発売発表当時からこの日を心待ちにしていたニコンユーザーは少なくないでしょう。ひと際美しいボケと高い解像力とのコントラストが目を惹きつける、中望遠等倍マイクロレンズ『Nikon NIKKOR Z MC 105mm F2.8 VR S』が本日発売されました。Zマウントの大口径、ショートフランジバックを活かして、後玉に大口径非球面レンズを採用しセンサー近くに配置。3枚のEDレンズを効果的に配置し、徹底的に収差を抑えています。さらにニコン独自の反射防止コーティング技術である「ナノクリスタルコート」と「アルネオコート」の両方を採用しゴースト、フレアを効果的に低減。開放値F2.8の明るさ、0.29mの最短撮影距離。手ブレ補正効果4.5段のVR機構により手持ちのマクロ撮影も撮影可能になっています。
マニュアルフォーカスで最短撮影距離に設定して撮影したこの葉のカットも手持ちです。僅かな風でピントがズレてしまうので連写で撮り続け、その中からピントが合ったものを探し出しました。極薄のピント面の解像感も素晴らしいですが、何より背景のボケの美しさに目を惹かれました。この被写体だけの世界観を作り出せるのがマイクロレンズの面白さの一つです。
このまん丸く可愛らしい白い花。アナベルという紫陽花の品種でまん丸く白く咲くのは満開の時期だけだそうです。「アナベルの丘」と名付けられたこの場所でタイミング良く真っ白に咲く沢山のアナベルを見ることが出来ました。陽に照らされ花弁1枚1枚を滲むことなく解像するレンズに唸ってしまいましたが、その主役を引き立てるような日陰の写りにも素晴らしいものを感じます。自然に下がっていくトーンのナチュラルな仕上がりがたまりません。
なんとも言えぬ上品な色とコントラストではないでしょうか。手を加える必要のない素晴らしい写りです。もう役目を終えたピアノに静かに積もり続ける時間をしっとりと写し出してくれました。
ほぼ開放絞りに近い状態で撮影したこのカット、光量も少ない環境なので周辺減光がありますが、むしろそのふわっとした柔らかな描写に見惚れてしまいました。本当に良い仕上がりを見せてくれます。
高感度で絞った写真もぜひご覧ください。ピント面の解像感、立体感、高感度ノイズと相まったボケ感が実に素晴らしい!
標識のドットをまじまじと見たのは人生でこれが初めての経験かもしれません。開放絞りによる周辺減光はやはり出てきますがこのカットを撮った時間帯が既に18時前。日の長い季節になったとはいえそういった影響も加味して参考にしてください。
開放絞りで逆光に照らされる植物を撮ってみました。これだけ背景に色々なものが配置されると煩くなりがちですが、ボケの癖を感じることないのは素晴らしい事だと思います。
本来であれば必ずブレてしまうシャッタースピードでしたがVRのおかげでブレることなく撮影出来ました。何度も撮ったことのあるカットなのですが、一つ一つの煉瓦に刻まれた歴史を改めて感じることが出来ました。
THE マイクロレンズ
一般的にはマクロレンズと呼ばれるカテゴリーをニコンは「マイクロレンズ」と称しています。さらにニコンはマイクロレンズに対して露出倍数込みの実効F値というものを採用しています。この実効絞り値については話すと長くなってしまうので割愛するとして何が言いたいかというとニコンには頑固といってもいいような「こだわり」を感じることがあります。その強い「こだわり」がこうして素晴らしいレンズを生み出すのでしょう。マイクロで撮る楽しみを思う存分味わうことの出来る一本でした。Zユーザーにとって必須の一本になると言っても過言ではありません。ぜひこの写りをお楽しみください。
Photo by MAP CAMERA Staff