近年ミラーレス専用設計に基づいた素晴らしいレンズを多数発表してきたタムロンから、またも驚愕のレンズが登場しました。
期待の新作APS-C専用レンズ『TAMRON 11-20mm F2.8 DiIII-A RXD』をご紹介します。
ソニーEマウント用では世界初となる、開放F値2.8の大口径を誇る超広角ズームレンズです。フルサイズ換算で、望遠端は日常スナップなどにうってつけの30mm相当。広角端はワイドな画角をいかしてダイナミックな一枚を撮影出来る16.5mm相当。気軽に撮影する時はもちろん、しっかりと腰を据えた撮影でもそのシャープな写りが魅力的です。また、遠景だけでなく、最短撮影距離0.15mを活かしたワイドマクロ撮影も魅力的。そして、そんな高いスペックを長さ86.2mm、質量335gという小型・軽量ボディに収めているのですから驚きです。
今回は、APS-Cのフラッグシップモデル『SONY α6600』との組み合わせで撮影を行いました。小さなカメラバッグに、すっぽりと収まるサイズ感。果たしてその描写はいかに、ぜひ写真をご覧ください。
鏡面に仕上げられた壁に写し出されるリフレクションを、広角を活かして撮影しました。左側が実際の景色、右側が映り込みの世界です。モノクロで撮ることで自分の感じた不思議な感覚に近づけました。驚かされるのは、鏡の世界の中に見えるビル群までもシャープに描き出されているところ。中央だけでなく、画面端付近でもしっかり解像するのが見て取れます。
東京タワーで一番好きなスポットが「透明な床」というガラス張りの一角。自分の足元に何もなく、まるで宙に浮いているような感覚を味わうことが出来ます。高い所が得意という人でも、その上に立つと一瞬ドキッとするのではないでしょうか。望遠端のちょうどいい画角で、タワーの足元に広がる光景をミニチュアのように収めてみました。入り組んだ鉄骨の細部に至るまで、精細に描写されていて感動しました。
開放から非常にシャープな画作りが魅力的な本レンズですが、絞っていく毎にその切れ味は研ぎ澄まされていきます。うっそうとした森林の中で、一筋の光に照らし出された植物の葉をしっかり絞ってF10で撮影しました。拡大していただくと、葉脈の模様や表面の柔らかそうな質感までもが高いリアリティで写しだされています。これだけの一枚を、片手で支えられるほど軽快なカメラとレンズで撮影できるのか…と嬉しくなりました。
冒頭にも書きましたが、本レンズの見逃せない特徴が寄れるレンズだということ。被写体のまわりを入れながら情景を写すようなマクロ撮影が可能です。ワクワクするようなデザインが施された缶が並んでディスプレイされています。鮮やかな黄色をバックに、優しそうに微笑んでいる女性にピントを合わせました。調べてみると、オイルサーディンの缶詰のようです。寄ることでボケ味を楽しむことができ、ガラスに移り込んだ玉ボケが非常に美しいです。余談ですが、「SONY α6600」の顔認証がしっかりピントを合わせてくれたのが少し面白かったです。
そびえたつビル群の中、ふと見上げると月が出ているのに気付きました。半月からやや欠けて、もうすぐ三日月になろうというあたりでしょうか。威圧感のある大きな建造物と、ちょこんと佇む月の対比が良いなと思い切り取った一枚。人工物と遥かな天体、その正反対とも言える質感、感じられる雰囲気のようなものを見事に描き分けてくれています。
開放F値2.8という明るさは、夜のスナップ撮影にも大活躍です。格好良いと思った構図をサッと撮りたい時は明るさがあると安心感が違います。交錯する歩道の手すり、ジグザグに線を引く様を広角端のダイナミックさをめいっぱい使って撮影しました。線が線としてまっすぐに伸び、歪みを感じないのも見事です。
日常をダイナミックに
今回、『TAMRON 11-20mm F2.8 DiIII-A RXD』を使ってみて強く感じたのは「APS-C機でも写真を楽しんでほしい」というタムロンの意気込みです。本格的な写真を撮るにはフルサイズ機でなければならないという意識はだいぶ少なくなったように感じますが、このレンズは言ってしまえばフルサイズを超えようという心意気すら感じます。コンパクトなボディにマッチするコンパクトなレンズ、しかしそこに秘められた圧倒的な性能と描写。それが8万円を切る価格で登場したことは、もしかしたら歴史的な快挙かもしれません。カメラは持ち歩かなければならないもの。是非、この頼もしい相棒を日々連れ歩き、写真を楽しんで頂ければと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff