974:頂きはさらに高く『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical II Z-Mount』
2024年12月05日
今回は2022年に発売された「Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical Z-Mount」のリニューアル、『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical II Z-Mount』をご紹介いたします。今回のリニューアルはユーザーからのアポランターシリーズのデザイン変更の要望があったことから、レンズ性能はそのままに他のモデルとデザインを統一。絞り、深度目盛りの色入れやフォーカスローレットのデザイン変更など行い、よりニコンZマウントのカメラに合うデザインに変更されました。そして『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical II Z-Mount』に関しては最短撮影距離が従来の0.35mから0.27mとなりさらに寄れるようになり、フォーカス回転角度を約250度まで広げたことでマニュアルフォーカス時の操作性がさらに向上しているとのことです。フォクトレンダー史上最高性能の準広角レンズを前回同様「Z7II」に装着して撮影を行ってきました。ぜひご覧ください。
アポランターといえばやはり高い光学性能。だからこそその真逆なものを撮ってみたいと思い、ススキの中に潜ってさらにその奥のススキにフォーカスしました。ほぼレンズ前面にススキが覆いかぶさっているような状況です。ただ考えなしに潜ってしまうと画が暗くなってしまうので青空も入るようにしながら、ちょうどいい場所を探し続けました。そしてそんな小細工をしてみてもピント面はとてもシャープ。素敵です。
レンズ構成は9群11枚で12枚の絞り羽根により開放絞り、F2.8、F5.6、F16で円形絞りとなります。このカットはF2.8で撮影しましたがしっかり円形絞りになっています。浮かび上がるようなピント面の立体感もさすがです。そして最短撮影距離が0.27mとより寄れるようになったのが本レンズのポイント。接写時も破綻のない描写力です。
朝露のついた花。このカットは拡大で原寸サイズをご覧いただけます。フォーカスリングのトルク感の良さも使っていて楽しくなる理由の一つ。ピント拡大での緻密な調整もスムーズに行うことが出来ました。
F8まで絞って紅葉が続く頭上をファインダーで覗いてみたら、イメージしたよりずっと広がりと奥行きのある画が撮れました。こうしてみると改めて35mmの画角は広角レンズなのだなと実感した一枚です。そして絞った描写も素晴らしいの一言です。
35mmという広角の画角ですので全体の情報をまとめやすいです。少し絞るのがベターではありますが、あえて開放絞りで撮影してみました。手前からある程度奥のほうの看板まで文字が読み取れるほどの解像力はさすがです。ご覧いただくように開放絞りでは周辺減光が目立つ場合がありますので、気になる方は絞ってみてください。午前~日中であればF4まで絞ればほぼ気にならなくなります。
光の3原色を構成するRGBの軸上色収差を限りなくゼロに近づけるアポクロマート設計と9群11枚構成のレンズには異常部分分散ガラス5枚、両面非球面レンズ2枚が使用されており、ピント面の文字も滲まずスッキリ見えます。金属部に反射する光も実にリアルな描写で、肉眼で見たときと同じ「眩しさ」を感じることが出来ました。
冬至までまだ幾日かありますが、日が落ちるのが大分早くなりました。このタイミングでしか出会えなかったであろう、射しこんだ光に照らされるフライパンに目を奪われ撮りましたが、手前に陳列された缶や置物がミニチュアのように見えるボケによる遠近感の出方も面白いです。
これはアポランターのことが好きになってしまいます。もうとっくに好きではありますが。
F2.8のボケ感と解像力のバランスが良く、海辺から続く足跡と砂場を丁寧に見せてくれました。そしてこのカットは綺麗な丸ボケになった砂を見ながらニヤニヤできるカットでもあります。
水面に映る夕焼けの空、波が覆いかぶさる前に撮影しました。見たときの感動がそのまま写真としてあがってくるので二度感動出来ます。
露出量が十分であればF4まで絞らずともこの時間帯でも周辺減光を抑えられることが分かりました。電子補正がないからこそ、個性が際立ちます。長く付き合いながら魅力に触れあっていきたくなるレンズです。
頂きはさらに高く
各マウントで発売されているレンズではありますが、アポランターは撮るたび撮るたびに新しい感動があります。毎回こんな撮り方はどうだろう?とチャレンジしてみますが、毎回予想以上の結果で応えてくれるレンズです。さらに寄れるようになったりと進化して帰ってきた『Voigtlander APO-LANTHAR 35mm F2 Aspherical II Z』。準広角レンズの価値観を一変させるレンズの描写をぜひ体験してみてください。
Photo by MAP CAMERA Staff