
1007:クリエイターの可能性を広げる『SONY FX2』
2025年08月03日

FXシリーズに、写真と動画どちらも撮りたいユーザーにおすすめしたい新機種『SONY FX2』が発売されました。有効約2760万画素(静止画撮影時、有効約3300万画素)の裏面照射型35mmフルサイズCMOSセンサー「Exmor R™」と、最新の画像処理エンジン「BIONZ XR™」を搭載しています。動画性能では、フルサイズ4K(QFHD 3840×2160)撮影時に、画素加算のない全画素読み出しによる7Kオーバーサンプリングを実現。また、Super35mmモードでは4K 60p(59.94p)での記録が可能です。常用ISO感度は100から51200と広く、S-Log3撮影時にはISO800と4000の両設定で15+ストップというワイドラチチュードを確保。4:2:2 10bitでの記録にも対応しており、繊細な階調表現を活かしたカラーグレーディングが行えます。手ブレ補正機能には、従来の「アクティブモード」より効果が約30%向上した「ダイナミックアクティブモード」を新たに搭載。質量約679gという小型・軽量ボディと相まって、ワンオペレーションでの撮影を強力にサポートします。
そして今回ご紹介する『SONY FX2』には、「FL2」「FL3」という新しいクリエイティブルックが追加されました。「FL」はFilmの略で、「FL2」はコントラストがやや高く、落ち着いた発色でノスタルジックな雰囲気に。「FL3」は、対照的にコントラストを抑えつつクリアな発色で、軽快な雰囲気に仕上がるのが特徴です。表現力だけでなく、操作性も大きく進化しています。特筆すべきはカメラ背面に新設された「静止画/動画切り替えスイッチ」で、従来のモデルではメニュー操作が必要だった静止画と動画の切り替えを瞬時に、そして直感的に行えるようになりました。今回は、新しく追加されたこの2つのクリエイティブルックをメインにスチル撮影を行いました。ぜひご覧ください。

この1枚は、クリエイティブルック「FL2」で撮影しました。おみくじの赤と白、背景の木々の緑が織りなす美しい色彩コントラスト。そして、柔らかく包み込むような光の表現が印象的です。

木漏れ日の中に咲く紫の花。この一枚は、クリエイティブルック「FL2」で撮影しました。光に満ちたこのシーンでは「FL2」の特性が際立ち、緑や紫の色合いに独特の深みが与えられ、非常に印象的な「ルック」に仕上がりました。「FL2」がどんな被写体も同じように仕上げるような強いクセのあるルックというわけではなく、シチュエーションによってはまた違う表現を見せます。使い込むほどに新たな発見がある、実に奥深いクリエイティブルックだと感じました。

遠景にうっすらかかる霞(かすみ)が、夏の昼間らしい湿度や温度を感じさせ、リアリティのある雰囲気を作り出してくれました。静止画撮影時には有効約3300万画素となり、前景にある木々の枝や瓦屋根から画面奥の建物の細かいディテールに至るまで、しっかりと描写できています。


曲面の天井を滑るように落ちる光と、その光が生み出す柔らかな影の階調がうまく表現できていると思います。クリエイティブルックの「ST(スタンダード)」や「FL2」とも撮り比べた結果、「FL3」ならではの、黒が沈み込みすぎずに“ふわっと浮き上がる”ようなシャドウの描写が気に入りました。「ST」の、どんな状況でも使える健康的な発色も魅力的ですが、JPEG撮って出しで、より作品性の高い一枚を手軽に撮りたいならFLシリーズもとてもおすすめです。


明るく色鮮やかな発色で、明瞭度が高いのが特徴なクリエイティブルック「VV2」で撮影しました。なるべく階調優先で、こういう硬めの画が撮れる設定は避けているのですが、この「パッキリ」とした描写が実によく合います。かなり大胆な画作りをする設定ですが、色が飽和したりディテールが潰れたりすることなく、安定した高画質を保っているのは見事です。表現の選択肢として、非常に頼りになるクリエイティブルックだと感じました。

FXシリーズとして初となる、AIプロセッシングユニットを搭載。「リアルタイム認識AF」と「リアルタイムトラッキング」の性能向上により、高精度な被写体認識によるAF撮影が可能になりました。撮りたい画角を決めて魚が画面内に入ってきたタイミングでシャッターを押しましたが、しっかりフォーカスしてくれています。写真・動画どちらにおいてもオートフォーカス時に前を横切る動体に対しての感度が良く、動きも非常に滑らかだったのが印象的でした。様々な被写体の認識が可能で、「FX3/FX30」と比較すると人物の瞳の認識精度は約30%も向上しているとのことです。

水中を泳ぐクラゲに「落ちていく」という言葉は正しくないかもしれませんが、この角度で静かに漂う姿に心惹かれます。撮影時に使用したクリエイティブルック「FL2」は、ややマゼンタがかった色調になることで、この幻想的な光景に艶やかさを加えています。

『FX2』の大きな特徴の一つが、Cinema Lineシリーズとして初めて採用された、チルト式の電子ビューファインダー(EVF)です。この恩恵は絶大で、例えばこのカットでは、しゃがんだ低い姿勢からでもファインダーを快適に覗き込み、構図の微調整を追い込むことができました。このEVFは、倍率0.70倍、そして動画撮影に最適化された画角とアイポイントを備えています。撮影スタイルに応じて0度から90度まで上方向に角度を調整できるチルト機構により、ウエストレベルでの撮影など、自由なアングルでのフレーミングが格段に行いやすくなっています。

足元に当たる光の柔らかな滲み、濡れた砂浜の反射、そして影との境界に至るまで、極めて繊細に描写されています。明部から暗部へと滑らかに繋がる描写からは、階調の豊かさが感じられます。さらに、このカットはAPS-Cクロップで撮影したのですがクロップモードであることを感じさせない解像感で、細部のディテールまで高画質に描き出している点も見事です。

クリエイティブルック「BW」で撮影しました。絞りをF10まで絞り込むことで被写界深度を深くし、手前の少年から奥の人物まで全体をクリアに描写しています。被写体が完全なシルエットになるのではなく、豊かな階調がしっかりと残っている点も素晴らしいです。取り入れた逆光、監視台の足元に当たる光の滲み、そして波のゆらぎ。これらが相まって、ただシャープなだけではない、情感豊かな描写になっているところもお気に入りのポイントです。

クリエイターの可能性を広げる
本格的な動画性能に妥協のないスチール性能。この二つを高次元で両立させた『FX2』は、まさに次世代のハイブリッド機と呼ぶにふさわしい一台です。「α7IV」が“静止画が主役”のハイブリッド機だとすれば、『FX2』は“映像が主役”。しかし、そのスチール性能は決してサブではない高い性能を持っています。静止画メインに撮る筆者も写真機としての手ごたえを確かに感じました。『FX2』は「もっと映像を撮ってみたい」と「写真も同じくらい撮りたい」という、これから自身の表現の幅を広げていきたいと考える、すべてのクリエイターにおすすめできる一台でした。ぜひ一度、体感していただきたいカメラです。
Photo by MAP CAMERA Staff