Summilux35mm f1.4 ファーストモデル。数あるライカレンズの中でも1・2を争う人気レンズではないでしょうか。その魅力は開放での絶妙にして甘美な描写にあります。クセのあるレンズが多いオールドレンズの世界でもはっきりと分かるその描写。現行ズミルックスの開放から破綻の無い重厚な描写に比べると、ふわりと軽やかさを伴って展開する初代Summiluxの描写はまさに対極。この夢の様な描写も、ライカレンズの世界が見せる大いなるバリエーションの1つです。
ズミルックスの開放で見せる柔らかな描写。ソフトフォーカスの様な描写ですが、ではそれだけ、焦点の定まらない描写でしかないのか。上の写真をご覧下さい。フレアがかった柔らかい描写の中に、しっかりと被写体のラインが描き出されていることが分かると思います。解像しつつ、ソフトな描写がなされている。もちろん製造当時の時代ゆえの面も多分にありますが、現代では得られない稀有にして美しい描写であることは間違いありません。
解像力の証拠にこの1枚。絞り込むと驚くほどシャープな解像線が現れます。細かなビルのルーバーも繊細なラインで描き出すこの描写力があってこそ、先にあった柔らかさが引き立つレンズなのです。
モノクロームでもその線の細い描写は健在。遠景の雲の質感までしっかり描き出しています。またモノクロームフィルムでも開放のソフトさは相性が良く、少し硬めにプリントしたときのシャドーのトーンは絶品です。
ライカボディに装着するととてもバランスの良い本レンズ。軽量コンパクトな35mm、それでいて大口径なのですから、あまたの写真家に愛用されてきた所以は分かります。デジタル時代でも変わらぬ魅力を発し続ける銘玉、ぜひともじっくり付き合ってみたいレンズです。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.