

シグマより発売される『 SIGMA Art 35mm F1.2 DG II L-Mount 』のフォトプレビューをご紹介いたします。
2019年に世界初のミラーレス用35mm F1.2として発売された「 SIGMA Art 35mm F1.2 DG 」の後継機で、6年で積み重ねた最新技術を惜しみなく投入。2つのフォーカス群を独立して移動させるフローティングフォーカス構成や、SLDガラスや異常分散性の高い高屈折率ガラス、4枚のガラスモールド両面非球面レンズを採用し、より高い光学性能と約30%の軽量化と約20%の全長短縮という大幅なサイズダウンを実現しました。「 SIGMA Art 35mm F1.2 DG 」は非常に好みの写りで、何度もプライベートで使ったことがあるのですが、「大きい」という印象は確かにあったので、本レンズを実際手にもった時のコンパクトさと軽さには感動してしまいました。実際にどんな写りを見せてくれるのかを高画素機である「 Panasonic LUMIX S1RII 」と併せて撮影してまいりましたのでぜひご覧ください。
まず1枚目に絞って撮影したカットをご紹介いたします。画面の中央から隅々まで、非常に均一でシャープな解像感です。そして注目したいのはハイライトの豊かな階調表現。JPEG撮って出しですが、白い屋根に反射する強い光や、空の明るい部分も、白飛びすることなく、そのディテールをしっかりと保ってくれました。


無数のクリスタルが、シャンデリアのように煌めく装飾。その一番手前側に、ピントを合わせました。ピント面は非常にシャープで、その奥のほうは玉ボケとなって溶けていきます。赤、青、黄色、紫といった虹色の複雑な輝きと色彩を見事に再現してくれました。


天井から吊るされた3つのペンダントライトに焦点を合わせてみたのですが、シャープな輪郭が、柔らかくぼけた背景から浮かび上がりました。美しい分離と立体感が空間の奥行きをより豊かに感じさせてくれます。


絞り込んで、質感の全く異なる二つの被写体を撮影しました。1つは高層ビル。空を映し出すガラスの滑らかな光沢感とや金属フレームの硬質な質感を描き出してくれました。そしてもう1つは、空に枝を広げる松の巨木。松の葉のひと束ひと束、ゴツゴツとした樹皮の質感を忠実に描いてくれました。

窓際にいたリスザルにレンズを向けたときに、凄い勢いでガラスに張り付いてきたときに撮った1枚。その反応に驚き慌ててシャッターを切りましたが、AFが正確に捉えてくれました。このあとは興味をなくしたのか、全く近づいてきてくれなくなってしまったので、貴重なシャッターチャンスを見事に掴むことが出来た1枚です。


最短撮影距離は28cm。ほぼ最短撮影距離でのカットですが、花びらの細かな凹凸や、表面を濡らす水滴の瑞々しさ。近接撮影時でもシャープな描写です。

日の光が和らいできた時間帯に見つけた花手水を俯瞰で撮影しました。日中の強い光がなくなったフラットな光は、白飛びなどムラがない代わりにコントラストが出にくく、平凡な写りになりがち。そんな光の中でも、花びらそれぞれの質感や、葉の瑞々しさを写してくれました。レンズが持つ解像力の高さと、色彩再現度に改めて感動した1枚です。

広い原っぱでキャッチボールをする人物の立体感や、木々が落とす影の豊かな階調、青とオレンジが混ざり合っていく淡い色味など、写ってほしいと思う全てを思い描いた通りに再現してくれました。50mmの感覚から「ふっ」と一息、力が抜けた画角が筆者にとっての「35mm」で、こういう広めの画を撮りたくなる画角なのですが、なかなかイメージ通りに撮れることは多くありません。綺麗なボケ味やトーンの滑らかさなど、語りたくなる魅力はたくさんありますが「こういう画がイメージ通りに撮れてくれる」ということがこのレンズを薦めたくなる何よりのポイントです。

この距離感でさえ被写体に立体感をもって描いてくれるということに筆者はますます惹かれてしまいました。日常の何気ない瞬間もこのレンズがあれば、まるでドラマのワンシーンのように変えてくれます。



夕暮れの光の中に伸びる1本の草の穂を、主役のように浮かび上がらせる豊かなボケ。ピントを合わせた穂の1本1本は驚くほど繊細に描かれており、立体感も実に見事なものです。

日が落ちた後の、空が最も美しく色づく時間帯。ホワイトバランスを調整し、空のグラデーションをより印象的に表現してみました。空の色が紫からオレンジへと移り変わる、繊細な中間トーンを描く階調の滑らかさに感動しました。細い電線も奥のほうまでしっかり解像してくれています。1日の中の多様な光を忠実に、繊細に描いてくれる『 SIGMA Art 35mm F1.2 DG II 』は先代と変わらぬ素晴らしい写りをするレンズでした。
高い解像力と美しいボケ味の融合
初めての場所に訪れるときは期待と不安が入り交じりながらの撮影になるのですが、『 SIGMA Art 35mm F1.2 DG II 』が見せてくれる世界がどれもこれも美しく、安心して撮影することが出来ました。「35mm F1.2」の開放絞りのトーンの柔らかさ、高い解像力と大きく美しいボケは唯一無二の描写性能です。小型化によって「LUMIX S1RII」や「Leica SL3」などのカメラはもちろん、「BF」や「fp」シリーズに装着してもバランスが良くなりました。朝から夜まで、生活の中のどんな光にも対応できる明るさを持った『 SIGMA Art 35mm F1.2 DG II 』。ぜひ日常をともに過ごす1本として、この写りを体験してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff