“Leica X”シリーズと言えばAPS-Cセンサーに単焦点レンズを採用し、画質にこだわって製作されるLEICA社のハイエンド・コンパクトラインだ。当”Kasyapa for LEICA”でも“X2”の試写を行っているが、その高い描写力と画像の質感の高さは特筆ものであった。今回そこにズームレンズを搭載し、画質にも磨きをかけたという”Leica X Vario”が登場。ズームレンズでも単焦点に引けを取らない高画質と”LEICA M”譲りの操作系を併せ持ったという新Leica X、その描写をまずはご覧頂きたい。
35mm判換算で30mm程度の画角、ほぼ開放である。構成枚数は多いながら、抜けの良い気持ちの良い描写である。被写体の滑らかなグラデーションやガラス質の表現等も素晴しく、あえてF値よりも描写性能をとったLEICA社の判断にも大いに頷ける描写だ。
高輝度部でもトーンが残ってくれるのは嬉しいポイントだ。アンダー、ハイキー部分に少しトーンが残るだけで、画としての印象は大きく変わる。全体的にデジタル臭くない落ち着きが感じられるのはこうしたポイントゆえかもしれない。
最広角28mm相当で2段ほど絞っている。日差しは強いが、本当にヌケの良いレンズだ。また被写体に立体感が強く感じられるのである。これは壁面のざらつきまで感じられる細緻な質感描写ゆえか、壁面のレンガ1つ1つまで存在感がある事で、全体として建物にどっしりとした重みが感じられている。
質感描写のみクローズしてみたが、いかがだろうか。拡大して更に感じる彫刻の細かな存在感、重みのある金属の鈍い照り返し、時代を経てきたその質感まで実に美しく捉えている。
描写は精緻ではあるが、けっして固いものではない。柔らかな被写体も得意とする所だろう。光の当たった花弁も美しいグラデーションを描いている。
少々手ぶれているのはご容赦頂きたいが、”Leica X Vario”の描写のもう1つのポイントはその”自然さ”にあるのでは無いかと思う。搭載されている『Vario-Elmar 18-46mm F/3.5-6.4 ASPH.』はそのF値ゆえ巨大なボケが望めるものではないが、自然な遠近感を魅せる柔らかなボケがあるのだ。手前にある被写体から背景の雰囲気まで、被写体を引き立てつつその場の雰囲気をしっかりと写しとってくれるその描写は、日常のスナップから旅先まで、様々なシチュエーションで随分重宝するのではないだろうか。
ボディデザインはシンプルなものである。“X2”などよりボディサイズは一回り大きくなっているが、マニュアル操作感をしっかり残したその操作系は使いやすく、真剣に撮影に打ち込める良いサイジングに収まっている。
高感度でもなかなか耐えてくれる印象だ。手ぶれ補正も内蔵され、フォーカスが難しい時にはフォーカスリングを使用したマニュアルフォーカスが役に立つ。フォーカスリングを回すだけでピント部分を拡大表示するなど、操作感も上々だ。
EXF2を装着するとより精悍な顔つきになる。”Leica X Vario”の背面液晶は美しくコントラストの高いものなので屋外でも使用に不満を覚えた事は無かったが、ファインダーを覗くとより撮影に集中出来るのも事実だ。またローアングルでの撮影や、マニュアルでのピント合わせ等でも大いに力を発揮してくれるだろう。 スタイルとしても、撮影の幅を広げる意味でも、活用したいアクセサリーだ。
引き続き、”Leica X Vario”のレビューをお送りする予定。
乞うご期待!
Photo by MAP CAMERA Staff