ヘクトール135mmはエルマー135mmに続き、1933年に発売となったレンズだ。かなり古い時代のレンズであるが生産数が多く、見かける機会も多いレンズではないだろうか。筆者もその焦点距離とF値から積極的に使用した事は無かったが、今回高感度にも非常に強く、時に応じてライブビューも可能な『LEICA M』の助けもあり、撮影に赴いた。しかし実際に撮影して驚いたのはその描写力の高さである。非常に低いコントラストのおかげもあって諧調が柔らかく、素晴らしく美しいトーンを描き出す。贅沢な円形絞りでボケ味も素直で美しい。派手さは無いが、その品位のある描写に唸ってしまった。
落ち着いた色合い、なだらかなトーン。ピント面の立ち上がりも良く、ライブビューでのピント合わせもやりやすかった。
もちろん、モノクローム写真との相性もバツグンに良い。このレンズは中判サイズまでカバーするイメージサークルを持っていると言われるが、その一番オイシイ中心部分だけを使っているからこそのこの描写なのだろうか。この時代のレンズでここまで写るとは、正直驚きである。
派手すぎない落ち着いた発色と色合いは、こうした微妙な色合いが美しい被写体にもってこいではないだろうか。
年月と風格を感じさせる、存在感に満ちたレンズである。しかしここまで美しい描写のレンズとは思わなかった。LEICAレンズの奥深さを改めて感じさせてくれた1本である。
Photo by MAP CAMERA Staff