『SIGMA fp』が発表された当時、DPシリーズを愛用していた筆者はそのボディの小ささに衝撃と共に「さすがシグマ!」と大いに喜んだものです。Foveonという個性がなくてもシグマの画作りにブレはなく、新しいマウントの新しいカメラとしての完成度に惚れ直してしまいました。今回発表されたカメラ『SIGMA fp L』は画素数を約6,100万画素に向上させた裏面照射型ベイヤーセンサーを採用。偽色の発生を抑えるためローパスフィルターも搭載されており、より緻密な描写が実現できるようになりました。「Leap(飛躍)」「Liberty(自由)」という意味を「L」に込め、「大きなキャンパスでしか描けないものがある」と称するように、より『fp』というカメラの可能性を拡げるための選択肢を担う存在のようです。もちろん違いは画素数だけではなく、「像面位相差AF」への対応、電源オン時でもUSB給電が可能となり長時間の撮影もできるように。背面のダイヤルの回転をやや重めに調整したり、MIC端子ラバーの蓋が開いてしまわないように改善されました。筆者が何より嬉しかったのは意図しないシーンで押してしまっていたMODEボタンのせり出し量を減らしてくれたことです。他にも撮影設定をQRコードとして保存することができ、SNSなどで共有や好きな写真家の設定を自分のカメラで再現することが可能になる機能が追加されました。『SIGMA fp』で得たユーザーの声や遊び心が詰まった『SIGMA fp L』は新規ユーザーだけでなく『fp』ユーザーにとっても魅力的な一台です。
今回はカラーモードに爽やかなブルーと明るく透明感の青が印象的な「パウダーブルー」と1970~1980年代にポスターやジャケットで使われた表現手法「デュオトーン」が新しく追加されました。最初の2枚はさっそくその「パウダーブルー」を使い撮影。全体的にトーンが明るくなり、光を取り入れた際のハイライトの伸びが気持ちよいカラーです。コントラストと彩度を抑えることで「ネガフィルム調」が再現できるということですが、今回はカメラ内現像で「パウダーブルー」を「+2」にしたり特徴である青をより強調してみました。すでに持ち上がった状態ですがシャドウをさらに引き上げることで特性がさらに良く出るのではないでしょうか。
今回同時に発売される約368万ドットの有機EL電子ビューファインダー『SIGMA ELECTRONIC VIEWFINDER EVF-11』。『SIGMA fp』にとってファインダーは絶対に必要とは思いません。ただ、ローアングルで撮影するとき。逆光が眩しくて画面が見えない時。マニュアルフォーカスでじっくり合わせたい時。目の前の世界に集中したい時。そんな時にやはりファインダーがあって良かったと思いました。また今回は『SIGMA Art 24-70mm F2.8 DG DN』を使用しましたが、ファインダーを覗きつつ、しっかりと握ることで手振れの抑制にも繋がります。ファインダーの自動切換などは無いため、最初のうちはやや操作に不自由さを感じるかもしれませんが、1日経つころには慣れてくると思います。ファインダーを覗きながら撮影する楽しさを『fp』でもぜひ味わっていただきたいです。
カラーモード「フォレストグリーン」で陽光に照らされ活き活きとしていた葉っぱを撮影。葉の毛までぼやけずに解像出来ていることに少し感動しました。「SIGMA fp」の解像に不満があるわけではないのですが、画素の密度というものを実感した1枚です。
このカフェは元々、銭湯だったところを改装して出来た建物で、煙突がそのまま残っていました。地下のスペースには当時の状態が保管されていたり、まだ出来たばかりのスポットらしく、古い建築が好きな筆者にとっては要チェックなスポットです。『SIGMA fp』で搭載されてから絶大な人気を博したカラーモード「ティールアンドオレンジ」でカフェでのひとときを撮影。こういったブラウン系の発色にも映えるカラーモードで今でもまったく飽きのこないカラーモードです。
曲線の造形の美しさに思わず撮影。カメラ内現像でややシャドウ部を持ち上げ仕上げたのですが、画素数自体はリサイズしているはずなのに、天井を拡大して見た時の緻密な解像感に驚きました。ぜひ一度ご覧ください。
もう一つのカラーモード「デュオトーン」。まさかカメラ内でこんな色彩を再現できるとは思ってもいませんでした。まるでアートのような今まで撮ったことのない新しい表現ができるカラーモードだと思います。
せっかくの6,100万画素なので解像感が必要な被写体を続けてご紹介いたします。場所は変わり、海沿いの町。こういう被写体を見るとシグマユーザーの血が騒ぎます。取っ手の部分にピントを合わせたのですが、とてつもない立体感を感じませんか。手振れ補正機構のない6,100万画素を手持ちで撮影するのにはシャッターショックのない電子シャッターは最適な答えではないかと思います。
ちょうど「P」の文字の部分の解像に注目していただきたいのですが、さすがの解像力の高さです。潮風に吹かれながら役目を果たし続ける看板のヒビ割れや劣化などが緻密に描写されています。錆や汚れ。繊細な質感描写が必要だったり見たいものは「Foveon物件」なんて呼ばれたりしていますが、この看板もそのジャンルの仲間入りできるでしょうか。ちなみにカラーモードは「FOVクラシックブルー」同じブルーでも、しっかりとしたコントラストと発色です。
さてこの写真のカラーモードはなんだと思いますか。答えは今回新たに搭載された「パウダーブルー」です。ホワイトバランスを「日陰」や「曇り」などの暖色系に寄せることで青みがかった色にかぶせています。(そのため、隅のほうはブルーの色が残っています)なぜそのようなことをしたのかと言うと「パウダーブルー」はハイライトが柔らかく拡がっていく特性があるように感じたからです。結果、中央に沈む太陽の輪郭がボケて狙い通りの仕上がりにすることが出来ました。「パウダー」という言葉の通り、光に対して粉がかかったような仕上がりになるのかなと感じました。
マルチアスペクトの新しい可能性
『SIGMA fp』から搭載されているマルチアスペクトですが、ベースが約2,460万画素ということもあり他のマルチアスペクトを利用するともう少し解像度が欲しいという声があったようです。その点『SIGMA fp L』は「21:9」でも、約3,800万画素の解像度になりました。このため大きめのプリントにも対応出来るようになったり、マルチアスペクトでも満足のいく撮影が可能となりました。最後は筆者も大好きな「21:9」の写真を数枚続けてご紹介させていただきます。
解像の密度。
何よりも違いを感じたのは解像感の「密度」です。『SIGMA fp』に比べて、よりリアリティのある質感を感じる事ができました。今までも『SIGMA fp』を使っていて不満を感じたことはありませんでしたが、マルチアスペクトを変えたときの解像度などに恩恵を感じる事ができます。ボディサイズは小さいままで高画素である『SIGMA fp L』なら風景写真や旅先でのメインカメラとなり得るでしょう。『SIGMA fp』の新しい可能性。ぜひ一度使ってみていただきたいです。
Photo by MAP CAMERA Staff