使い方が出来るのか!」という発見があり、全ての機能を味わい尽くすには至りませんでしたが、それほどに奥深い『PENTAX K-3 Mark III』を繰る幸せの一端を、写真から皆様にお伝えできればうれしく思います。それでは、ご覧ください。
まずは、水族館へやってきました。柱状の水槽の中で踊るクラゲ達と、細やかに色を変えるユニークな照明が見せる光の演出。煌びやかな反面、光量が忙しく変わるため撮影は難しい印象があります。ISO感度を1600まで上げてシャッタースピードを最低限稼げるようにしています。大きな画面で見ると若干高感度ノイズが散見されますが、PCやスマートフォンの画面で見る分には気になりません。加えて1/5という低速でも手ブレが起きていないのは、強力な補正のおかげでしょう。
鱗の湿潤な輝き、デコボコとした模様の細やかなディティールがハッキリ見て取れます。苦手な方には大変申し訳ない一枚ですが、凛々しい顔立ちがとても気に入ってしまいささやかなカメラ目線を頂いて参りました。光の当たっている部分とシャドウの描き分けが、被写体をより強調してくれています。
岩の上で、微動だにせず虚空を見つめている一匹のカサゴ。「休日家にいる時の自分に似ているな」などと余計なことを考えつつ、マニュアルフォーカスに切り替えてじっくり目にピントを合わせました。「イズカサゴ」という種類だそうで、キョロリとした瞳が可愛らしいのです。
こちらのカットは、『PENTAX K-3 Mark III』の色再現の美しさを見て頂くのにぴったりかと思います。観覧車のゴンドラひとつひとつのカラーリング。彩度がとてもナチュラルで、背景の空に埋もれることなく各色がアピールしています。せっかくなので、こちらはJPEG撮って出しの画像をご覧いただきます。
ペンタックスはボディ、レンズも含めAPS-Cの長所を享受出来る機材が揃っています。コンパクトで、首から下げたままの移動も全く苦にならない。しかし、人気の「★レンズ」を筆頭に光学性能の優れたレンズ群はその軽量さからは想像できない描写力を持っています。樹木の生命力を感じる蔦のうねり等を、高精細に写し撮ることが出来ました。フィールドカメラとして既に高い評価を受けていた前機種から、さらにパワーアップしたことを感じます。
AF性能が強化され、撮影者の反射神経に確実に追従してくれます。風が強かったこの日、木から木へ落ち着きなく飛び交う雀をなんとか収めたいと粘っていました。一瞬訪れた凪のタイミング、ここぞとばかりに切ったシャッターは被写体を完全に捉えてくれました。毛のふわふわとした雰囲気も感じられる誠実な描写です。
桜が楽しめる季節がやってきました。日が傾いてきたころ、朱に染まる世界の中でもその色に負けない存在感に惹かれます。カメラや、スマートフォンを片手に眺めている方が周りにいました。この季節にしか見れないことが勿体ないと感じるほど堂々とした佇まいに、沢山の方が思いを馳せていたようです。
縦横無尽、広がる世界
バッテリーグリップ『D-BG8』装着画像
ロゴ刻印の施されたホットシューカバー『O-HC177』を装着。存在感のある出で立ちでプレミアム感があります。
プライベートではミラーレス一眼を使う事が増えました。久しぶりの一眼レフでの撮影だったのですが、それが『PENTAX K-3 Mark III』で良かったと心から思いました。改めてペンタプリズムファインダーの視認性の良さに驚かされると共に、シャッターを切った時にカメラから伝わってくる小気味良い感触が撮る快感を際限なく与えてくれます。APS-C機ゆえの小回りの利くシステムで、何本ものレンズを交換しながら歩き回る撮影も疲労を感じませんでした。そして何より、センサーサイズの不利をものともしない画質とペンタックスらしい飾らない色再現・質感描写に感服しました。
APS-Cフラッグシップモデルとしてまさに「最強」を謳うカメラの誕生。是非、皆様にお手に取って頂きたい一台です。
Photo by MAP CAMERA Staff