素晴しい解像力とトーンの描写です。どこか違う…これは良い、そう感じてしまうのはこのレンズの素性を知っているせいでしょうか。通称『逆ローレット』ズミルックス。ズミルックス銘誕生の極初期に、少数のみ生産されたレンズを言います。総生産本数も定かにはなっていないレンズですが、今回はその描写をご覧頂ければと思います。
長い歴史を持つライカには様々な歴史とそれに伴う伝説が存在していますが、その中でも仕様の違い等で”稀少な”レンズとされている個体が有ります。この『Summilux 50mm/f1.4』にもその初期モデルの中に通称「逆ローレット」と呼ばれるレンズが存在し、通常とはピントリングの刻みの違う個体が存在します。コーティングやレンズ構成の違い、ガラス硝材の違い等さまざまな事が言われていますが、確かな話はありません。極初期のプロトタイプ的な生産でもあったのでしょうが、今回はその『逆ローレットモデル』ズミルックスでのPhoto Reviewをお届け致します。
大口径オールドレンズ特有の滲みが美しい描写です。素性の良くない滲みばかりのレンズもありますが、柔らかいフレアの中にしっかりと被写体を解像しているのはさすがズミルックス。細かい鉄線や、被写体の立体感もしっかりと再現しています。
柔らかい描写の中に繊細なラインが存在する、実に美しい描写です。金属のノブの質感や木部のペイントの雰囲気等もしっかりと捉えており、夕暮れの優しい光を見事に捉えてくれています。
オールドレンズだからといって、ボケている玉ばかりではありません。少し絞り込めばフレアが減り、その秘められた繊細な解像線が現れてきます。逆光にも予想以上に強く、精緻かつ優しい描写は様々なシーンで活躍してくれそうです。
レンズのローレット部分が、以前レポートしたレンズとは逆な事がお分かり頂けますでしょうか。もちろん古いレンズ、個体差も有り、来歴次第で様々な違いが生じている場合がありますがここではひとまずこのレンズの描写として、ご覧頂ければと思います。ただオールドレンズを愉しむ上で、このレンズが持つ歴史や伝説というのも大きな魅力の1つ。1本のレンズが手元にたどり着くまでに辿ってきた様々な遍歴を想像するのも、また一興かと思います。
Photo by MAP CAMERA Staff
Leicalens-Report.