ライカの大口径標準レンズであるNoctiluxにも様々なバリエーションがありますが、今回試写に使用したのはF1.0になった後、口径がE60となった第3世代。この後にフード組み込み式になる前回リポートした第4世代が続きます。「ある年代でガラス硝材が変更になった、設計が修正された」などという噂も数多く有りますが、とりあえずここではこのNoctiluxの描写として、ご覧頂ければと思います。
それにしても暑くなりました。撮影したのは7月はじめ、少し西へ傾いた日差しに照らされつつ、つい撮ってしまったこの1枚。つめたく冷えたワインにグラスの結露まで、浮かび上がる様に描写しています。思わず「おいしそう…」などと考えてしまったのはここだけの話。
明るい日差しの中でも、1/4000秒まであれば被写体を浮かび上がらせるNoctiluxの描写を生かせます。日差しの柔らかい雰囲気も感じられますね。
少し絞ると実にすっきりとした、清々しい描写となります。緑の発色も生き生きとして美しいものです。ただどうも前回使用した第4世代のレンズより、クセが少なくしっかりと描写する印象が。このあたりは個人の好みや、被写体によって異なる所ですが、この時代の大口径レンズは1本1本新品の状態でも個体差があったのも事実。やはりお気に入りの1本を見つけるにも、出会いが大きい要素ですね。
開放でのこの何とも妖しげな描写は、やはり大きな魅力です。
どこかに迷い込んでしまう様な、妖しい描写。こうした描写に魅せられると、やがて深いライカレンズの森に迷い込んでしまう訳で…危険な1本とも言えるでしょう。
整えられ、開場を待つステージ。開放の明るさから特殊なレンズと考えらる事も多いですが、こうした被写体や光線状況の違いにも適応出来る応用範囲の広さも、実はNoctiluxの魅力なのです。
動く被写体を止めたい、乏しい光量の中で被写体を写したい等、大口径の恩恵は想像以上に大きいものです。
この巨大な前玉とグッと手にくる質量がNoctiluxのアイデンティティです。フードが第4世代と比べて別に装着する形になっているのが大きな違いですが、このあたりは好みの問題でしょうか。使い古された言葉ですが、「開けると柔らかく、絞るとシャープ」の言がこれほど似合うレンズも無いでしょう。中古での販売も少なくなりましたが、その個性的な描写がこれからも多くの人を魅了しつづける事は間違い有りません。ライカユーザー、憧れの1本です。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.