
シグマの“Art”ラインに『Art 28-105mm F2.8 DG DN』が加わりました。「望遠端105mmまでF2.8通し」という今までの常識から一歩先へ進む、次々に新しい可能性を提案してくれるシグマらしいレンズです。ズーム全域で最短撮影距離は約40cmを実現させており、105mmでは最大撮影倍率1:3.1のクローズアップ撮影が可能になっています。この明るさのズームレンズでありながら重量は1kg以下。非球面レンズ5枚を効果的に配置して全長の短縮を図るとともに、マウント部分の鏡筒にマグネシウムを採用することで軽量化しているとのことです。AFアクチュエータにはリニアモーター HLA(High-response Linear Actuator)を採用し、優れた駆動精度を持つ高速なAFを実現。絞りリングクリックスイッチ、絞りリングロックスイッチや任意の機能を割り当てられるAFLボタン、ズームロックスイッチを搭載しています。1段速いシャッタースピードの設定が可能になることでより自由な撮影ができる『SIGMA Art 28-105mm F2.8 DG DN』。今回は本レンズに「SIGMA fp L」と組み合わせて撮影してきました。その写りをどうぞご覧ください。

背の高いキバナコスモスを見つけて下から潜り込むように撮りました。HLA(High-response Linear Actuator)を採用した高精度・高速AFにより、風でゆらゆらと揺れる手前の枝に惑わされることなく中央の花を捉えてくれました。

年季の入った車の錆び付きや、金属の光沢感、彩度の低い渋めの色などはシグマのレンズが忠実に再現してくれるのでついつい撮りたくなってしまいます。あまり日の入らない環境でしたが、それでもここまでしっかりと写ってくれるので頼りになります。

望遠端105mm、最短撮影距離40cmでの撮影です。『SIGMA Art 28-105mm F2.8 DG DN E-Mount』では背景のボケ感を見てみたのですが、綺麗に溶けてくれました。今回は最短撮影で絞りを絞った写りをご覧いただきましたが、花粉までしっかり写っていて解像力の高さを実感することができました。『SIGMA fp L』との組み合わせでは手振れ補正がないので心配でしたが、十分なシャッタースピードを確保した状態であれば手持ち撮影でも十分に近接撮影も楽しむことができます。


ピントは中央に設定して広角端で絞って撮影しました。手前側から奥のほうまで樹木がボリューム感をたっぷり出して写っています。絞ってはいますが周辺減光もしっかり解消されました。水面と空とでは明るさのバランスが違うので現像して調整しましたが、ハイライトシャドゥどちらもまだまだ余裕がありそうです。

ビルの隙間からスカイツリー。入れたい情報と入れたくない情報のバランスを立ち位置とズーム域で調整しながら撮ったのですが、左側にも青の余白が入っているのが良いヌケになりました。こういう時にズームレンズがあって良かったと思います。全体的に締まってほしかったのでかなり絞りましたが、期待通りの解像感でした。

標準域でどれだけ立体感が出せるのかを撮ってみましたが瓶の写りに目が惹かれました。中間域に置いた被写体でも輪郭がしっかり浮き立ってくれます。

105mmでのテレマクロ撮影だけでなく、ズーム全域で40cmまで寄れるのでテーブルフォトなどにも使えます。F4に絞るとやはりボケに輪郭が出ますが、とても自然なボケ味でとても好印象です。

線香から立ち上がる煙は、濃淡がしっかりとでておりとても雰囲気ある仕上がりとなりました。

新しい選択肢と可能性
標準ズームレンズが定番化されてきたなかでの新しい選択肢。限られた選択肢の中から工夫を重ねながら撮影をしてきたカメラマンにとって、このレンズが持つ有用性を今まで経験してきた色んなシチュエーションから「こういう時にあると便利」と想像するのではないでしょうか。求める条件に適っていればズームレンジと1段分の違いは大きな意味を持ち、今までの撮影に新しい選択肢と可能性を示してくれることは間違いありません。ぜひ一度体験していただきたい一本です。
Photo by MAP CAMERA Staff