Panasonic GHシリーズ最新機『LUMIX GH7』がこの度発表されました。新開発の2520万画素の裏面照射型センサーにライカとパナソニックが共同開発した画像エンジン「L2 Technology」を搭載。より使いやすくなった最大13+ストップの「ダイナミックレンジブースト」、像面位相差式AF搭載、「Apple ProRes RAW」内部収録、撮影時の音声録音のレベル調整が不要な32bit フロート録音、ARRI社のシネマカメラとのカラーマッチングが可能なARRI LogC3に対応(※有償アップグレード)など、とにかく動画性能の進化がとてつもないことになっています。しかも「GH6」と同じボディ形状となっており、リグやゲージをそのまま利用できるよう配慮がされており、ダブルカードスロットも同じく「CFexpress Type B」と「SDメモリーカード」を採用。今回GHシリーズを初めて手に取る方はもちろんのこと、先代ユーザーにとっても、満足のいく完成度に仕上がった一台になっています。そんな優れた動画性能を持つ『LUMIX GH7』ですが、最大13+ストップの「ダイナミックレンジブースト」や約1億画素の手持ちハイレゾ撮影、自分好みの色を作りだせる「リアルタイムLUT」や追加されたフォトスタイル「LEICAモノクローム」など写真機としての『LUMIX GH7』に注目しました。
「G9 PRO II」に搭載された「LEICAモノクローム」が『LUMIX GH7』で使えるようになりました。「ハイライトが明るく、より硬調でダイナミックな印象のモノクロ表現で、深い黒と白のコントラストが特徴」ということですが、まさしくその通りに光陰を見事に描き分けてくれました。締まった黒も良いですが、ぼんやりとしたシャドウの描写も素晴らしい写りです。
最大約1億画素の超高解像な写真を生成するというハイレゾ撮影をするうえで気になることがあったので色々撮影してみました。「たとえば水面の揺らぎなど被写体に動きがある場合撮影が出来るのか?」。「どの程度まで許容されるのか?」というのを感じてみたかったのです。このカットは俯瞰で撮影していますが、体勢が安定せず2回くらい「失敗」しています。ただ失敗したときはハイレゾの画像を作成中にエラーメッセージが出るので、ダメだったかどうかがすぐに分かります。ハイレゾモードは撮影が終わると大体、5~6秒くらいハイレゾ合成のための時間がかかるのですが、失敗した場合は途中ですぐに終わります。ちょっと揺れてしまったなと思ったときはもちろん、何らかの原因があって失敗してしまったときもスムーズに次の行動に移れるのは助かります。失敗する、とは言いますがおそらくほとんどの方が想像するより、格段に使い勝手は良いです。ひとまず一回撮ってみたいと思ったら撮ってみてください。私と同じように「おお、撮れた」と思うことが多いと思います。
こちらも手持ちハイレゾで撮影しました。クリックすると原寸サイズでディテールを確認できます。F8まで絞ってのハイレゾモードの解像感は凄いの一言。ボディ内手ブレ補正(B.I.S.)の機構を活かして、センサーをシフトさせながら8回連続で自動撮影を行い、カメラ内で自動合成処理を行うハイレゾモード。今回は撮って出しJPEGですが、RAWデータでの記録も可能です。現状の環境では現像ができなかったので、いずれしっかりレタッチしたいと思います。
日差しのない状況下、カラーのフォトスタイルに最適なものが見つからなかったので「LEICAモノクローム」で撮ってみると意外としっくりきたので撮影しました。のっぺりして見栄えのしなかったカットが「LEICAモノクローム」で仕上がった、というのが正しいでしょうか。メリハリがありながらも上品なモノトーンで花の色を表現してくれました。
「GH6」からより進化したダイナミックレンジブーストを搭載。低感度でのダイナミックレンジブーストに対応し、「V-Log」でもISO500スタートになりました(GH6はISO2000スタート)。最大13+ストップのダイナミックレンジで撮影・収録するための条件はありますが、写真撮影時でもRAWデータの暗部階調が豊かになる効果が得られるということなので、いずれRAWデータを現像して検証してみたいところです。というわけでこのカットはフォトスタイル「V-Log」で撮影してみました。スタンダードが濃く見えてしまうくらいの豊かな階調です。
彫刻の細かなディテールまでしっかり描いてくれる解像感も素晴らしいのですが、個人的には色の深みや再現性が気に入りました。右側からオレンジ色の照明が当たっていますが、自然光が当たった場所との光の質の違いや強弱もしっかりと描き分けてくれています。少し薄暗くなってきたので低速のシャッタースピードで撮っていますがブレることなく撮影できました。ちなみにリサイズはしていますが、こちらも手持ちハイレゾモードで撮影しています。手軽さがすごいですね。
厚い雲に覆われてはいるものの、待っていれば太陽が出てきそうだなと思い夕暮れ時のカットはここで撮ろうと待機。その間に「リアルタイムLUT」をいじってみました。LUTは初期から入っていたsampleを使用しました。空と地面の明暗差が激しかったのでシャドウは+5に設定してハイライトもやや落とします。ホワイトバランスは太陽光です。「MY PHOTO STYLE」でLUTの重ねがけが出来るのですが、今回はシンプルに一つだけです。実際にやってみると、その場で色を見ながら設定できるこの機能、ものすごく面白い機能だと思いました。LUTを重ねがけ出来ることを考えると、表現の可能性も限りなく広がります。
「リアルタイムLUT」や「V-Log」、「LEICAモノクローム」と指定していないカットは全て「スタンダード」での撮影です。LUMIX独自のフォトスタイルにはモノクロームだけでも「LEICAモノクローム」合わせて5種もあり、カラーも「フラット」や「シネライクV2」「709ライク」など個性的なフォトスタイルが沢山あります。そのフォトスタイルを使った撮影だけでも充分に楽しむことが出来ますのでぜひ色々と楽しんでみてください。
レンズキットになっている「LEICA DG VARIO-ELMARIT 12-60mm F2.8-4.0 ASPH. POWER O.I.S.」ですが、これ一本あればほとんどのシーンは撮影できます。解像力も色ノリも良く、写真も動画も撮りたい方にとってはベストな選択肢となっています。今回手持ちハイレゾショットをビシバシと撮れたのもこのレンズがあってこそ。GHシリーズを始めてみようという方にも間違いなくおススメしたい組み合わせです。
感性を刺激する完成度
今回こちらでは写真機としての『LUMIX GH7』を見つめてみました。低感度にも対応した最大13+ストップダイナミックレンジブーストや高解像のハイレゾモード、「リアルタイムLUT」を筆頭にした豊富なフォトスタイルなどを紹介しましたが、素早く動く被写体を撮影するための高速連写は電子シャッター時「SH」で最大75コマ/秒の撮影やプリ連写も内蔵されているので、動体撮影もこなせるカメラです(ただし静止画撮影においてSH連写時、および1/15秒以上の低速のシャッタースピード時のISOとの組み合わせの場合はダイナミックレンジブーストが駆動しないということなのでお気をつけください)。今回『LUMIX GH7』を触ってみて、改めて色味や写りの良さを実感しましたし、ハイレゾ撮影や「リアルタイムLUT」を組み合わせることで写真機としての性能も十分に素晴らしいカメラでした。動画機としてこれから大いに活躍するであろう一台ですが、ぜひ写真機としての『LUMIX GH7』にも注目してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff